研究課題/領域番号 |
23KJ1803
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
森 昭子 東京都立大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 芸術人類学 / アフリカンアート / ガーナ共和国 / 芸術実践 / 看板絵 / 作品制作 / 社会人類学 / 民族誌的研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アフリカ諸国の都市に見られる各種の看板絵とその作り手である看板絵師に着目し、技芸の習得、 作品の制作、さらには商品販売に至る「芸術業」の全体を、人類学的フィールドワークの手法と徒弟・制作者と しての視点で明らかにする。ガーナ南部の看板絵師を具体例として、作品/商品としての看板絵、 都市を拠点とする生活空間/アトリエ/ギャラリーとしての工房、そしてガーナ国内外の看板絵市場を主たる観察対象とする。申請者はすでに当地の看板絵制作者として経験を積んでおり、アフリカ都市を拠点にローカル /グローバルな文脈で営まれる看板絵をめぐる芸術業の現在を研究者と制作者の双方の視点から明らかにできる。
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研究実績の概要 |
年度の前半は、所属学会である民族藝術学会、日本アフリカ学会、及び所属大学とデンバー大学との研究交流会での研究発表を行った。また国外においては韓国アフリカ学会やインドアフリカ学会、そして世界人類学大会において研究発表を行った。修士時代のフィールドワーク内容や、修士卒業後から博士課程までの間の地道な研究成果を日本語と英語で研究発表を行うことができたこと、また国内外のアフリカニストや人類学者と学術的交流や関係構築ができたことは、何にも代え難い経験だった。そして歴史学者や人類学者と協働してフィールドにおける「アーカイブ」を軸に発表や検討を重ね共著を出版できたことは、手元の一次資料をもとに新たな枠組みで分析し自身の研究を発展深化させる貴重な機会となった。 年度後半は、ガーナ共和国に渡航して現地での研究調査にあたった。ガーナ大学アフリカ学研究所の客員研究員となり、新所長(Prof. Ntewusu)と人類学研究者(Prof. Amanor)及びアカン美術研究者(Dr. Labi)らと学術的交流を行った。フィールドワークでは地方都市クマシで予備調査を行い、調査協力者である看板工房を訪問してこれまでの基礎調査の出版物や、当該工房の制作品のUCLA展覧会視察について報告するなど、研究成果を現地に還元することができた。年度後半では一時期体調を崩し首都アクラで入院療養したが、その間に現地の多元的医療やケア実践を当事者として体験できたことは、フィールドワーカー及び人類学徒として貴重な知見を得られた。また療養中は首都アクラのテシ地区を拠点に滞在していたため、沿岸部市街地の看板絵や壁画を観察し、商業地区における芸術事業や文化的催事、国立博物館等を視察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ガーナ大学アフリカ学研究所を受入研究機関として歴史学(Prof. Ntewusu)、人類学(Prof. Amanor)、アカン美術(Dr. Labi)の専門家らと学術的交流を行い、首都アクラ及び地方都市クマシでの長期フィールドワークを開始することができた。また第17回松下幸之助国際スカラシップフォーラムでの特別シンポジウム「社会に埋め込まれたアーカイブを読み解く:情報集積の文化政治学」をもとに、フィールドワーカーが出会う現地の人々にとってのアーカイブを比較検討した共著ブックレット『アーカイブのちから:世界は足跡に満ちている』を風響社から出版することができた。そして韓国アフリカ学会では口頭発表の内容 ”Examine art production regarding African urban artistry: A case study of sign painters in Ghana” を当該学会誌に査読付き論考として掲載することができたほか、国内三回、国外三回、合計六回の学会・研究集会等で口頭発表するなど、積極的に研究成果を公開することに努めた。以上の点において当初の計画を上回る進展があったと評価する。 なお、長期フィールドワーク中に体調を崩し入院療養をし、年度末は怪我に見舞われ一時帰国するなど当初の計画を修正することとなったが、日本滞在中には資料整理や文献調査を進め、翌年の調査計画を変更するなど研究計画を軌道修正して研究を進めている。そのため研究計画自体に影響はなく、最終年度での研究成果の取りまとめが見込める。
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今後の研究の推進方策 |
日本で資料整理や文献調査、研究計画や手法の調整を行った後に、再びガーナ共和国での長期フィールドワークを行う。まずは地方都市クマシの看板工房で参与観察や聞き取り調査を行う。そして研究者自身が制作者として看板絵をつくり、ガーナ国内の路上やギャラリーで見せることで、それを見る人々との対話や鑑賞態度、鑑賞経験などを観察する。同時に看板絵制作プロセス及び展示制作のプロセスは、関係論的視座による考察記述を試みる。またメディアとしての看板絵に、そして展示に、どのようなメッセージを込めるのか、どこで誰に見てもらうのか、といった創造的実践においては協働的民族誌の手法を用いる。また適宜ガーナ大学アフリカ学研究所やガーナ研究の専門家からの助言や支援を得ながら現地での調査及び制作を進める。上記の研究手法を現地調査で進めつつ、並行してこれまでの成果取りまとめを行う。
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