研究課題/領域番号 |
23KJ1828
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
渡邉 充哉 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | ハイエントロピー合金 / ナノ結晶 / めっき / 力学特性 / 粒成長 / 結晶配向 / 高温変形 / 非平衡組織 |
研究開始時の研究の概要 |
ハイエントロピー合金(HEAs)及びミディアムエントロピー合金(MEA)は複数の元素が等モル比で混合された合金であり,優れた強度・延性バランスや高温安定性を示すことが知られている。 本研究の目的は,めっきプロセスによりHEAs/MEAsを結晶粒径20 nm以下,厚さ0.2 mm以上のバルクナノ結晶合金として作製する手法を開発するとともに,室温及び高温における巨視的な力学特性を明らかにすることである。微細組織,試験温度及びひずみ速度などといった複数の観点からナノ結晶HEAs/MEAsの特性を多角的に探る。優れた強度・延性バランスを発現し幅広い温度域で使用可能なGPa超級高強度合金の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
前年度において開発した等モル比バルクナノ結晶Fe-Co-Ni合金 (FeCoNi MEA) の高温における微細組織の安定性評価を行った。電気化学的に得た本合金を大気開放雰囲気のマッフル炉にて1時間保持後,組織観察を行った。その結果,本合金は摂氏300度にて1時間保持後においても走査電子顕微鏡による観察が困難なほど微細な粒径を保っており,X線回折図形においてはブロードな回折ピークを示した。また,摂氏400度から1000度において1時間保持後の粒径を走査電子顕微鏡観察により求めたところ,急激に粒径が増大する保持温度が複数認められた。特定の温度において急激に粒径が増大する現象は,ニッケル合金のほか等モル比合金においても報告されている。これは,特定の方位の結晶粒が選択的に成長する異常粒成長として理解されてきたが,本合金における複数回の特異的な粒径変化は,各温度において異なる粒成長機構が起こることを示唆する。X線回折図形も,各保持温度において形成される結晶配向の違いを示した。しかしながら,雰囲気中の軽元素による影響が否定できないため,不活性雰囲気中での熱処理を学外研究者の協力を得て実施しているところである。 FeCoNi MEAへの第4元素添加については年度当初に海外機関において研究を実施し,クロムの添加について進展があった。しかしながら,析出方向における組成分布の均一性やクラックなどの欠陥の改善に課題を残した。その他,耐火元素の添加も試み,高温における微細組織の安定性の向上や第二相の導入による強度向上に有望な結果が得られた。 また,年度後半に実施した長期研究インターンシップにおいて,電気化学測定や力学評価手法に関して知見を得た。今後の研究に反映したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定以上の結果や今後の研究推進に有益な結果も得られたが,遅れている実験も部分的にあるため,総合的に「おおむね順調に進展している」ものと評価した。 微細組織の高温安定性評価については,当初計画していた装置による適切な真空焼鈍ができなかったため,不活性ガス雰囲気での評価に切替えて進めたことで着実に進捗している。また,国際会議における討論において新たな着想を得た。FeCoNi MEAへの第4元素添加においては,用いる金属塩の種類や添加剤,電流条件など,めっき条件の検討により,析出方向における組成の安定性や緻密性を改善できることが明らかとなったが,未だ最適条件を見出すには至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
新規合金めっきの開発については,還元電位の離れた元素の共析及び欠陥の低減を企図し,溶液組成に加え印加電流波形の検討を行う。高温における微細組織の安定性及び変形特性の評価については引き続き取組むとともに,電気化学測定や圧縮試験も取り入れ,多角的に進めていく。 計画通り本課題の最終年度である2024年度中に研究をまとめ,今後の研究に結び付く成果の創出を目指す。
|