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鏡像自己認知に基づいたメタ認知の検証-高次自己意識が魚類で進化した可能性を探る-

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1829
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分90030:認知科学関連
研究機関大阪公立大学

研究代表者

小林 大雅  大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワードメタ認知 / meta self-awareness / self-consciousness / Uncertainty monitoring / 鏡像自己認知 / 自己意識 / ホンソメワケベラ / 魚類
研究開始時の研究の概要

本研究の目的は鏡像を自分と認識できるホンソメワケベラのメタ認知能力を解明することである。メタ認知は自分の知識や記憶、自信の有無などを認識する高度な認知能力であり、鏡像自己認知と並ぶ自己意識を持つ証拠とされる。本研究ではホンソメワケベラが鏡に映った自分の姿から自身の体長を認識できることを利用し、自分の体長の記憶に対する自信を基にメタ認知できることを明らかにする。本研究は魚類で初めてメタ認知の存在を示すだけでなく、ヒトが持つ高度な自己意識の進化を解明するための重要な手がかりをもたらすことが期待できる。

研究実績の概要

本年度はホンソメワケベラが鏡像を基に自分の体長を認識できることを利用し、自分の体長の記憶に対する自信を自覚できることを基にメタ自己意識(meta self-awareness, MSA)を検証するMSA testを行った。先行研究より、鏡像自己認知ができたホンソメワケベラは自分が優位である自分より10%小さな同種他個体の写真には攻撃するが、相手が優位である可能性が高い10%大きな個体の写真には攻撃せず、自分と相手の体長を比べるように鏡と写真の前を行き来することがわかっている。本研究では、体長を確認できないよう6または18時間鏡を隠した後に10%大きな個体の写真を提示し、鏡を隠した時間に応じた実験魚の写真や鏡に対する行動の変化を調べた。予測通り、鏡を隠した時間が長いほど鏡と10%大きな個体の写真の間を往復する回数が増加し、自分の体長の記憶が曖昧になったことを自覚し、鏡で正確な体長を確認したことを示す結果が得られた。一方、単に鏡を隠した時間に応じて行動を変化させた可能性を排除するため10%小さな個体の写真を用いて同様の操作を行ったところ、往復回数は変化しない傾向が見られた。以上より、ホンソメワケベラが体長の確認を必要と認識したときにのみ鏡の前と写真の前を往復したことが示され、この行動がメタ認知による可能性が強く示唆された。これまでヒト以外の動物が自己情報を基にメタ認知ができるメタ自己意識を持つことを示した研究はない。ホンソメワケベラが自分の体長の記憶という自己情報を基にメタ認知ができる可能性を示した本研究成果は近年研究が活発化している動物の自己意識研究の進展に重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画のうち、上述のメタ自己意識を検証するMSA testに関しては概ね予定通りに必要な個体数のデータが得られたため論文の執筆を始める予定である。一方、オーストラリアのリザード島で実施を予定していたホンソメワケベラを用いた従来のメタ認知検証法であるUncertainty monitoring (UM) testは渡航の遅れのため本年度中に始められなかった。魚類ではそもそもメタ認知の実証例がないため、メタ自己意識の存在を補強するためにもヒトを除く他の動物で確立されている方法でもメタ認知を検証することは不可欠である。新年度5月より渡航できる目途が立っており、2023年3月に行った予備実験の知見を基に実験を行う予定である。

今後の研究の推進方策

本年度中に概ね結果をまとめられるデータが得られたメタ自己意識の研究に関しては論文の執筆を始める。リザード島へ渡航後はホンソメワケベラがメタ認知能力を持つことをより確かに示す根拠を得るためUM testによるメタ認知の検証実験を行う。異なる2つの方法を用いて本種のメタ認知能力を多角的に検証することにより、魚類において初となるメタ認知の検証及びヒト以外の動物で初となるメタ自己意識の実証を進めていく。メタ認知は自己の心的状態を客観視できることを示し、他者の意図などを推察する心の理論とのかかわりが指摘されている。今後は魚類における検証例の乏しい心の理論などの他の自己意識にかかわる認知能力の解明に取り組んでいきたい。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Do fish metacognitively make an optimal choice?2023

    • 著者名/発表者名
      Taiga Kobayashi, Satoshi Awata, Masanori Kohda, Shumpei Sogawa, Redouan Bshary
    • 学会等名
      日本動物心理学会第83回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ホンソメワケベラはメタ認知能力を用いて適切な行動を選択できるのか?2023

    • 著者名/発表者名
      小林大雅・安房田智司・十川俊平・幸田正典・Redouan Bshary
    • 学会等名
      日本動物行動学会第42回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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