研究課題/領域番号 |
23KJ1833
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
藤田 侑志 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | リチウムイオン伝導体 / 非晶質 / 全固体電池 / 硫化物 / 酸化物 |
研究開始時の研究の概要 |
全固体リチウム硫黄(Li/S)電池において、正極活物質として用いられる硫化リチウムは、理論容量が高いが絶縁体であり、電子とリチウムイオンの高速伝導が困難であるため、効率的な反応が求められる。本研究では、イオン伝導性、分解耐性、成形性を備えた非晶質固体電解質を新たに開発し、硫化リチウムの活性化を図る。硫化リチウムと固体電解質を組み合わせた正極複合体を用いることで、全固体Li/S電池の高容量化と高出力化を目指すとともに、正極複合体の機械的特性を評価し、活物質の体積膨張収縮を緩和するための新しい正極設計を提案する。
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研究実績の概要 |
本年度は,Li2O-LiI-MoO3系固体電解質の作製と亜硫酸リチウム(Li2SO3)を用いたLi2Sベース正極材料の開発に取り組んだ。 Li2O-LiI系非晶質固体電解質は25℃において1.7×10-5 S cm-1の比較的高いイオン伝導度を示す。しかし、より一層のイオン伝導度の増大が求められる。Li2O-LiI系非晶質固体電解質の構造解析を行った結果、大部分を占める非晶質成分が高イオン伝導性を有することが分かった。この非晶質領域の拡大によるイオン伝導度増大を期待し、Li2O-LiI系非晶質固体電解質に対して種々のガラス形成酸化物を添加することで新規固体電解質の開発を試みた。その結果、MoO3を添加した場合にイオン伝導度が増大することが明らかになった。作製したLi2O-LiI-MoO3系固体電解質は、リチウム金属負極に対して安定に作動することが分かった。また、Li2SとSiを活物質として用いた全固体フルセルは、可逆的に作動したことから、Li2O-LiI-MoO3系固体電解質は全固体電池へと応用可能であると分かった。 耐酸化性に優れたリチウム塩としてLi2SO3に着目し、Li2Sと組み合わせたLi2S-Li2SO3系正極材料を作製した。同時にLi2SO3の構造や電気化学的特性を初めて報告した。Li2S-Li2SO3系正極材料はメカノケミカル法で作製され、出発原料に対して高いイオン伝導度を示した。Li2S-Li2SO3系正極材料を用いた全固体セルは、25 ℃、C/2 レートの充放電条件下において、1000 サイクルの間およそ 900 mAh g -1 の高い充放電容量を示した。Li2SO3を正極複合体内に用いることで高容量・高レート特性・長期サイクル特性を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Li2O-LiI系固体電解質のイオン伝導度増大に向けた材料開発に取り組み、Li2O-LiI-MoO3系固体電解質を新たに報告した。種々の構造解析や充放電試験により、全固体電池用の固体電解質として利用可能であることを見出した。亜硫酸リチウムに初めて着目し、その構造や電気化学的特性を明らかにした。Li2S-Li2SO3系正極材料を用いた全固体Li/S電池は高容量・高レート・長寿命といった優れた性能を示すことを明らかにした。全固体Li/S電池用正極複合体の高性能化にむけ、新規に優れた材料を見出し、高性能化に成功していることから、研究は順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Li2O-LiI系固体電解質のより一層のイオン伝導度増大に向けて材料探索に取り組む。Li2S-Li2SO3系正極材料の充放電機構を調べることで、高性能化した要因を見出す。また、Li2Sの体積膨張収縮の解決に向けた解析を進める。
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