研究課題/領域番号 |
23KJ1850
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
川澄 留佳 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ミミズ堆肥 / 病害抑制 / 竹 / 植物病原菌 |
研究開始時の研究の概要 |
放置竹林の廃材を粉末にしシマミミズに食べさせた堆肥(タケ由来ミミズ堆肥)は植物病原菌による加害を抑制する効果があり、水耕栽培や有機栽培に利用できる可能性がある。しかしタケ由来ミミズ堆肥の病害抑制効果が効率よく発揮される施用方法、作物の種類および栽培環境、さらに病害抑制のメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では水耕と有機栽培の2つの育成環境で病害抑制効果が発揮される条件を探索し、抑制メカニズムを解明するため、堆肥の物理性や化学性の評価、微生物相解析および抵抗性遺伝子の解析を行う。そして実用化を視野に入れて、植物病害抑制効果が安定して発揮されるタケ由来ミミズ堆肥の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
廃竹材を利用したタケ由来ミミズ堆肥(Vermicomposted-Bamboo powder: VB) は病害抑制効果を持つ土壌改良剤としての普及が望まれるが、病害抑制効果の安定性および抑制メカニズムの解明が課題である。 これまでの報告者の研究から窒素源として油粕を添加して作製したミミズ堆肥MVB (Modified-VB)では従来の方法に従ってクズを添加して作製したミミズ堆肥TVB (Traditional-VB)よりも病害抑制効果が高くなる結果を予備的に得ていた。材料によって病害抑制効果が変わる可能性が示されたため、2023年度はいくつか竹粉末の粒径や窒素源の組み合わせを変えてMVBを作製し病害抑制効果を比較した。具体的にはシソ苗立枯病菌(Pythium myriotylum)とキュウリ苗立枯病菌 (Globisporangium ultimum)を用いて、1)従来の作製法に従って粒径の細かいタケ粉末(粒径0.1~1.0 mm、平均0.6 mm)10 Lにクズを100 g添加したTVB、2)粒径の細かいタケ粉末10 Lに油粕を25 g添加したMVBF25、3)粒径の細かいタケ粉末10 Lに油粕を100 g添加したMVBF100、4)粒径の粗いタケ粉末(粒径0.3~6.5 mm、平均1.6 mm) 10 Lに油粕を100 g添加したMVBC100を作製し、それぞれのミミズ堆肥の病害抑制効果を比較した。 その結果シソ苗立枯病菌、キュウリ苗立枯病菌いずれに関しても市販培養土と比較して全てのミミズ堆肥で有意な抑制効果が見られたが、効果の度合いに差が見られ、MVBC100では2つの病原菌に対して最も安定した高い抑制効果を示し、MVBF100も高い抑制効果を示し、対してTVB、MVBF25の効果は少し低くなる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定では20223年度に土耕栽培の試験でタケ由来ミミズ堆肥の病害抑制効果を評価し、メカニズム解析のとして遺伝子解析、土壌の物理性と化学性の解析、微生物相解析を予定していた。タケ由来ミミズ堆肥の抑制効果の評価は完了したものの、植物と堆肥を用いた実験を行っており、安定したデータを取るまでにかなり時間を要したため解析まで手が回らなかった。 また水耕栽培での試験に関しても扱っているAphanomyces属菌が試験途中に病原性の活性が著しく低くなる問題があり、予定通り試験が進まず当初予定していた論文投稿は達成できなかった。 土耕栽培のタケ由来ミミズ堆肥の病害抑制効果とそのメカニズム解析に加え、水耕栽培での応用も計画しており、2つのメインテーマを同時に進行するような形で研究を行っていた。そして自身の達成可能な能力以上の計画を立て、結果的に全てが半端な結果に終わってしまったことを感じている。そのため次年度は自身の実力に見合った計画を立て、研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究進捗からタケ由来ミミズ堆肥の植物病原菌に対する抑制効果を確認することができた。これらのデータを元にメカニズム解析を進めていくことができる段階に入ったので、肥料分析、防御応答遺伝子の解析、土壌物理性の評価を行う。遺伝子解析、土壌物性の評価に関しては他研究室の協力を得て進めていくことになるので、随時打ち合わせをして解析を進める予定である。当初予定していた微生物相のNGS解析についてはコストがかかる上に安定したデータが取りづらいという判断から解析項目から除外し、他の解析項目に集中する方針とする。 2024年度に予定していたハワイ大学への研究留学は予定通り行う予定であり、植物寄生性線虫のMeloidogyne incognitaやRotylenthulus reniformisに対する抑制効果を評価する。ハワイ大学などが開発してきたミミズ堆肥抽出液散布による病害防除技術をMVBに応用し1) MVB 抽出液の線虫の孵化に対する抑制効果、2)線虫による被害が大きいサツマイモを用いたポット栽培接種試験と同圃場試験を行う。これらの試験により、 MVB 抽出液の線虫に対する病害抑制効果、VB抽出液の実用性の評価を行う。そして得られた成果に関しては論文としてまとめ投稿する予定である。 また水耕栽培の試験に関しては、現在行なっているAphanomyces cochlioidesによる病原性試験の結果を最後に論文投稿のデータが集まるので、試験を行いつつ論文執筆を行う。その後低温条件で病気が発生しやすいAphanomyces 属菌と高温条件で病気が発生しやすいPythium aphanidermatumを用いてタケ由来ミミズ堆肥の抽出液による病害抑制の検証を行い、抑制効果の有無について検証する。
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