研究課題/領域番号 |
23KJ1865
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
滝澤 亮哉 自治医科大学, 医学(系), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ナノマテリアル / 酸化チタン / 炎症 / 肺 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノテクノロジーの発展に伴い、ナノ粒子は、医療や工業、一般生活と幅広い分野で使用されるようになった。しかし、ナノ粒子は、体内の深部にまで到達すること、粒子の結晶構造や表面コーティングで毒性が変化することから毒性評価は非常に難しいという現状がある。既に多くのナノ粒子が身近に用いられている現状において、ナノ粒子曝露による生体影響の評価が必要とされている。 本研究では、世界で最も多く使用されている酸化チタン(TiO2)ナノ粒子などを用い、表面コーティングの状態を変化させ、肺に対する毒性の差異を調べることで炎症反応に着目したナノ粒子の毒性評価法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
酸化チタン(TiO2)ナノ粒子は、世界で最も多く用いられているナノ粒子であり、化粧品や日焼け止め、食品の着色料などに使用されている。現在もTiO2ナノ粒子を用いた製品が多く開発されており、ヒトへの曝露機会が多くなっているが、その安全性については不明な点が多い。実際に、E171という食品着色料として用いられるTiO2ナノ粒子は、実験動物において大腸の腫瘍を形成する可能性が報告されており、2020年にはフランスで、TiO2ナノ粒子曝露の有害性が明らかになっていないということから、食品に対する使用を禁止している。また、近年、微細な粒子であるPM2.5がその粒子径の小ささから肺の深部にまで到達し、健康被害を引き起こすことが社会問題となっており、PM2.5より小さいナノ粒子の吸入曝露のリスク評価が求められている。さらに、ナノ粒子の毒性は表面の物理学的な特性により左右されることが報告されており、製品化される際、様々な種類の表面コーティングを施されるナノ粒子の毒性評価は不十分である。 本研究では表面コーティングの異なるTiO2ナノ粒子曝露により、表面コーティングの違いによる肺への影響について、Nrf2ノックアウトマウスとヒト肺がん細胞株A549細胞を用い、酸化ストレスとNrf2に着目した研究を行った。 本年度は、野生型、およびNrf2ノックアウトマウスに表面コーティングの異なるTiO2ナノ粒子を曝露し、気管支肺胞洗浄液中の細胞数や、肺組織のサイトカインや抗酸化ストレス応答因子に関する分子の発現を解析した。加えて、ヒト肺胞上皮腺癌細胞A549細胞への各種TiO2ナノ粒子を曝露し、細胞生存率を測定することで表面コーティングの違いによる肺への生体影響の差異を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面コーティングの異なるTiO2ナノ粒子を野生型、およびNrf2ノックアウトマウスへ咽頭内吸入曝露を行った。その後、気管支肺胞洗浄液を採取し、細胞数と細胞分布の確認を行った。また、肺組織からmRNAを抽出し、炎症性サイトカイン、Nrf2に関連する抗酸化ストレス応答因子についてのmRNAの発現の分析を行った。野生型、およびNrf2ノックアウトマウスで、気管支肺胞洗浄液中の細胞数に変化は無かった。また、マクロファージ、リンパ球、好中球、好酸球の分布の変化も確認されなかった。肺組織の炎症性サイトカイン、抗酸化ストレス応答因子のmRNAの発現に関しても同様に変化が確認されなかった。細胞実験においても、非曝露群と比較し各TiO2ナノ粒子曝露による細胞生存率に変化が無いことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、TiO2ナノ粒子について、表面コーティングの違いに着目した肺への影響を明らかにすることを目的としている。今後は、各TiO2ナノ粒子による活性酸素種の産生や、細胞への取り込み能の違いについて検討する予定である。
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