研究課題/領域番号 |
23KJ1876
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大谷木 正貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 神経免疫 / 認知症疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
神経変性疾患は異常タンパクの蓄積とグリア細胞を主体とした脳内炎症という共通の病理学的特徴を有しているが、T細胞の脳内浸潤も共通して認める。本研究では、凝集した異常タンパクに対するT細胞の応答に止まらず、異常タンパク凝集機構と蓄積、それに起因する神経細胞死という病態カスケードにおいて、T細胞が有する抗原特異性に着目し、脳浸潤T細胞が直接的に関与する分子機構を解析し、脳特異的T細胞の同定と標的抗原の探索を行うとともに、複数の疾患モデルでの検証を通じて難治性神経変性疾患の病態解明と抗原特異的T細胞の機能修飾による疾患修飾治療法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)患者脳ではアミロイドβ(Aβ)やリン酸化tauの脳内凝集が特徴的な病理変化であるが、病変部位には活性化したグリア細胞に加えて種々のT細胞の浸潤が認められる。近年、AD患者脳脊髄液中に抗原特異的なCD8陽性T細胞がオリゴクローナルに増殖していることが報告されたが、AD病態においてCD8陽性T細胞が担う病的意義については明らかとなっていない。初年度は、脳内Aβ凝集モデルであるAPPノックイン(APP-KI)マウスを用い、加齢によるAβ蓄積とともに脳内CD8陽性T細胞が増加すること、T細胞を特異的に欠くAPP/CD3eKOマウスや、APP-KIマウスで抗体または薬剤誘発性にCD8陽性T細胞を減少させると脳内Aβ凝集が変化し、特に早期病態においてはCD8陽性T細胞の除去が脳内Aβ凝集に抑制的に働くことを確認した。脳内免疫細胞のシングルセルRNA-seqでは、脳CD8陽性T細胞は主にケモカイン経路を介して疾患特異的ミクログリアとの細胞間相互作用を発揮しており、T細胞欠損により定常状態ミクログリアに特徴的な遺伝子発現は抑制される一方で、疾患特異的ミクログリアに特徴的な遺伝子発現が亢進しており、CD8陽性T細胞は疾患特異的ミクログリアの活性化を修飾し、脳内炎症やAβ凝集に関与していると考えられた。さらにT細胞受容体レパトア解析では、APP-KIマウス脳において抗原特異的CD8陽性T細胞のオリゴクローナルな増殖を認めた。現在は、T細胞受容体レパトア解析で得られたAPP-KIマウス脳に特徴的なT細胞受容体配列のクローニングを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の主な計画は、APP/CD3eKOマウスやAPP-KIマウスで抗体または薬剤誘導性にCD4、CD8陽性T細胞を除去した際の脳内Aβ蓄積量の変化を評価し、アミロイド病理における分子発現の変動を解析すること、さらにAPP-KIマウスの脳内T細胞の遺伝子発現変化をシングルセルRNA-seqで網羅的に解析し、アミロイド関連脳T細胞の遺伝子プロファイルを作成することであり、上記は計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
T細胞レパトア解析で同定したAPP-KIマウス脳に特徴的なT細胞受容体配列を、ハイブリドーマ、あるいはウイルスベクターを用いて野生型CD8陽性T細胞に導入し、APP/CD3eKOマウスに移入後の脳内Aβ凝集の変化などを病理学的に解析する。また、シングルセルRNA-seq解析から得られた脳内CD8陽性T細胞と疾患特異的ミクログリアとの相互作用を介する候補分子の投与や抗体など阻害分子の投与による病理学的変化の解析を進める。今後、疾患特異的CD8陽性T細胞の機能解明によって同細胞修飾が早期AD治療の選択肢となることが期待できる。
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