研究課題/領域番号 |
23KJ1878
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮崎 茜 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | フランス詩 / ロマン主義 / 幻想 / 散文詩 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フランスにおいて詩形が自由化する過程を、「幻想(fantaisie)」という言葉が詩法刷新のキーワードのように働いた局面に注目しながら、自由を希求する詩の試みとして包括的に説明することを目指す。フランスでは19世紀初めのロマン主義運動の最中から韻文ではなく散文を用いた詩が試みられ、同世紀後半には散文詩・自由詩が発展した。しかし韻文詩と散文詩の接続を考える際、アロイジウス・ベルトランらの提唱した「幻想」が果たした役割はほとんど省みられてこなかった。芸術における自由を希求したロマン派の合言葉として1830・1850年代に流行したこの言葉の影響を加味して詩形変化を考えることが必要である。
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研究実績の概要 |
本研究は、フランスにおいて詩形が自由化する過程を、「幻想(fantaisie)」という言葉が詩法刷新のキーワードのように働いた局面に注目しながら、自由を希求する詩の試みとして包括的に説明することを目指すものである。フランスでは、19世紀初めのロマン主義運動の最中から韻文ではなく散文を用いた詩が試みられ、同世紀後半には散文詩・自由詩の発展にまで至った。しかし韻文詩と散文詩の接続を考える際、現在では後者の創始者として区分されてしまうことの多い、『夜のガスパール レンブラント及びカロ風幻想集』の作者アロイジウス・ベルトランらが実践してきた「幻想」という手段との関係はほとんど省みられず、それらをつなぐ蝶番としての役割が見逃されてきた。「幻想」は1830・1850年代に大きく流行したことがわかっている、「自由」や「反抗」と結びつくロマン主義のキーワードでもあるため、その影響を加味して詩形変化を考えることは不可欠である。 こうした目的のもと、19世紀全体及び20世紀初頭を視野に入れて、「幻想」に関わる文学運動の局面を整理してゆく予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴うPD資格要件に係る特例取扱い制度を適用していただけたため、特別研究員PDの採用開始は令和6年1月となった。そのため本年度の大部分は、留学先のフランス・パリでの博士号準備にほとんどの時間を割くこととなった。 12月に博論審査を完了し留学先での学位記発行等を待った後、年明けに日本に帰国してからは、受入先研究機関等での手続きを進めた。年度末の決算時期と受入時期が被ってしまったことから、研究奨励費の執行開始を新年度以降にしたため、PDとして本格的な研究に着手できるのは書籍等の購入を待ってからとなった。しかし留学先から持ち帰った資料もあったため、博論審査で指摘を受けた点を中心に、上の研究準備に取り掛かることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、本研究は令和6年1月から採用開始となった。本年度のうち採用期間にあたるのは最後の3ヶ月(令和6年1-3月)だが、受入研究機関での年度末の決算時期と採用開始時期が被ってしまったことから、研究奨励費の執行開始を新年度以降に回すことにした。研究に取り込む準備としては、今後購入する書籍等のリストアップや、資料収集のための海外出張予定を組むことに注力した。ただし、留学先から持ち帰った資料もあったため、それらを用いて、博士論文の審査で指摘された点や発展させられそうな部分を中心に研究準備に取り掛かることができた。「幻想」というキーワードを扱う上で見ておくべき作家として勧められたミュッセ、ランボーに関わる研究書や、1850年代の「幻想」流行を扱った著作の読解を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本格的に研究を開始する準備としてリストアップした書籍・資料の収集・読解を進めてゆく。次年度夏には早速フランスでの資料調査と現地での研究活動も予定している。博士論文では、『夜のガスパール』の作者アロイジウス・ベルトランがこの詩集の副題につけた「レンブラント及びカロ風幻想集」に見られる「幻想(Fantaisies)」という単語について考察し、その由来や手法としての意図、後世への影響をまとめた。これを踏まえ、ロマン主義運動の旗印でもあり、19世紀を通じて発展していった、「自由」や「反抗」と結びつくこの「幻想」というキーワードが、ボードレールたち次の世代によって再び取り上げられる様子や、それが「散文詩」発展に関係する経緯をさらに調査すべく、19世紀後半の文壇の動きについての知見を広める作業を進めてゆく。次年度にはフランスで新しいボードレール全集の刊行が予定されているため、本研究に生かせるような、近年活発な「幻想」との比較研究を中心とする新しい研究成果に触れられることも期待している。
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