研究課題/領域番号 |
23KJ1890
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分07090:商学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西尾 和生 慶應義塾大学, 経済学研究科(三田), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2024年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2023年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | ロイヤルティプログラム / 販促インセンティブ / ポイントプレッシャー効果 / 特典行動効果 / 顧客生涯価値 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非合理的な顧客集団に対して最も訴求力の高い報酬構造を理解するために、行動経済学を基礎とした顧客行動のモデリングを行う。具体的には、行動経済学的知見に沿って構成した計量経済学的モデルに基づき最適なロイヤルティプログラム設計に関する議論を行うことで、ブラックボックス的な機械学習モデルでは困難である、非合理的な購買行動のメカニズムの解明と顧客を取り巻く環境に頑健な実務的示唆の獲得を目指していく。
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研究実績の概要 |
報酬制度としてのロイヤルティプログラム(LP)に着目した上で、今年度は主に2つの研究を進展させることができた。 1つ目に、LPにおける販促インセンティブが顧客購買行動に与える短期・長期的効果に関する研究である。これまで、クーポンや誕生日特典といった販促インセンティブ単体が顧客の購買行動に与える影響については数多く議論がなされてきた一方、それらがLPに組み込まれた際に、ポイントプレッシャー効果(PP効果)や顧客生涯価値(CLV)の観点で企業にとって有益であるのかを評価した研究は存在しなかった。この点について、某小売企業の誕生日特典を伴ったLPを分析した結果、LP内での過度な販促インセンティブの付与はLP自体の収益性を損ね得るため、PP効果やCLVの観点で望ましくないという非常に新規的な知見を得ることができた。当該研究については現在、海外の査読付き論文誌に投稿中である。 2つ目に、LPの主要2形態である頻度報酬プログラム(FRP)と顧客階層プログラム(CTP)の制度比較に関する研究である。従来の研究では、FRPまたはCTPのいずれか一方のみが研究対象とされてきたが、それらを直接的に比較しようとする点が本研究の新規的な部分である。世界的に見ても珍しい、ポイント構造が途中でFRPからCTPに変化した某小売店のID-POSデータを利用することで、2種類の報酬制度が顧客購買行動の非合理性を促す程度の差異を捕捉することができた。現在、競合店舗の情報を加味することで分析を進展させることを目指しており、次年度中には海外の査読付き論文誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は海外の査読付き論文誌(Q1誌)1本への掲載を目標としていたが、1つ目の研究については既に査読者3名中2名が採択に近い評価を下しており、近日中に採択の目処が立っているため、当該区分を選択するに至った。また、使用した計量モデルの理論的側面に関する研究について、日本計算機統計学会第37回シンポジウムにて学生研究発表賞を頂くことができたため、研究は概ね順調に進展しているのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2つ目の研究の分析モデルを発展させた上で、当該研究の理論的背景と実務的貢献を客観的に記述するために様々な分野における最新の研究を精読していく予定である。分析モデルの発展については、LP会員ごとの異質性(変量効果)や競合店舗のLP構造の加味、シミュレーションに基づくLP内の閾値の効果の定量化などが考えられる。また、最終的にJournal of Retailingレベルの雑誌への掲載を目標としているため、十分な理論的根拠に基づく仮説構築や実務・学術双方の領域にとっての本研究の位置付けの明確化などを行うことが必要不可欠になると予想される。従って、LPに限らず、心理学や行動経済学などの様々な領域における最新の知見・理論を積極的に取り入れていこうと考えている。
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