• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

立場の違いを超えて「ピアになる」過程:精神保健福祉領域における当事者性の人類学

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1909
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分04030:文化人類学および民俗学関連
研究機関東京大学

研究代表者

横山 紗亜耶  東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワード精神障害 / 障害者運動 / 当事者運動 / ピアサポート / ピアスタッフ / 当事者性 / 専門性 / 立場性
研究開始時の研究の概要

日本の精神保健福祉領域はどのように必要とされ、築き上げられてきたのだろうか。精神保健福祉領域は、精神病患者を隔離・収容する精神科病院の建設が増加した戦後に精神科病院と地域社会をつなぐ独自の領域として発展した。その後は、脱施設化と地域における福祉支援の拡充を訴える運動体を基盤として、支援者が患者とともに活動する領域となったが、現在二者は分断されつつある。本研究は、当事者と専門家が互いに影響を与え合いながら当事者性と専門性を構築してきた歴史を調査した上で、それを当時の社会・制度的背景への応答として分析し、いかにして日本の精神保健福祉領域が現在の形へと創り上げられてきたのかを明らかにする。

研究実績の概要

今年度は、日本における精神障害ピアサポーターの制度化をめぐる「当事者性」の変遷を明らかにする研究計画のうち、予備調査にあたる作業に取り組んだ。具体的には、①2021年度障害福祉サービス等報酬改定による「ピアサポート加算」実施をピアサポーターの制度化の一つの到達点と仮定し、以上に至るまでの歴史を調査した。同調査を通じ、制度化のプロセスに関わった多くの人々に接触し、インタビューをすることができた。②以上の調査の過程で、近年の精神障害当事者運動に従事する人々が集まる学会やフォーラムがいくつかあるとの情報を入手し、その多くにに参加した結果、多くのピアサポート関係者と直接話すことができたほか、成果報告と交流の場を具体的に広げることができた。③演劇を行う当事者団体に同行し、当事者とともに行う表現活動がいかにして行われているのかを学ぶとともに、制度化をめぐる活動との対比から、当事者参画型の活動のあり方について重要な示唆を得た。
今後は、前述の成果を下地として、一部の当事者団体に軸足を置きながら、より具体的なフィールドワークを進め、当事者活動で言及される「当事者性」の変遷と、その使用をめぐる戦略を明らかにしていきたい。これまでは、「ピアサポート加算」制度化に関わる当事者団体に焦点を当ててきたが、制度化の過程に関わることは、当事者団体における戦略的な活動の一形態に過ぎない。社会的影響力のある当事者団体でありながら、ピアサポート加算に関わってこなかった団体は、どのような戦略的な活動を行っているのだろうか。そして、この戦略において「当事者性」はどのように関わっているのだろうか。以上の問いを明らかにすることで、当事者運動における多様な当事者の立場、調査者自身を含む健常者の専門職・研究者などとの関係性、立場や関係性の違いから生まれる多様な責任のあり方を明らかにしていきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、日本における精神障害ピアサポーターの制度化をめぐる「当事者性」の変遷を明らかにする研究計画のうち、予備調査にあたる作業に取り組んだ。
まず2023年6月から9月にかけ、全国「精神病」者集団の共同代表であり、同志社大学特別研究員である桐原尚之氏との共同研究を行い、2021年度障害福祉サービス等報酬改定による「ピアサポート加算」実施をピアサポーターの制度化の一つの到達点と仮定し、以上に至るまでの歴史を調査した。同調査を通じ、制度化のプロセスに関わった多くの人々に接触し、インタビューをすることができた。以上の成果は、2024年3月に桐原氏が主催するクローズドの研究会において報告を行った。
以上の調査の過程で、近年の精神障害当事者運動に従事する人々が集まる学会やフォーラムがいくつかあるとの情報を入手し、日本ピアスタッフ協会主催の各種イベント(8月6日, 12月9-10日)、認定NPO法人地域精神保健福祉機構主催のリカバリー全国大会(10月28-29日)、日本精神障害者リハビリテーション学会大会(12月2-3日)、日本病院・地域精神医学会総会(12月16-17日)、日本心理教育・家族教室ネットワーク研究集会(2月23-24日)に参加し、多くのピアサポート関係者と直接話すことができた。以上で出会った日本ピアスタッフ協会関係者を中心に、当事者・研究者混合のクローズドの研究会の設立に携わり、3月に研究成果の報告をするとともに、今後の研究調査の協力依頼を行った。
さらに、以前からの研究協力団体である「OUTBACKプロジェクト(精神障害当事者を中心とした劇団)」の旅公演にリハーサルから同行(8月31日-9月3日)し、当事者とともに行う表現活動がいかにして行われているのかを学ぶとともに、制度化をめぐる活動との対比から、当事者参画型の活動のあり方について重要な示唆を得た。

今後の研究の推進方策

前述の成果を下地として、今後は一部の当事者団体に軸足を置きながら、より具体的なフィールドワークを進め、当事者活動で言及される「当事者性」の変遷と、その使用をめぐる戦略を明らかにしていきたい。
これまでは、「ピアサポート加算」制度化に関わる当事者団体に焦点を当ててきたが、制度化の過程に関わることは、当事者団体における戦略的な活動の一形態に過ぎない。社会的影響力のある当事者団体でありながら、ピアサポート加算に関わってこなかった団体は、どのような戦略的な活動を行っているのだろうか。そして、この戦略において「当事者性」はどのように関わっているのだろうか。以上の問いを明らかにすることで、当事者運動における多様な当事者の立場、調査者自身を含む健常者の専門職・研究者などとの関係性、立場や関係性の違いから生まれる多様な責任のあり方を明らかにしていきたい。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 「[書評]森明子編『ケアが生まれる場──他者とともに生きる社会のため に』」2024

    • 著者名/発表者名
      横山紗亜耶
    • 雑誌名

      『文化人類学』

      巻: 88(4) ページ: 776-779

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 「共感」は「する-される」のか:精神障害ピアスタッフが曖昧にする主 客関係」2023

    • 著者名/発表者名
      横山紗亜耶
    • 学会等名
      第96回日本社会学会大会 テーマセッション「共感と共生の社会学(2)」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 「投げかけられていない呼びかけに応答する:精神障害当事者活動におけるパフォ ーマティヴィティ」2023

    • 著者名/発表者名
      横山紗亜耶
    • 学会等名
      日本文化人類学会第57回研究大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi