研究課題/領域番号 |
23KJ1918
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
安田 一希 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | 分子動力学 / 機械学習 / 天然変性タンパク質 / 液-液相分離 |
研究開始時の研究の概要 |
特定の構造を持たず構造が大きくゆらぐ天然変性タンパク質は、液-液相分離により液滴を形成する。本研究では、天然変性タンパク質の構造ゆらぎに注目し、多様な条件でのタンパク質構造ゆらぎを、大規模な分子動力学計算により取得、機械学習手法を用いて解析する。さらに、構造ゆらぎから相分離特性を予測するモデルを考案する。これにより、構造ゆらぎと相分離の関係を明らかにすることを目指す。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、天然変性タンパク質―RNAの凝集体の粗視化分子シミュレーションを実施した。粗視化分子モデルは、タンパク質を構成するアミノ酸1つを1つの粒子として表すモデルであり、生体分子の凝集体のような複数個の生体分子が関与する大規模系な現象をシミュレーションにするのに適している。 天然変性タンパク質については粗視化分子モデルが十分に開発されているものの、RNAに関しては一分子の挙動と相分離の特性を十分に表せる粗視化モデルが十分に開発されていない。そこで、タンパク質との凝集において広く用いられているpolyAやpolyUといった一本鎖RNAの挙動を再現する粗視化モデルを新規に開発した。polyAやpolyUについては、実験による測定データが十分には公開されていないため、実験データだけではなく全原子シミュレーションから得られるデータも組み合わせてモデルを作成した。具体的には、全原子シミュレーションから得られるデータにより結合長といったミクロな物性パラメータを決定し、SAXSによる実験データから得られる慣性半径を再現するように粗視化ビーズの疎水性パラメータを決定した。これにより、イオン濃度によって変化するpolyU30の慣性半径の挙動を再現することができた。さらに、モデルの妥当性を確認するために、RNA-RNAの分子間相互作用を表す第二ビリアル係数が実験データと概ね一致すること、および変性タンパク質とのreentrantな相分離の挙動が再現できることを確認した。さらに、応用的な例として転写凝集体に関するシミュレーションを行った。その結果、メディエータとRNA凝集体が、RNAの濃度に依存して転写因子を選択的に吸収することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、polyAやpolyUといった一本鎖RNAの挙動を再現する粗視化モデルを新規に開発した。さらに、天然変性タンパク質とRNAが相互作用する凝集に関する分子シミュレーションを実施し、水・RNA・天然変性の3成分に関して相図を示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に開発したRNAモデルを使用して、複数の天然変性タンパク質との液液相分離に関するシミュレーションデータセットを構築する。さらに、短時間もしくは小規模なシミュレーションから液液相分離を予測する機械学習手法を開発する。
|