研究課題/領域番号 |
23KJ1937
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
小坂 有弘 大正大学, 綜合仏教研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 空性 / 中観派 / インド仏教 / 二諦 / 龍樹 / チャンドラキールティ / ナーガールジュナ / アーリヤデーヴァ |
研究開始時の研究の概要 |
現存するインド撰述の中論註の内、最も後代に作られた『明句論』の著者チャンドラキールティは、自身の提唱する段階的学習説に基づき、二諦を初期仏教以来の伝統教説の学習段階と空性説の学習段階からなる二段階の学習プロセスとして解釈する。彼がいかなる必要性から先行する注釈者の解釈を否定し、特異な解釈を形成するに至ったのか、といった問題はインド中観派の二諦解釈史を通史する上で不可欠の研究課題である。本研究では彼の解釈の思想史的背景の解明を通じて、開祖ナーガールジュナによる二諦説の提示から諸注釈者の解釈を経てチャンドラキールティの理解が成立するまでを包含したインド中観派における二諦解釈史の構築を目的とする。
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研究実績の概要 |
チャンドラキールティは、初期仏教以来の伝統教説の学習段階と空性説の学習段階からなる二段階の学習プロセスを提唱し、この段階的学習説を自身の二諦解釈にも反映させている。 本年度は、彼の学習説との関連が見出せるナーガールジュナの『六十頌如理論』アーリヤデーヴァの『四百論』と、両著作に対するチャンドラキールティの注釈を分析し、彼が二諦解釈に反映させる段階的学習説を、いかなる思想背景のもとで形成したのか、この課題の解明を目指した。 ナーガールジュナ、アーリヤデーヴァは、それぞれ『六十頌如理論』第30-35偈『四百論』第8章第14-20偈において、五蘊十二処十八界等の伝統説を空性学習以前の未熟な生徒を対象とした学習徳目と見なし、両著作に注釈を残すチャンドラキールティの段階的学習説への影響が看取される。両著作と彼の注釈の該当箇所を比較検討することによって、彼が先行する中観派の学習説をどのように理解し、自説に取り入れたのかを検証し、彼の段階的学習説の思想背景の分析を行った。『六十頌如理論』『四百論』はともに梵語断片、チベット語訳、漢訳で現存しており、チャンドラキールティの注釈は梵語断片、チベット語訳で現存している。文献の読解と思想分析を行う際は、 基礎資料として、これらの梵語断片および諸翻訳の対照テキストを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、チャンドラキールティが、自身の二諦解釈に応用する段階的学習説をいかなる思想史的背景のもとで構想したのか、という問題を考察した。具体的には、ナーガールジュナ著『六十頌如理論』とアーリヤデーヴァ著『四百論』を分析し、その結果として、チャンドラキールティの段階的学習説が彼らの著作の影響下に成立した可能性を指摘した。 以上から、チャンドラキールティが提示する二諦解釈の思想的背景をある程度明確化することができ、これによって、2024年度以降に、他の中論注釈者の二諦解釈の異同と歴史的展開について考察していくための足掛かりを得た(本成果を軸とした研究成果については、2024年8月にウィーンで、2025年8月は、ライプチッヒで発表する予定である)。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降は、現存するインド撰述の中論注釈書全ての二諦解釈を、継承と批判という観点から分析し、時系列化することで二諦解釈の歴史的展開を考察していく。インド選述の注釈書としては、『青目釈』(漢訳)、『無畏論』(チベット語訳)、『般若灯論』(漢訳・チベット語訳)、『大乗中観釈論』(漢訳)、『明句論』(梵語・チベット語)の五つが現存しており、まずは各注釈の二諦解釈部分を現代語訳し、その上で、各注釈者の二諦解釈を、世俗諦と勝義諦の語義解釈、解脱論、学習方法の観点から分類して、その異同を明らかにする。さらに、先立つ者の説を後の者がどのように継承、あるいは批判するのか、という点に着目して時系列化することで、各注釈者の解釈を、インド中観派の二諦解釈史としてまとめる。
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