研究課題/領域番号 |
23KJ1941
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
澤橋 龍之介 中央大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 力覚提示 / 身体拡張 / VR / MR流体ブレーキ / 人工筋肉 / 身体所有感 / 運動主体感 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,可変粘弾性特性を有する装置による全身力覚提示装置の実現および身体の空間的・時間的拡張を適応した場合の視覚的な身体と深部感覚との身体認知プロセスの解明である.ここで,空間的・時間的拡張とはそれぞれ,身体サイズの変容と動作の高速化,低速化を意味する.各拡張を適応した身体の運動主体感や身体所有感を向上させるための条件や閾値をセンサデータから分析する.また,拡張身体に対する操作性を精神的,生理的な負荷指標から評価する.これらにより, VR空間でのインタラクションにおける反力の再現による現実感の向上に限らず,VR空間を積極的に活用した認知能力の拡張に繋がると考える.
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研究実績の概要 |
近年,VR技術が幅広い分野で利用される中,人間の認知機能の解明にもVR空間が利用されている.VR空間上で刺激を変えることで,人間の刺激に対する応答の違いを自分の身体の一部だと感じる身体所有感,その身体部位を自身で制御していると感じる運動主体感という観点から評価する研究がある.このように,VR空間で刺激を変化させることで,現実的には難しい変化,例えば,動作の身体認知の高速化,低速化などの時間的な拡張や身体サイズの変容による空間的拡張が容易に行える.この身体拡張により,身体観の変容がもたらす認知への影響を推し量ることができる.見かけの身体と触力覚との関係性において,皮膚の感覚は振動デバイスなどの小型アクチュエータによる提示が可能であり,実験環境を構築しやすい.一方,筋骨格や腱,関節の動きに伴う深部感覚の提示は,身体本体を動かす必要があり,物を持ったり歩いたりといった全身の身体動作が伴う場合,外部から刺激を与える装置が大型化,複雑化するため先行例が少ない. 力覚提示による時間的拡張は重力加速度を変える必要があり,その影響を受ける身体全身に対して重力感覚を提示する必要がある.また,空間的拡張については,拡張した身体で自身を触るときにバランスを崩すことを防ぐためにも全身に装置を装着する必要がなる.以上のように,力覚フィードバックのある包括的な身体動作において身体認知を取り扱うためには全身に力覚提示する装置が必要となる. そのため本研究では,可変粘弾性特性を有する装置による全身デバイスを開発,およびVR空間上で視覚的に拡張した身体に対して深部感覚刺激を与えた場合の身体認知の解明を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1)全身装着型力覚提示装置の開発 肩部に自由度を集約した可動域拡張型上肢力覚提示装置を両腕に拡張した双腕装着型装着型力覚提示装置を開発した.背負う箇所の装着方法を改良することにより,装着感が向上した上,ユーザ1人で装着可能となった.下肢装置に関しては,外骨格装置ではボールを蹴るときの撃力やボール自体の重さ感覚提示実験を実施した.靴型装置では落下感覚提示コンセプトに基づき二段階落下した場合に現実感が最も向上することが明確になった.最終的に全身に装着するため,軽量化と装着性の向上のために随時改良を加えた. (2)VR拡張身体プラットフォームの構築 本研究では最終的に,VR空間で全身の身体を拡張する必要がある.しかし,既存研究ではVR上の拡張身体を構築する統一言語や規格が存在しないため,まずその環境を構築する必要がある.拡張した身体の挙動や動作が現実の身体と一致していない場合,力覚刺激を与える以前に身体所有感が向上しない可能性が高い.そのため安定して現実の動作とリンクするアバターが必要である.ゲームエンジンUnity,身体の運動学を演算するアセットと身体拡張用スクリプトを用いてプラットフォームを構築しネット上で公開した. (3)単軸での拡張腕に対する力覚提示実験 身体拡張実験として,肘周り回転1自由度装置を用いてVR空間上で肘先を拡張する感性評価実験を実施した.拡張した腕に与える一定力を強くするだけでは,身体感覚に明確な差は出なかった.しかし,動かしにくくすることにより見かけ上の速度が抑制されるという効果が示唆された.肘屈曲の角度に応じて動的に伸長する腕に対して慣性モーメントを力覚提示した結果,身体所有感が高まることが示唆された.一方で,行為主体感は下がる傾向があった.ハードウェア,ソフトウェアともに複雑で要素が多いため開発に時間がかかった結果当初の予定より進捗が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
現在まで単軸装置で感性評価実験を実施していたが,開発してきた装着型装置を用いてVR空間上の身体拡張に着手する予定である.心理学専門の方に感性評価実験のアドバイスをいただきながら加速度的に実験を進めていく. (実験①:上肢空間的拡張実験)VR身体拡張プラットフォームと4自由度上肢装着型力覚提示装置を用いて,リーチング課題を実施する.実験条件として,「腕の長さ」「力覚提示の種類」「身体から作業平面までの距離」を設ける.力覚提示手法として,腕を剛体とみなし慣性モーメントの概念を取り入れ,腕の長さ,重量,加速度に依存した力覚フィードバックを行う.実験動作はランダムに出現するキューブに対してVR空間上の腕で触りに行く動作である.(実験②:下肢空間的拡張実験)上肢の実験と同様の実験を下肢でも実施する.(実験③:全身空間的拡張実験)実験①と実験②をベースに,身体感覚を高める条件を考慮して以下の2点の応用的な検証を実施する. (応用実験①:全身サイズ変容実験)例えば,全身が巨大化する場合,重量の増加やサイズが長くなることにより動きにくさが増加し,動作速度が低下する.その動きにくさを力覚フィードバックすることで身体感覚が向上すると考える.(応用実験①:拡張身体を用いた運動学習による道具の身体化の促進)運動学習対象として,ラケットでボールやシャトルを打ち返す動作を想定している.VR空間上で道具を持たせるよりも拡張した身体で運動学習した方が自身の間合いを認知しやすくなると考える. 時間的拡張に関しては応用実験①②の結果でそれぞれ身体感覚が向上した場合に実施するが,進捗次第では研究を空間的拡張までに留める可能性がある.
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