研究課題/領域番号 |
23KJ1949
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
安藤 雄太郎 東京歯科大学, 歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 血管石灰化 / 異所性石灰化 |
研究開始時の研究の概要 |
動脈硬化の主な臨床症状の一つである血管石灰化は、硬組織の極めて厳密な制御機構の破綻によって生じる異所性石灰化であり、致命的な心血管イベントに繋がる。しかし、その病態形成機序には未だ不明な点が多い。この血管石灰化には、骨代謝や免疫系の枢軸分子であるRANKL/RANK/OPGの関与が示唆されているが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究では、RANKL/RANK/OPG経路に着目し、血管石灰化の病態を「炎症に伴う異所性石灰化」と捉え直し、免疫系と硬組織代謝系を標的とした革新的な新規制御法を開発することを目的とする。
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研究実績の概要 |
血管石灰化は、生体内における厳密な制御機構の破綻によって生じる異所性石灰化であり、致命的な心血管イベントにつながり生命予後を顕著に増悪させる。しかし、その病態形成機序には未だ不明な点が多く、有効な治療法は確立されていない。破骨細胞分化誘導因子RANKLのデコイ受容体であるOPGは、血管石灰化の抑制因子として知られている。このOPGによる血管石灰化の制御メカニズムとして、骨芽細胞由来のOPGが破骨細胞の活性化を阻害することで血管石灰化発症を抑制する「カルシウムシフト説」が提唱されているが、生体レベルでは検証されていない。本研究では、RANKL/RANK/OPG系に着目し、血管石灰化発症の分子機構の解明を目的とした。動脈硬化マウスモデルの病変部位のシングルセルRNA-seq解析データより、RANKL、RANK、OPGは血管を構成するストローマ細胞および病変部位に浸潤する免疫細胞において高発現することを見出した。血管構成細胞特異的にOPGを欠損させたマウスでは、骨量減少は認められないが、重度の血管石灰化を発症した。一方、骨芽細胞特異的OPG欠損マウスでは、著しい骨量減少を認めるが、血管石灰化を発症しなかった。以上の結果は、OPGによる血管石灰化制御機構の定説「カルシウムシフト説」を覆しうるものであり、血管局所におけるRANKL/RANK/OPG軸の破綻が血管石灰化発症に寄与する可能性が示唆された。今後は、ヒト血管石灰化病変を用いた空間トランスクリプトーム解析や、in vitroアッセイによる血管構成細胞の石灰化メカニズムの検証を行い、血管石灰化の新規制御法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究者は令和5年度より特別研究員に採用され、骨免疫学による異所性石灰化の病態解明および制御法確立を目指し、研究に精力的に取り組んできた。高リン負荷状態で全身性OPG欠損マウスに血管石灰化を安定的に発症させ、マイクロCTを用いて定量的に解析する系を確立した。この系を用いて、各種OPGコンディショナルノックアウトマウスで血管石灰化を誘導し、血管石灰化におけるOPGの機能および発現細胞を生体レベルで検証した。また、シングルセルRNA-seqデータ解析により、動脈硬化病変に浸潤する免疫細胞、血管構成細胞の遺伝子発現を解析した。以上から、申請者は既に血管局所で産生されるOPGが大動脈の石灰化を制御することを明らかにしており、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの血管石灰化動脈検体を用いた空間的トランスクリプトーム解析を実施し、ヒトの疾患病態の理解とともに、病変部位に集積する種々の血管構成細胞の細胞間相互作用を包括的に理解することを目指す。また、細胞株を用いたin vitroアッセイにより、血管構成細胞の石灰化メカニズムを詳細に検証する。さらに、種々の中和抗体や阻害剤を用いたスクリーニング試験により、石灰化予防効果の有効性を検討し、石灰化誘導性免疫細胞やRANKL/RANK/OPG系を標的とした新規予防法・治療法の確立を目指す。
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