研究課題/領域番号 |
23KJ1978
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
佐藤 大夢 東邦大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 海生適応 / 羊膜類 / 塩類腺 |
研究開始時の研究の概要 |
陸から海へと生活の場を移した爬虫類・鳥類は、海水中から体内に取り込まれた過剰な塩分を体外に排出する器官である”塩類腺”を獲得した。塩類腺は、その形成箇所や塩分排出方法が系統間で異なることから、複数の爬虫類・鳥類で独立して獲得されたと考えられている。しかし、各系統の塩類腺が、いかにして形成されるのはよくわかっていない。 本研究では、海生の爬虫類・鳥類を代表する 4 系統であるウミガメ、ウミヘビ、クロコダイル、 ペンギンの胚を材料に用いて、塩類腺の形成機構を系統間で比較解析することで、各系統で独自に獲得された塩類腺の形成に共通の分子・細胞基盤が働いているかどうかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度、複数の系統における塩類腺形成様式の共通性と多様性を評価するため、塩類腺をもつアオウミガメ、フンボルトペンギン、比較種として塩類腺ではなく涙腺をもつカメ類(クサガメ、スッポン)および塩類腺ではなく鼻腺をもつ鳥類(ウズラ、オカメインコ)の胚頭部組織切片を作成し、染色した組織切片の三次元再構築を行った。三次元モデルを種間比較することで、各系統の塩類腺形成様式を評価した。 ウミガメ類の塩類腺は他系統のカメや我々ヒトにも見られる涙腺が変化することでもたらされた構造であると言われている(Marshall and Saddlier 1989; Babonis and Brischoux 2012)。しかし、ウミガメ類がもつ塩類腺が、いかなる分子基盤によってつくり出されているのかは何もわかっていない。前述した塩類腺形成様式の比較から、「ウミガメの塩類腺は、一般的な涙腺形成遺伝子の発現パターンが変化することによってもたらされているかもしれない」という仮説を立てた。マウスの涙腺形成を調査した先行研究(Makarenkova et al. 2000; Dean et al. 2004; Garg et al. 2017; Bannier-Helaouet et al. 2021)によって同定されている複数の涙腺形成関連遺伝子(Bmp7、Fgf10、Sox9、shh、Gli3、Pax6)に注目し、それらをアオウミガメ、スッポン、クサガメから単離した。単離した遺伝子について、3種のカメ胚の頭部における発現パターンをin situハイブリダイゼーション法を用いて調べた。その結果、複数の腺形成遺伝子がウミガメの塩類腺形成予定領域で特異的な発現パターンを示すことが分かった。アオウミガメで特異的な発現パターンを示した複数の遺伝子を、3種の鳥類(ペンギン、ウズラ、オカメインコ)より単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度における研究計画は、塩類腺をもつ複数の海生爬虫類・鳥類のうち、ウミガメ類に注目し、その塩類腺形成を組織・分子レベルで調査することであった。塩類腺をもつアオウミガメ、比較種として塩類腺ではなく涙腺をもつカメ類(クサガメ、スッポン)の胚頭部組織切片を作成し、染色した組織切片の三次元再構築を行った。三次元モデルを種間比較することで、ウミガメの塩類腺形成パターンを評価した。また、複数の涙腺形成関連遺伝子(Bmp7、Fgf10、Sox9、shh、Gli3、Pax6)に注目し、3種のカメ胚の頭部におけるそれらの発現パターンをin situハイブリダイゼーション法を用いて調べた。その結果、複数の腺形成遺伝子が、ウミガメの塩類腺形成予定領域で特異的な発現パターンを示すことが分かった。この時点で、前年度の研究計画は達成された。 前年度中に、ウミガメに続いて、塩類腺をもつ鳥類であるペンギンに注目し、その塩類腺形成についての調査も実施した。塩類腺をもつペンギン、比較種として塩類腺ではなく鼻腺をもつ鳥類(オカメインコ、ウズラ)の胚頭部組織切片および三次元モデルの作成も完了させた。さらに、上述した解析によって明らかになった、アオウミガメの塩類腺形成予定領域で特異的な発現パターンを示した複数の遺伝子を、3種の鳥より単離した。 以上より、本年度は、当初の計画以上の研究成果を出していることから、上記評価が妥当であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
【研究の到達目標及びテーマ】 本年度における本研究の到達目標は、アオウミガメとフンボルトペンギンの塩類腺形成に共通して関与する遺伝子を特定することである。 【概要と研究計画】 塩類腺は複数の海生爬虫類・鳥類系統で独立して獲得されたものと考えられている。しかしながら、各系統の塩類腺がどのような分子基盤によってつくり出されているのかはよくわかっていない。本研究では、塩類腺をもつアオウミガメおよびフンボルトペンギン、比較種として塩類腺ではなく涙腺をもつカメ類(スッポン、クサガメ)および塩類腺ではなく鼻腺をもつ鳥類(ウズラ、オカメインコ)の胚を材料に用いて、各系統の腺形成について分子レベルで調べることで、アオウミガメとフンボルトペンギンの塩類腺形成に共通して関与する遺伝子を特定する。 3種のカメおよび3種の鳥の胚頭部から塩類腺 /涙腺および鼻腺形成予定領域を摘出し、total RNA を抽出、 cDNA ライブラリーを作成し、RNA-seq による比較トランスクリプトーム解析を行う。これにより、ウミガメおよびペンギン胚の塩類腺形成において重要な役割を担う可能性が高い遺伝子(発現変動遺伝子:DEGs)を複数特定する。上記の解析で特定されたウミガメとペンギンのDEGsを照らし合わせ、両種で共通して発現が変動している遺伝子を複数特定する。特定された遺伝子を3種のカメおよび鳥より単離し、胚の頭部組織においてこれらの遺伝子がどのような時空間パターンで発現するのかを in situ ハイブリダイゼーション法を用いて調べる。上記の解析によって特定された遺伝子がコードするタンパク質を、ニワトリ胚の涙腺および鼻腺形成予定領域に人工的に投与する。本実験ではウミガメやペンギンのように眼窩周辺に塩類腺をもつニワトリの作出を試みる。
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