研究課題/領域番号 |
23KJ1980
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
岡崎 夏鈴 東洋大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | サイトカイニン / トコン / 再生 / 転写因子 / RNA-seq解析 / 全ゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の組織培養法で植物体を再生するには、培地に植物ホルモンのオーキシンとサイトカイニン(CK)の添加が必要である。しかし、添加する植物ホルモンの濃度や種類は植物種によって異なり、未だ培養法が確立されていない難培養性の植物種が存在する。本研究では、植物ホルモン無添加で、植物組織片を切るだけで簡単に植物体再生を誘導できる組織培養法を確立するため、植物ホルモン無添加で、節間切片を切るだけ植物体の再生を誘導できるトコン(Carapichea ipecacuanha (Brot.) L. Andersson)を用いて、切るだけで内生CK量を増加させる傷害誘導型のCK生合成遺伝子の新奇転写因子を同定する。
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研究実績の概要 |
植物の組織培養は植物組織から不定芽を形成させることで個体を大量増殖させるバイオテクノロジーで、種子を得にくい植物や商業価値のある植物などの増殖に用いられている。従来の組織培養法では、不定芽の誘導に植物ホルモンを添加する必要があるが、添加する植物ホルモンの種類や濃度は植物種によって異なるため、培養条件の確立は容易ではない。組織を切り出すだけで不定芽が誘導できれば、組織培養がより簡易的になる。トコンは茎断片から不定芽を簡単に形成する植物である。トコンの不定芽形成では内生CKの増加が不定芽形成に重要であることが示唆された。そこで、本研究では茎を切るだけで不定芽を簡単に形成できるトコンを用いて、CK生合成遺伝子の新奇転写因子を探索した。 CK生合成遺伝子CiIPT3およびCiLOG7はトコンの不定芽形成予定領域で高発現し、培養0から7日目の間で大きく発現変動する。CK生合成遺伝子と同様な発現パターンを示す遺伝子の中に、CK生合成遺伝子の転写因子があると予想し、培養0から7日目までの茎断片を用いてRNA-seq解析を行い、その後クラスター解析を行った。その結果、クラスターに分類できた725個の遺伝子のうち、CiIPT3と同じクラスターの遺伝子が77個、CiLOG7は48個であった。同一クラスターの中で、シロイヌナズナのIPT3およびLOG7のプロモーター領域2k bp以内に結合サイトを持つ転写因子がそれぞれ4個ずつ含まれていた。これらの転写因子の中に傷害誘導型のCK生合成遺伝子の新奇転写因子があることが考えられる。 その他、トコンのアグロバクテリウムを用いた効率的な形質転換方法を確立し、トコンの全ゲノム解読を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トコンの全ゲノム解析が終了し、CiIPT3およびCiLOG7のプロモーター領域が明らかとなった。さらに、トコンの効率的な形質転換法の確立ができたことで、今後様々な分子生物学的実験が遂行できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、傷害誘導型のCiIPT3およびCiLOG7の候補転写因子が絞り込めた。これらの候補因子について、本年度確立した形質転換法を用いて機能解析を進める。さらに、トコンの全ゲノム解析が終了したため、本年度行ったRNA-seq解析について、ゲノムベースでの再解析を行い、より精度の高いデータを取得する。そのデータから追加で得られた、候補転写因子についても機能解析を行う。まず、候補転写因子の欠損変異体、過剰発現体をトコンおよびシロイヌナズナの植物体から作出し、不定芽形成数を調べる。また、CK生合成遺伝子の発現量や内生CK量を解析し、CK生合成に影響を与える因子を特定する。その後、候補転写因子が実際にCK生合成遺伝子のプロモーター領域に結合するかどうかについて検証するため、酵母One-Hybridを行う。
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