研究課題
特別研究員奨励費
本研究は『狭衣物語』の伝本と本文を平安文学の享受史という観点から再調査し、写本の実際に即した本文研究、従来とは異なる本文対校表の作成をつうじて本文の分類区分を再検証するものである。近年の平安文学研究は、伝本の系統と本文の性格を同質であると見做すきらいがある。だが、伝本TがA系統に分類されるからといって、その本文も全てA系統のものである保証は、どこにもない。伝本間の位置づけをいう枠組み「系統」と本文の性格が必ずしも一致しない場合も当然ある。こうした認識の違いゆえ、本文理解が不充分な平安文学があると予測される。本研究では『狭衣物語』本文の再検証をつうじ、平安文学の本文を改めて考究していく。