研究課題/領域番号 |
23KJ1992
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
津田 悠人 東京都市大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2024年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2023年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | ガウス過程回帰 / 空間分布推定 / 基盤面 / 間接データ |
研究開始時の研究の概要 |
地盤調査は工期やコスト等の制約があり,十分な地盤調査結果が得られない場合がある.同一物性値を対象に地盤物性値の空間分布を推定する研究は進められてきたが,異種計測データの相関性を活用し不確定性を考慮した推定法の研究例は少ない.本研究は,異種計測データを有効に活用する総合的な地盤物性の空間分布推定手法の構築を目的とする.確率論に基づく推定理論の一つであるガウス過程回帰を用いて異種計測データとの相関性や地形特性に注目した定式化を試みる.設計段階に応じて得られる地形データ,物理探査のような異種計測データや既存情報の相関性を考慮することにより総合的な地盤モデル構築が可能になる.
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研究実績の概要 |
間接データを有効に活用する不確定性を考慮した総合的な地盤物性値の空間分布推定手法の構築を目的としている. 2023年度の研究実績は主に下記に示す項目について研究を実施した. 1)予備設計段階の広域を対象とした基盤面推定. 予備設計段階は地盤調査が不十分であり,限定的な調査情報から広域を対象に基盤面を推定する必要がある.急勾配な箇所では基盤面標高は地表面標高と相関を有している場合があり,予備設計段階の広域の基盤面推定に関して地表面標高は有益な情報となる.地表面標高から基盤面標高までの平均深さは斜面勾配に依存し,その相関性は斜面勾配が小さいほど,すなわち平地に近いほど両者の関係はあいまいになる.そこで,基盤面標高=地表面標高-平均深さとする観測情報を考え,斜面勾配に応じて観測量の重みが変化するGPRを提案した.模擬データおよび実測データに対して提案手法の推定精度,特徴や適用範囲について検討した.地表面標高を活用することで高精度な基盤面推定が可能であることを報告した. 2) 詳細設計時の狭域を対象とした詳細な地盤物性値の空間分布推定. 詳細設計時の狭域の地盤物性値の空間分布推定に関して,推定対象物性値以外の間接的データが取得されている場合があり,これらのデータは注目する量,例えば地盤の強度特性との相関性を有することがある.そこで,詳細設計時の狭域の地盤物性値の空間分布推定に関して,推定対象物性値と間接的データとの相互相関を考慮したGPRによる3次元空間分布推定手法を提案した.間接的データとして杭施工時データと表面波探査を対象とした2つの例について検討した.模擬データと実測データに対して提案手法を適用し,より高精度かつ詳細な地盤物性値の空間分布推定が可能になることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の到達目標であった,間接データを有効に活用する不確定性を考慮した総合的な地盤物性の空間分布推定手法の構築に向けて研究に取り組んだ.当初の計画のとおり,予備設計段階の広域を対象とした基盤面推定は間接データとして地表面標高を活用することでより正確な推定を行えることを示した.この成果はimpact factorが5.3と質の高い国際ジャーナルも含めて査読論文として取りまとめた. 次に,詳細設計段階の狭域を対象とした詳細な空間分布推定に関しては,既に施工データと表面波探査の2つの適用例を示すことができおり,当初の計画より早いペースで研究が進められている.それだけではなく次につながる研究を進めることができた点も高く評価できる.2023年9月に国立台湾大学のChing教授を訪問した際に,斜め方向に地盤の情報を得る試験方法の活用の可能性についても議論した.その後東北大学の共同研究者を通してこの試験方法に基づく新たなデータを取得できた.これらデータの活用方法や高精度化は2024年度に取り組んでいく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
第一に,詳細設計段階の狭域を対象とした詳細な空間分布推定に関しては,モデル化の高度化を試みる.例えば,間接データとして杭施工データ(トルク値)を活用している.現在,計測されたトルク値を用いており,杭の先端と周面抵抗を含む情報である.そこで,トルク値を先端と周面抵抗に分離した定式化にすることで,より実現象に即したモデルとなるように試みる. 第二に,斜め方向に地盤の情報を得る試験方法の活用である.この場合,多くの水平・鉛直方向のデータを取得することができる.この新たなデータに基づく推定方法の可能性を検討していきたい. 第三に,その他間接データを用いた試算例を示す.現在では,杭施工データと表面波探査を活用した検討を進めているが,今後新たなデータが得られた場合は別のデータの検討を進めていきたい.
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