研究課題/領域番号 |
23KJ2020
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 優帆 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 期待到達時間 / Cayleyグラフ / ランダムウォーク / 重み付きグラフ / 有向グラフ |
研究開始時の研究の概要 |
研究内容は、大きく分けて、サイクルのn乗グラフの期待到達時間の公式を求めること、サイクルのn乗グラフの全域木の総数を数え上げることの2つである。サイクルの3乗グラフ等の具体例を用いて、考案した、連立一次方程式を用いる手法で期待到達時間の公式を求め、サイクルのn乗グラフに一般化する。全域木についても同様に、具体例を用いて、三角形等の図形に着目し、考案した、構成に関する付加情報を得られるような手法で全域木の総数を数え上げ、サイクルのn乗グラフに一般化する。さらに、期待到達時間の公式と全域木の総数の公式を用いて、抵抗やKirchhoff indexおよび2頂点を同一視した全域木の総数の公式も与える。
|
研究実績の概要 |
グラフはネットワークを抽象化した数学モデルと考えられ,ネットワークの複雑性を解析するため用いられる.これまでの研究では,グラフ上のランダムウォークにおける期待到達時間の閉じた公式を与える,組合せ論的手法を用いて全域木の総数を数え上げるという,2つの側面からネットワークの複雑性を解析するためのアプローチを行った. ネットワークの複雑性の解析における重要な指標の一つとして,グラフ上のランダムウォークにおける期待到達時間を求めることが挙げられ,期待到達時間を求めることは,コンピュータネットワークにおいてある端末から目的の端末までパケットを届けるためにかかる時間の指標を求めることに有用である. 対称性の高いグラフでは,期待到達時間の閉じた式を求めることが可能と予想されており,期待到達時間の閉じた公式を求めるために,ラプラシアン行列を用いた行列方程式を解く手法を考案した.この手法を用いて,ある有向Cayleyグラフ上の単純ランダムウォークにおける期待到達時間の閉じた公式と,重み付きCayleyグラフ上のランダムウォークにおける期待到達時間の閉じた公式を与えた.いずれも,先行研究では閉じた式が与えられておらず,特に,重み付き有向グラフについては明示的な公式も与えられていなかった. ある有向Cayleyグラフ上の単純ランダムウォークにおける期待到達時間の閉じた公式はJacobsthal数列を用いて,頂点数の偶奇に依らない閉じた形で与えられている.重み付きCayleyグラフ上のランダムウォークにおける期待到達時間については,係数行列にLU分解等を施すことにより,簡易的に計算を行うことが可能となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目(a) 期待到達時間の公式を求める サイクルの三乗グラフや四乗グラフについては,公式に現れる数列等がサイクルの二乗グラフよりも複雑であるため,途中計算に現れる数列の解析中であり,閉じた公式として得られていない.しかし,有向グラフや重み付きグラフについて期待到達時間の閉じた公式を得ることに成功しており,今後の研究ではグラフの対象をさらに広げて期待到達時間の閉じた公式を求めることができることが予想される.
項目(b) 構成に関する付加情報を得る手法で全域木の総数を数え上げる サイクルの三乗グラフ,四乗グラフに対して数値実験を行った結果,同様の手法を用いて全域木の総数を数え上げることが可能であるという見通しが立った.そのため,サイクルの三乗グラフ,四乗グラフの全域木の構成の解析を行っている.来年度以降は,サイクルの三乗グラフ,四乗グラフに対して全域木の総数を数え上げる組合せ論的証明を与える.
|
今後の研究の推進方策 |
項目(a) 期待到達時間の公式を求める サイクルの三乗グラフや四乗グラフの期待到達時間の閉じた公式を与え,サイクルのn乗グラフへの一般化や,その有向グラフに対して期待到達時間の閉じた公式を与える.
項目(b) 構成に関する付加情報を得る手法で全域木の総数を数え上げる サイクルの三乗グラフ,四乗グラフの結果を用いて,サイクルのn乗グラフの全域木の総数を数え上げる組合せ論的証明を与える.また,項目(a)で扱った有向グラフの全域木の総数を数え上げる研究も行いたい.
|