研究課題/領域番号 |
23KJ2046
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
金賀 駿 早稲田大学, 人間科学学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 姿勢推定 / 大腿傾斜角 / 下腿傾斜角 / 慣性センサ / IMU / Madgwickフィルタ |
研究開始時の研究の概要 |
脳卒中片麻痺者では痙縮により代償動作を招くため、痙縮を抑制して姿勢を矯正しつつ、歩行支援を行うことが重要となる。また、生活期に痙縮が悪化し異常歩行を認めることがあるため、生活期までを対象とした汎用性の高いリハビリテーション機器が必要である。そこで、本研究では、脳卒中片麻痺者の痙縮を抑制しながら歩行を補助する装着型の下肢用電気刺激装置を開発する。筋電や姿勢情報をもとに電気刺激を制御し、小型かつ軽量で、脱着が容易な装置の開発を目指す。各種センサで関節角度や歩行フェーズ等を推定し、姿勢情報として使用する。
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研究実績の概要 |
2023年度前半は装置や回路の作製に取り組み,4chの筋電計測,2chの電気刺激,IMU(慣性計測ユニット)による2chの加速度・角速度計測を実装した.これにより,筋活動や筋緊張異常のモニタリング,電気刺激による筋収縮,姿勢情報の取得が可能となった.2023年度後半には,2chのIMUによって計測される加速度と角速度から姿勢角(大腿傾斜角,下腿傾斜角,膝関節角度)を推定することに取り組んだ.姿勢推定手法としてMadgwickフィルタを使用し,歩行時の姿勢角を推定した.姿勢推定ではカルマンフィルタが主流であるが,Madgwickフィルタは計算負荷が小さく,マイコンでのリアルタイム処理に適していると考えため,Madgwickフィルタを採用した.そして,本装置で推定した姿勢角データを,モーションキャプチャ(MAC3D)で計測した姿勢角データと比較することで,Madgwickフィルタの姿勢推定精度について検討した.姿勢角は矢状面(進行方向に並行な面)と前額面(進行方向に垂直な面)のみを対象とし,推定精度はMAC3Dを比較データとしたときのRMSE(二乗平均平方根誤差)と相関係数で評価した.その結果,矢状面での姿勢推定精度は高く,概ねMAC3Dの姿勢角波形と一致しており,カルマンフィルタを用いた先行研究に匹敵する推定精度であることが明らかとなった.ただし,正常歩行時の前額面姿勢角の推定誤差が大きいことが示され,センサ装着位置のずれが影響している可能性がある.また,歩行タイプによる推定精度の違いを検討するため,正常歩行と脳卒中片麻痺者特有のぶん回し歩行(健常成人が模した歩行)時の姿勢角推定精度を比較した.その結果,動作範囲を考慮すると,ぶん回し歩行時は正常歩行に比べて推定精度が低い傾向にあった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では関節角度や歩行フェーズ,筋電により大腿部・下腿部の電気刺激の強度やタイミングを制御し,痙縮を抑制しながらの歩行を可能とする電気刺激装置の開発を目的している.2023年度は,IMU(慣性センサユニット)で加速度と角速度を計測し,姿勢角や関節角度を推定する段階であり,2023年度の終盤には歩行フェーズの推定に取り組むという計画であった.2023年度はMadgwickフィルタによる正常歩行・異常歩行時の姿勢推定まで実施できたため,計画していた研究の9割程度の進捗状況である.
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今後の研究の推進方策 |
センサ装着位置のずれや接地時の衝撃等の影響により,正常歩行時の前額面姿勢角の誤差が大きくなることが示唆された.これはIMUによる姿勢角推定において重要な課題であり,今後の研究にも影響すると考えられるため,2024年度に予定していた歩行フェーズ推定の前に,センサの最適な装着位置やキャリブレーション方法を検討していく予定である.また,2024年度は加速度や角速度による歩行フェーズの推定をメインに行う計画であり,マイコンにニューラルネットワークを組み込み,ルールベースでの歩行フェーズ推定よりも様々な歩行に対応できるような汎用性の高いアルゴリズムの構築を目指す.
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