研究課題/領域番号 |
23KJ2122
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
吉永 雄大 関西学院大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | 前肢伸展触刺激弁別課題 / アクティブタッチ / 運動技能学習 / リーチング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はラットの手指によるアクティブタッチ処理が運動学習によってどの様に変化するのかについて明らかにすることで,運動自動化の神経基盤について運動学習による感覚系処理の変化と言う観点から知見を提供することを目指すものである.本研究では大脳において体性感覚処理の初期段階を担うと考えられる第一次体性感覚野及び第二次体性感覚野に着目した検討を行う.また同時に,げっ歯類の第一次体性感覚野と第二次体性感覚野の機能的違いについて明らかにすることを目指している.実験では申請者が考案した行動実験課題を学習中のラット第一次及び第二次体性感覚野における神経活動記録・操作を行うことで上記2点について検討する.
|
研究実績の概要 |
本研究は運動学習によって感覚系処理がどの様に変化するのかについて,運動と切り離すことのできない感覚であるアクティブタッチに着目して検討するものである.これまでげっ歯類におけるアクティブタッチ研究は顔面感覚毛系(ヒゲシステム)を対象に行われており,手指によるアクティブタッチについては十分に検討されてこなかった.ヒゲシステムと手指では末梢から皮質に至る伝導路が異なることが知られている.また,ヒゲシステムが純粋な感覚器官であるのに対して手指は感覚器官であると同時に物体を操作する機能を持つ効果器でもある. 計画開始年度である2023年度は,ラットが物体操作の途中に生じるアクティブタッチをその後の操作に反映させるかについての検討を行った.これは手指のもつ効果器としての側面と対象を探索・同定する感覚器としての側面の両方を反映した検討である.実験の結果,ラットは物体操作の際にアクティブタッチを利用することが示された.手指によるアクティブタッチの利用についての知見及び実験に際して新たに開発した行動実験課題をげっ歯類におけるアクティブタッチ研究のための課題として学会・学術誌等にて報告・提案した. 上記の検討と並行して微小顕微鏡を用いたカルシウムイメージングによる神経活動記録及び光遺伝学的手法による神経活動操作技術の習熟に努めた.2023年度末までに課題を実行しているラットの第一次体性感覚野における神経活動記録に成功した.予備的な分析の結果,いくつかの細胞が課題に関連することが示唆された.2024年度以降の研究において課題に関連すると考えられる神経細胞の活動が学習によって変化するのかを明らかにすることを目指す.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は新な実験課題と神経生理学実験技術を組み合わせることで運動学習に伴う感覚系処理がどの様に変化するのかを明らかにすることを目指すものである.計画初年度終了時点で,本研究で使用する行動実験課題の開発が完了しており,本研究で使用する神経活動記録技術についても習得し予備的な検討が完了している.また,光遺伝学的手法による神経活動操作技術についても習得しており,光遺伝学的神経活動操作を用いた実験の成果を学会にて発表した.以上のことから研究進捗はおおむね順調であると評価している.
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は新たに提案した行動実験課題を実行中のラットの神経活動記録及び神経活動の操作を行う.神経活動操作には化学遺伝学的手法及び光遺伝学的手法を使用する予定である.まず,化学遺伝学的手法を用いて第一次体性感覚野における神経活動を課題実行中の全期間にわたって抑制する.化学遺伝学的手法を用いる一連の実験を通して第一次体性感覚野神経細胞のうち,どの領域に投射を持つ神経細胞が課題に関連しているのかを明らかにすることを目指す.具体的には第一次運動野投射神経細胞と第二次体性感覚野投射神経細胞の違いに着目した検討を進める計画である.その後,より高い時間分解能で神経活動を操作可能である光遺伝学的手法を適用することで第一次体性感覚野神経細胞のアクティブタッチにおける機能とその学習による変化について検討する.神経活動の記録には引き続き微小顕微鏡を用いたカルシウムイメージングを用いる.神経活動記録を通して各神経細胞がどの様にアクティブタッチの表象を形成しているのか明らかにすることを目指す.
|