研究課題/領域番号 |
23KJ2141
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
下村 育世 国立歴史民俗博物館, 国立歴史民俗博物館, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 近代日本の暦 / 太陽暦 / 近代宗教史 / 明治改暦 / 神社神道 / 伊勢神宮 / 祝祭日 / 暦師 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近代日本の暦の歴史を、神祇行政や神道界の動向と展開との関連から見直し、近代神社神道史の重要な構成要素であったことを示した後に、神道の歴史叙述の再構築に寄与し新たな歴史像を提示する。神祇官や内務省の行政文書、神祇行政に関わった要人の私文書などを主たる史料とする。 また日本の暦は後に神宮大麻とともに外地に頒布されるにあたり、海外神社が重要な役割を果たす。帝国日本の暦政策の東アジアへの影響や皇民化政策との関わりを考察し、近代神道史を海外神社も視野に入れた歴史叙述をするにあたり必須の基礎的研究として、外地への日本の暦頒布政策の解明を行う。国内での十全な事前調査をした上で、海外史料調査を行う。
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研究実績の概要 |
2023年は「明治改暦150年」という節目の年であったため、各方面でかかるテーマの催しが開催され、報告者も関わる機会が少なからずあり、明治改暦についてさまざまな角度から考察する機会となった。9月に開催された日本宗教学会第82回学術大会では「明治改暦150 年に近代日本を問う」と題するパネルが企画され、報告者もそのメンバーとして「明治改暦と近代の暦の機能――神社の例祭日の暦面への掲載から」の発表を行った。 また5月に開催された日本儒教学会が企画した「暦と王権」と題するシンポジウムにて、「明治改暦の背景と影響――日本らしい暦の模索」とする講演を行った。当日の質疑応答を反映・加筆したものを「明治改暦をめぐる葛藤――『正朔』思想の日本的展開」とまとめて『日本儒教学会報』第8号(2024年3月)に発表した。 さらに2023年10月3日から開催された国立歴史民俗博物館の企画展「陰陽師とは何者か――うらない、まじない、こよみをつくる」に、報告者も当該展示のプロジェクト委員として参画した。図録『陰陽師とは何者か――うらない、まじない、こよみをつくる』(小さ子社、2023年10月)の執筆、歴博フォーラム「陰陽師と暦」への登壇などを行った。この展示は2018年からの奈良暦師吉川家文書(歴博蔵)の調査研究が発展したものである。報告者はこの調査研究の成果を『国立歴史民俗博物館研究報告』に「神宮大麻に附して授与された暦――吉川家新資料群に含まれる折本暦について」と「吉川家年表(近代)」として発表した(2024年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、近代日本の暦の歴史を、神祇行政や神道界の動向と展開との関連から見直し、近代神社神道史の重要な構成要素であったことを示した後に、神道の歴史叙述の再構築に寄与しうる新たな歴史像を提示することを主たる目的とする。日本宗教学会第82回学術大会での報告者の「明治改暦と近代の暦の機能――神社の例祭日の暦面への掲載から」とする発表は、明治改暦直後から官社の例祭が暦面に年々加筆されていたことを示すことで、近代の官暦と神社神道との内的関連性を示すとともに、例祭の太陽暦へ換算した日取りの周知の仕方から近代の暦に含まれる新たな機能、「公告」機能を論じた。全国の官社の例祭の日取りの太陽暦への換算、そしてその新たな日取りをどう周知するかに近代の官暦が関与していることを示した。 また本研究では、帝国日本の暦政策の東アジアへの影響や皇民化政策との関わりを考察し、近代神道史を海外神社も視野に入れた歴史叙述に書き換えるにあたり必須の基礎的研究として、これまでの研究で盲点となっていた外地への日本の暦頒布政策の解明を第2の目的とする。報告者は、図録『陰陽師とは何者か』の近代の暦に関わる部分を担当し、これまであまり知られてこなかった、日本の関与のもと台湾や朝鮮で公的に製造・通行した『台湾民暦』や『朝鮮民暦』、満洲国の『時憲書』について紹介した。また終戦後、日本の暦の編纂・製造・頒布は自由化するが、占領下にあった沖縄には本土とは異なる暦『農山漁家の暦』が通行したことについても触れた。外地へ頒布された暦についての基礎的研究に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは2023年9月の日本宗教学会第82回学術大会での報告「明治改暦と近代の暦の機能――神社の例祭日の暦面への掲載から」を、当日の質疑応答を反映し、加筆したものを論文として発表したい。 また外地への暦頒布政策については、国立公文書館や外務省外交史料館蔵の行政文書や、国立国会図書館蔵の『朝鮮総督府官報』や『台湾総督府報』などによる国内の史料調査で可能な限り解明する。台湾や韓国に所在する台湾総督府文書や朝鮮総督府文書などの国外調査も視野に入れている。
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