研究課題/領域番号 |
23KJ2144
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
吉田 淳 国立極地研究所, 先端研究推進系 気水圏研究グループ, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 海水粒子 / 氷晶核 / エアロゾル / 極域 |
研究開始時の研究の概要 |
急激な気候変動が進む南極・北極域において、氷の雲粒の核となる氷晶核は放射エネルギー収支において重要な役割を果たす。したがって、極域における氷晶核の起源や動態を理解することが求められている。本研究は極域における海洋起源の固体粒子が氷晶核として働いているのかどうかを明らかにする。そのために、南極域・北極域での船舶観測時に海水・大気中の固体粒子を採取して、それらの成分や濃度の測定を行い、海洋から大気中へ放出される様々な種類の固体粒子と氷晶核の濃度の対応関係を定量的に調査する。
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研究実績の概要 |
本研究での目的は、極域において海洋から大気に放出された固体粒子が、氷雲を形成するのに必要な核(氷晶核)として働いているのかどうかを明らかにすることである。そのためには、海水中の固体粒子の粒子種や粒径別濃度を分析することが重要であるが、そのような分析手法は十分に確立されていない。2023年度ではまず、近年開発された固体粒子測定装置である複素散乱振幅センサーを用いて海水粒子の分析手法を確立した。複素散乱振幅センサーは、個別粒子の粒径・複素屈折率(組成)・形状に依存する複素散乱振幅という物理量を測定する。本研究では北西太平洋航海で得られた海水粒子の複素散乱振幅のデータをもとに、粒子を五つのタイプに分類した。走査型電子顕微鏡の分析結果や標準試料の複素散乱振幅データと比較することで、これらのタイプに対応する主要な粒子種(珪藻・炭素質・鉱物ダスト・酸化鉄・ブラックカーボン)を明らかにした。続いて本手法を用いて、第64次南極地域観測活動(JARE64)の船舶観測(2022年12月~2023年3月)にて採取された南極域における海水・海氷・積雪試料を分析した。その結果、上述した五つのタイプごとに粒径別濃度を定量することに成功し、本手法が南大洋の海水・海氷・積雪中の粒子の分析にも有効であることを確認した。 2023年度にはまた、JARE64の船舶観測にて所得された大気中の微粒子(エアロゾル)の濃度変化のデータ解析も行った。その結果、エアロゾルの数濃度が風波レイノルズ数および海洋表層のクロロフィル濃度と相関していることが分かった。このことは、波しぶきや海洋表層の生物活動を起源とするエアロゾルを本観測で捉えたことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体粒子測定装置である複素散乱振幅センサーを用いた海水粒子の分析方法を確立することができた。この手法についての研究成果を査読付きの国際誌に投稿した。また当初の計画にはなかったが、南極域における積雪や海氷中の粒子の分析にも本手法が利用できることが分かり、大気エアロゾルや海水粒子の動態を理解するにあたって有用なデータがさらに得られることが分かった。以上のことから、本研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
第64次南極地域観測活動で得られた試料を中心に、複素散乱振幅センサーを用いて大気エアロゾルや海水粒子の粒子種や粒径分布の分析を行う。また、同観測で採取した氷晶核試料の分析も行う。特に、波しぶきや海洋生物活動が卓越しているときとそうでないときに着目して、海洋から大気中へ放出される様々な種類の固体粒子と氷晶核の濃度の対応関係を調べる。
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