研究課題/領域番号 |
23KJ2168
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
岩切 友希 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 予測可能性 / 延長季節予測 / 多年性ラニーニャ現象 |
研究開始時の研究の概要 |
現在気候において最も大きな気候変動であるエルニーニョ・南方振動(ENSO)は社会に大きな影響を与える。ENSOの力学的な予測は1990年代に日本の現業機関により運用されたものの予測スキルは1年未満であり、気候予測の情報は十分に社会で活用されてはいるとは言えない。本研究ではENSOを含めた熱帯気候変動の力学を調査することで1年を超える予測スキルを探求する。特に近年注目されている多年性ENSOはその長期的な持続性から鍵であると考えれる。本研究課題では現業モデルを含めた複数の季節予測を活用することでこれらの問題に取り組む。
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研究実績の概要 |
2020年から2023年にかけて発生した多年生ラニーニャ現象は観測でも稀である3年間持続するイベントとなり、ほとんどの季節予測モデルが事前予測することができなかったことから、どのような物理プロセスにより駆動されたかが大きな関心を集めた。100メンバーに及ぶ大規模アンサンブル季節予測実験を行ったところ、多くのメンバーでこのラニーニャ現象の持続性を捉えることができた。解析の結果、ラニーニャ現象1年目の冬季に生じた北太平洋での大気内部変動が亜熱帯域で負の海面水温偏差を駆動したことが明らかとなった。この負の北太平洋南北モードはラニーニャ現象と重なることでENSOの空間構造が変調し長期的な持続性を獲得した。大規模アンサンブル実験の結果は大きなばらつきを示したものの、北太平洋中緯度大気の変動と太平洋南北モードに高い感度を示し、中緯度大気の確からしい予測が熱帯太平洋のENSOの持続性を決定づけることを示した。本研究による成果は、国内学会・国際学会で発表済みであり、論文として出版されている。 また3年目の持続の解析においては、赤道大気の内部変動である西風バーストが駆動した可能性が示唆されている。短周期の西風バーストが散発したことによって、季節スケールにおいて偶発的に3年目のラニーニャ現象が発生したためほとんどの季節予測モデルが予測することができなかった可能性がある。この解析から、3年続いたラニーニャ現象の持続メカニズムは2年目と3年目で全く異なる要因である可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題初年度において、実験の解析がうまく進んだことで多年性ラニーニャ現象の予測可能性があることを示した。論文の改訂も早く進んだことで出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
大気の内部変動が多年性ラニーニャ現象の予測にとって重要であることを示した一方で、先行研究では森林火災で生じたエアロゾルが駆動したという報告がなされている。2年以上の長期の予測―延長季節予測―には、外部強制が影響する可能性が十分ある。今後の解析ではより現実的な放射強制などを与えた実験を解析することで内部変動と温暖化強制を定量的に理解する。
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