研究課題/領域番号 |
23KJ2169
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉田 一貴 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ネジレバネ / イネウンカ / 宿主操作 / 宿主-寄生者系 / 共生 |
研究開始時の研究の概要 |
イネウンカ類は、低気圧に伴う強風を利用して海外から日本各地に飛来し、日本の稲作に甚大な被害を与える重要害虫である。イネウンカ類には、エダヒゲネジレバネという昆虫が寄生することが知られている。寄生されたウンカは雌雄ともに外部生殖器に変化が生じ、中性的な形態となる(例えば、メスでは産卵管が消失する)。本研究では、ネジレバネの寄生によるウンカの形態的性別の中性化、すなわち「間性化」が、ネジレバネにどのような利益をもたらすのか(生態学的意義)を解明するとともに、昆虫の性決定機構に着目したアプローチにより、間性化の分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
ネジレバネの寄生により外部形態が間性化されたセジロウンカの本来の性別(遺伝的性別)を判定するため、リアルタイムPCRを利用した手法を開発した。セジロウンカの性染色体構成はメスがXX、オスがXの「XO型」である。セジロウンカのX染色体のコピー数と常染色体のコピー数の比が雌雄で異なることを利用し、ΔCt値(X染色体のCt値と常染色体のCt値の差;理論的にはメスでは0、オスでは1となる)により雌雄を判別する手法の開発を試みた。X染色体の配列を対象としたプライマーを1組設計し、それと組み合わせて使用する常染色体のプライマーとして、3つのリファレンス遺伝子の配列を対象としたプライマーを各1組ずつ設計した。飼育系統および野外採集個体の成虫サンプルを用いて、これらのプライマーの雌雄判別への利用可能性を検証したところ、3つのうち2つの常染色体プライマーが、ΔCt値による雌雄判別に利用可能であった。またこれらの成虫サンプルのΔCt値を教師データとして学習した機械学習アルゴリズムのモデルを用いて、性別未知の幼虫サンプルのΔCt値の測定値から遺伝的性別を予測した。 間性化と性決定遺伝子(ixおよびdsx)発現の関連性を調べるため、セジロウンカのixおよびdsxのmRNA配列の決定を試みた。ix遺伝子についてはmRNAの一部配列を決定することができたが、dsxについては決定できなかった。 また、セジロウンカの飛来世代および第一世代からネジレバネに寄生された個体を採集し、室内累代飼育を試みた。3世代ほどは飼育することが可能であったが、次第に被寄生率の低下が見られ、ウンカの昆虫病原糸状菌の発生の影響もあって最終的に累代は途絶えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネジレバネの継続的な累代飼育には失敗したものの、1~2世代ほどの一時的な累代飼育・増殖は十分可能であることが明らかになった。セジロウンカの遺伝的性別の判定手法の開発は当初の予定通りに遂行できており、また一部の性決定関連遺伝子の配列も決定できた。これらは本課題の達成に必要な知見や手法であり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はネジレバネが1~2世代ほどしか累代できないことを前提とし、セジロウンカの多発時期に多地点で集中的に採集を行い、個体数を確保する。それらを一時的に飼育してネジレバネを増殖させ、被寄生個体と健常個体の寿命や生殖行動の比較を行うとともに、性決定関連遺伝子の発現を解析・比較するためのサンプルも収集する。
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