研究課題/領域番号 |
23KJ2173
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
中野 湧天 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 暗黒物質探索 |
研究開始時の研究の概要 |
ダークマターの正体は未だ不明である。そのようなダークマターの探索実験として、ダークマターと原子核との相互作用を探す直接探索実験が現在主流である。ダークマターによる原子核の反跳によるエネルギーが小さい場合にはダークマターによる事象の観測は難しい。しかしながら、原子核の反跳によるエネルギーを原子核の周辺に存在する電子に伝える効果であるミグダル効果を考慮することで、実験において観測しやすい状態を実現することができる。ミグダル効果によって、エネルギーが小さい場合にもダークマターによる事象を観測することが可能となる。 本研究計画ではこのミグダル効果の理論精度の改善と新物理探索への有効性を研究する。
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研究実績の概要 |
暗黒物質は銀河の内部構造や宇宙マイクロ波背景放射から存在が示唆されている未だ未発見の未知の物 質である。この暗黒物質を探索する実験は数多く提案されている。近年、いわゆる軽い暗黒物質と呼ばれる質量の軽い暗黒物質が注目を集めており、盛んに研究が行われている。今回、axion-like particleと呼ばれる高エネルギー理論から予言される新粒子の新しい探索実験の提案を行った。この探索実験では、最近著しく研究が進んでおり注目を集めているqubitを用いた量子演算技術を用いている。この研究では、暗黒物質からの信号を量子演算を行うことにより増幅をすることが可能であり、暗黒物質の測定に使用するエンタングルされるqubitの数の二乗だけ信号を増幅できることが明らかになった。物理系として、イオン化させた原子を電磁場によって捕獲するイオントラップ型のqubitシステムを仮定している。軽いaxion-like particleはトラップされたイオンの振動周波数と共鳴する場合に、イオンの振動状態を共鳴励起する。この共鳴励起の信号を量子演算によって足し上げることが可能であり、それによって信号を増幅することができる。また、axion-like particleだけではなくdark photon模型についても探索が可能である。このような量子技術を用いた方法は将来、いわゆる量子コンピュータ技術の発展によって大幅に改善されることが期待されている。また、量子演算による暗黒物質の信号の増幅が可能であることを初めて示すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミグダル効果のより精密化された計算に関しては、先行研究で使用されたダイポール近似を使用せず、更に電子相関を取り入れた計算が「P. Cox, M. Dolan, C. McCabe, H. Quiney, “Precise predictions and new insights for atomic ionization from the Migdal effect,” PRD 107 (2023) 3, 035032」で行われている。現在、新たな方法またはこの論文に基づいた改良について再考している。 また、成果として論文に掲載されたイオントラップを用いた暗黒物質の信号を増幅する研究に関連して、Migdal効果を同様にしてイオントラップ型のシステムで探索できないか試行したが、既存の方法の方が優れているという結論に至った。
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今後の研究の推進方策 |
既存の暗黒物質の候補とされる新物理からの信号について研究を進める。また、Migdal効果の理論計算に関して、既存の実験結果と比較が可能となるような方法について模索していく。
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