研究課題/領域番号 |
23KJ2179
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
浦 朋人 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 酵素液滴 / 酵素活性化 / 細胞内代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質は特定の高次構造を持つ領域(構造領域)と持たない領域(天然変性領域)に分類される。構造領域は、タンパク質の機能発現に関わる領域としてかねてより研究の対象である。天然変性領域は、分子集合体の形成を駆動することが明らかになり近年注目が集まっている。本研究では、特に細胞内反応の制御に関わる液滴という分子集合体に注目し、構造領域と天然変性領域の相互の影響を理解することを目的とする。具体的には、構造領域の液滴の形成への寄与、 および、液滴での構造領域の機能変化を調査する。
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研究実績の概要 |
近年、酵素が“液滴”で流動的に集合することで、細胞内での酵素反応が制御されることが示唆されている。酵素液滴の形成機構を理解し、目的に応じて、液滴の形成を促進および抑制することが可能になれば、細胞内での目的の反応の人為的な制御や試験管内での新たな酵素活性化技術としての応用が期待される。本研究は、1) 液滴形成における酵素の構造領域の役割の理解、および、2) 液滴内での酵素の構造領域の構造および活性変化の検出を目指す。 試験管内の人工的な酵素液滴の構築と分析の研究を進めた。安定した構造領域からなる5種類の酸化還元酵素を、天然変性領域のモデルであるポリマーと混合することで、数百ナノメートルスケールのサイズの酵素液滴を試験管内に作製した。酵素液滴形成時の酵素活性の変化は、酵素によって約1.5倍から約25倍と大きく異なった。また、酵素液滴形成時に二次構造が大きく変化するものと変化しないものがあった。ここで重要なのは酵素活性の変化と構造変化に強い相関がなかったことである。この結果は酵素液滴の形成による酵素活性化において酵素の構造変化以外の要因の存在を示唆する。以上の結果をまとめた論文が採択され、また、国際学会での発表を行った。 細胞内の酵素液滴のイメージング研究を開始した。目的の酵素にモノマーの緑色蛍光タンパク質を融合させたコンストラクトを組み込んだプラスミドベクターの細胞内導入によって、酵素の一過性発現と蛍光顕微鏡での観察を行った。細胞質で複数の酵素が可逆に集合する様子の観察とそのときの代謝変化の関係の調査を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、試験管内での酵素液滴研究において論文採択まで研究を進めた。また並行して細胞内での酵素液滴研究を開始し代謝変化等の計測を進めた。以上の理由より、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の取り組みの中で、試験管内の研究に関して、酵素反応が進む中でそれぞれの酵素の構造がどのように動くのかを理解し、その動きが酵素液滴の形成時にどのような変化をするのかに関して研究を進める必要があると感じた。そこで、来年度は、当初の予定にあった核磁気共鳴法による酵素の局所的な構造のダイナミクスの計測に加えて、分子シミュレーションにも取り組み始める予定である。 細胞内の酵素液滴の研究に関して、現在調査を進めている酵素と代謝変化に関して論文を書く。また、現在の系は簡便に細胞内の酵素の動態を観察できるが、細胞内に酵素が本来の細胞内の濃度よりも多く発現してしまう。今後、酵素を本来の細胞内の濃度で観察するために、遺伝子改変細胞の樹立等を行いたい。
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