研究課題/領域番号 |
23KJ2195
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
上田 奈津貴 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | PTSD / 記憶 / 知覚推論 / 時空間知覚 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトが知覚する時間は心理的時間と呼ばれ,時計によって示される物理的時間とは差異が生じる.PTSD等の患者においては,過去の記憶がより鮮明に想起される一方で現在の時間感覚の希薄さがあると語られることがある. これは,知覚推論において現在の記憶が弱まるほど心理的時間は過去に記憶された時間の長さに近づく現象と類似する.これらのことから,短期記憶内に保持された記憶の減衰により過去の時間記憶の影響が強くなるために現在の時間感覚の希薄さ,現実感の喪失が引き起される可能性があると考え,本研究では短期記憶が時間の知覚推論に影響する脳領域の解明に焦点を当て,現実感が失われる認知・神経学的機序の解明を目指す.
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研究実績の概要 |
外界の環境は刻々と変化する.そのような環境に対して知覚の連続性を保つため,知覚は過去に経験した知覚の履歴に引き寄せられる.知覚の履歴の影響は強すぎると誤りを生むが,入力される情報が曖昧な場合には見当をつけるのに役立ち,全体的な行動の誤りを低下させる.知覚は精神疾患などによる脳の機能的ネットワークの変調に影響されやすい.特にこれまでの研究で知覚における知覚の履歴の強さは記憶の減衰に影響されることが示されていることから,短期記憶障害によって現在の時間記憶が弱くなった結果,過去の時間記憶の影響が強くなると現在の感覚の希薄さ,現実感の喪失が引き起こされている可能性がある.本研究では,行動実験,計算論モデル,fMRIを組み合わせて知覚と記憶の神経ネットワークを明らかにすることでこの仮説を検証する. 2023年度は,まず症状に現実感の喪失が見られることが知られるPTSD患者における短期記憶の変化を明らかにした.本研究ではPTSD患者において,PTSD症状の一部と短期記憶障害が相関することが明らかにしたもので,本研究の仮説を一部支持する結果となった.本研究結果は現在国際誌に投稿中である.また,健常者においてこのような知覚の認知神経メカニズムを明らかにするために,fMRI実験を行うことを目的とし,2023年度はfMRI実験に合わせた行動課題を作成し,現在概ね完成したところである.2024年度は早期にfMRIデータを取得し,論文化を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では1年目から2年目にかけてfMRI実験の準備と実行を予定していたが,2023年はfMRI実験の準備,解析計画がほぼ完成した.PTSDにおける短期記憶の変化と症状の関連についての論文を投稿の段階まで進めたのは予想外の成果であった.一方で,fMRI実験用の行動課題を解析計画に合わせ当初予定していたものと一部変更したため,計算論モデルを用いた解析の一部に再検討が必要となった.当初の計画よりも進んだ部分,再検討が必要になった部分があるが,本研究の根幹となる脳画像データ取得とその解析の基本的な部分については当初の予定通り進んでいるため,概ね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り概ね順調に進んでおり,引き続き実験を進めていく.計算論モデルの再検討に際しては共同研究先の海外の大学へ渡航する必要がある可能性があるが,順次必要に応じて進めていく予定である.
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