研究課題/領域番号 |
23KJ2197
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分51010:基盤脳科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
上田 理誉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院 てんかん診療部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 視空間ワーキングメモリ― / 高ガンマ波活動 / 記憶負荷 / 下前頭回 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、視空間ワーキングメモリーの神経ネットワークを明らかにするために実施する。てんかん患者は、てんかん病巣の適切な切除範囲決定のため、病巣を含む脳表面に置かれた電極による脳波記録を行う。その際に、患者はiPadで視空間ワーキングメモリーを評価する課題を行う。グリット上の複数のタイルの位置を記憶し、タイル消失後、タイルがあった位置を指でタップする課題で、60試行行う。てんかん発生に無関係な脳部位の電極を用い、課題実施中の高周波脳波活動の動画を作成する。高難易度の課題による高い記憶負荷、試行の繰り返しによる練習効果が、脳皮質活動や神経伝導路の機能結合の変化に与える影響を特定し、動画として示す。
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研究実績の概要 |
10人の患者が研究に参加し、頭蓋内脳波を装着し、視空間ワーキングメモリ―課題を実施した。脳波の高ガンマ波を評価し、記憶負荷の増加、練習効果(試行数)の増大がもたらす神経ダイナミクスの変化を明らかにすることを目的とした。混合モデルを用いて、記憶負荷、練習効果を固定効果予測変数に加え、記憶負荷、練習効果に関連する高ガンマ活動の変化を検証した。さらに、記憶負荷、練習効果の増大に関連する神経伝導路の同定を行った。この結果、記憶負荷の増大に伴い、一次視覚野と内側側頭葉をつなぐoccipital longitudinal tracts(OLT)の連結性の増大を認めた一方で、arcuate、uncinate、superior-longitudinal fasciculi等の広範な神経伝導路の連結性の低下を認めた。さらに、練習効果に伴い、後部下前頭回の高ガンマ活動が増加し、前頭葉、頭頂葉、側頭葉を含むネットワーク全体の機能的結合が減少した。ロジスティック混合モデル解析の結果、早期の後部下前頭回の高ガンマ活性は、課題正解の予測因子と同定された。練習によって視空間ワーキングメモリーが最適化され、後部下前頭回の活性化とそれ以外の神経伝導路の連結性の減少がもたらされることが明らかとなった。 この研究結果の一部に関し、2022年12月の米国てんかん学会学術集会でポスター発表を行った。上記の網羅的結果をClinical Neurophysiologyに投稿し、2024年3月に受理された。今後は、時系列データの因果推論で用いられる統計手法のトランスファーエントロピーを用い、記憶負荷、練習効果の増大に伴う神経伝播の方向の同定を行うことで、ワーキングメモリ最適化の仕組みを明らかにしてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、私は、視覚ワーキングメモリ―の高ガンマ活動の時空間神経ダイナミクスの同定、同時に継続して活性化する2脳領域間の神経伝導路の同定とアニメーションの作成まで行った。この結果に関して、論文発表を行った。研究の進捗状況は当初の予定を超える早さであるが、リクルートできた患者数は10人に留まり、研究参加者の少なさが今後の懸念点である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、私は、ワーキングメモリ―の高ガンマ活動の時空間神経ダイナミクスの同定、同時に継続して活性化する2脳領域間の神経伝導路の同定とアニメーションの作成まで行うことができた。時系列データの因果推論で用いられる統計手法のトランスファーエントロピーを用い、記憶負荷、練習効果の増大に伴う神経活動の神経伝導路上の伝播方向の同定を行っていきたいと考えている。ワーキングメモリ―最適化の仕組みを明らかにしてゆきたい。さらにほかの種類の視覚ワーキングメモリ―課題実施下の高ガンマ波の神経ダイナミクスの同定にも取り組んでいきたいと考えている。
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