研究課題/領域番号 |
23KJ2202
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 敬介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ゴンドワナ / 砕屑性ジルコン / 南部北上帯 / 飛騨外縁帯 / プロト日本 / テラ・オーストラリス造山帯 / 後背地 |
研究開始時の研究の概要 |
古生代を通した東アジア・プロト日本の古地理変遷を理解するには,アジア大陸東縁の大陸基盤・島弧が本来,ゴンドワナ大陸北東縁に沿った沈み込み帯のどこで発達し,いつ,どのような現象を経て現在の配置(北半球中緯度)に至ったのかを説明しなければならない.本研究では付加体起源の変成岩,陸棚堆積岩,火山岩のジルコンU-Pb年代・地球化学分析(主要・微量・希土類元素・Sr・Nd同位体比)と化石の情報を駆使し,前期古生代のゴンドワナ大陸北東縁に沿った沈み込み帯とそこでのプロト日本の配置を復元するとともに,それらの古地理的関係がデボン紀~前期石炭紀頃のリフティングを境に変化したことを明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究では,(A)前期古生代のゴンドワナ大陸北東縁に沿った沈み込み帯とそこでのプロト日本の配置を復元し,(B)それらの古地理的関係がデボン紀~前期石炭紀頃のリフティングを境に変化したことを明らかにする.令和5年度は,当初の計画通り,(A)を中心に進めた.特に,南部北上帯西縁部の松ヶ平-母体変成岩類(オルドビス系~シルル系),鳶ヶ森層(シルル系~デボン系),および合の沢層(上部デボン系)を対象に野外調査および砕屑性ジルコンU-Pb年代測定を実施した.これにより,オルドビス系~シルル系の砂質片岩・砂岩については,ゴンドワナ大陸北東縁と古太平洋の間で発達したテラ・オーストラリス造山帯とのテクトニックな関連性を示唆する480-470 Ma,650-550 Ma,1300-900 Maの年代ピークを有することが明らかとなった.これらと類似する年代ピークパターンを示す変成岩・堆積岩が内モンゴル~中国北東部(Bainaimiao弧帯)から報告されていることを考慮すると,今回の結果は,Bainaimiao弧-プロト日本がテラ・オーストラリス造山帯の北方延長部に沿って発達したオルドビス紀の火成弧を由来とすることを示唆する.また,上部デボン系の砂岩には先カンブリア時代のジルコンがほとんど含まれておらず,この時期からプロト日本とゴンドワナ大陸北東縁の古地理的関係が失われたと考えられる.これらの成果は,論文としてまとめ,国際誌「Geological Journal」に投稿した.
また,本年度は,令和6年度から着手予定の(B)に向けた準備として,福井県大野市に分布する石炭系相当の玄武岩(米俵層; 飛騨外縁帯)と岩手県大船渡市・陸前高田市に分布する前期石炭紀火山岩・火山砕屑岩類(有住層,日頃市層,加労沢層; 南部北上帯)について野外調査を実施し,岩相層序の把握とともに岩石試料の採取を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は,研究実績の概要で述べた通り,南部北上帯のオルドビス系~デボン系からの年代データを論文としてまとめ,国際誌に投稿した(Suzuki et al., Geological Journal 査読対応中).したがって,(A)については,当初の予定通りに計画が遂行出来たといえる.また,本年度は飛騨外縁帯・南部北上帯の石炭系から玄武岩や珪長質凝灰岩などの岩石試料を採取したことから,(B)の計画は当初の予定よりも部分的に前倒し進んでいる状況にある.
上記の進捗状況を考慮し,本年度は,特別研究員申請書において「受入研究者とともに研究するメリット」として記載した検討にも着手した.この検討では,タイ北部~北東部に分布する三畳系陸成層(Huai Hin Lat層,Nam Phong層,Nam Chun層)についての野外調査・砕屑性ジルコンU-Pb年代測定・全岩化学分析の一部を担当した.特に,Nam Chun層には玄武岩質砂岩や玄武岩片を含む礫岩が認められ,その供給源にはインドチャイナ地塊西縁で発達した石炭紀~ペルム紀火成弧(Sukhothai弧)に隣接する背弧(Nan背弧堆積盆)が関わったと考えられる.この成果をまとめた論文は,受入研究者を筆頭著者として国際誌「Gondwana Research」に掲載された(Hara, Suzuki, et al., 2024).
以上,令和5年度は,国内外で幅広く野外調査を実施し,ゴンドワナ大陸北東縁での大陸分裂とそれにより離散した大陸基盤・島弧の発達史について多数の成果を得ることが出来た.このことから,現在までの進捗状況としては,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は,飛騨外縁帯・南部北上帯の石炭系を対象とした野外調査を引き続き行い,岩相記載および岩石試料採取を進める.特に,前期石炭紀火山岩類については,ジルコンU-Pb年代測定・全岩化学分析を系統的に実施し,(B)の議論を進める.なお,飛騨外縁帯の前期石炭紀火山岩類からの年代・化学組成データの一部は,既に論文としてまとめ,補助事業期間前となる令和4年度3月に国際誌「Gondwana Research」にて公表した(Suzuki et al., 2023).したがって,本研究課題により今後得られるデータは,Suzuki et al. (2023)との比較・統合の下で論文化を進める.
令和7年度にまとめる予定の「プロト日本の古地理復元モデル」では,(A)と(B)の各成果を統合するのみならず,日本のオルドビス系~ペルム系の砕屑性ジルコンU-Pb年代スペクトラの時代変化・差異や古生物地理変遷に関する知見が加わる.その準備の一環として,令和5年度は,佐渡島のペルム系砂岩からの砕屑性ジルコンU-Pb年代を論文としてまとめ,国際誌「Revue de Micropaleontologie」に投稿した(Kurihara, Suzuki, et al., 2023).令和6年度は,佐渡島と本州の各ペルム系の年代データの比較も進める.
計画の進展状況によっては,本年度と同様に,受入研究者とともに東南アジアでの研究を実施する.特に,タイ,ラオス,カンボジア等に分布するインドチャイナ地塊の中~古生界はゴンドワナ大陸北東縁でのリフティングとその後の大陸衝突による造山運動という一連の地史を記録しており,それらとプロト日本の造構場変遷の関連性を模索することは,南東-北東アジアにかけての海盆拡大・閉鎖の広域性や同時代性に着眼するという,本研究課題の発展的内容への着手に繋がる.
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