研究課題/領域番号 |
23KJ2204
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
濱本 耕平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ナマコ / 腸内細菌叢 / バイオレメディエーション / サンゴ礁 / 蓄積型栄養塩 |
研究開始時の研究の概要 |
熱帯亜熱帯沿岸域においてしばしば優占するナマコ類は、その多くが堆積物中の有機物を摂食しており、その過程で環境中に蓄積した栄養塩を除去している。近年、この蓄積型栄養塩がサンゴの初期石灰化を阻害する可能性が指摘されており、したがって、ナマコ類はその摂餌を通して稚サンゴの初期成長を助けている可能性がある。しかしながら、これらの関係に着目した研究はこれまで行われていない。 本研究は、この仮説を検証するため、ナマコ類の糞便を用いた実験と、稚サンゴポリプを用いた実験を行う。これによってナマコがサンゴ礁生態系において占める役割について理解が深まり、世界的に乱獲が進むナマコの保全意義が一層高まると期待できる。
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研究実績の概要 |
今年度は、年度途中でサンゴ幼生が入手できたことから、研究計画2年目に予定されていたサンゴ稚ポリプとナマコ個体を用いた実験を予備的に行うためにサンゴ幼生の着底実験および長期飼育に取り組んだ。その結果、比較的高い着底率と生残率が得られ、9月には沖縄県栽培漁業センターから提供頂いた褐虫藻をサンゴ稚ポリプに感染させることに成功し、ナマコ採捕と並行して実験準備を進めた。10月中旬に飼育していたサンゴ稚ポリプが管理が不十分で大量に斃死し、計画の飼育実験を行うことはできなかったが、次年度に実験条件の改善を試みる予定である。本部町沿岸をはじめとする沖縄島沿岸にて野外調査を行うと同時に、周辺離島を含む複数地点でナマコ種組成や個体群密度に関する聞き取り等を行なっており、来年度の研究遂行に向けた準備を進められた。 また、これまで得られた沖縄島沿岸の堆積物およびクロナマコ糞便内の細菌叢メタバーコーディングデータから、底質タイプ(砂泥底、サンゴ礁、海草藻場)ごとに存在する細菌叢が有意に異なること、それぞれの環境においてクロナマコ腸内でエンリッチされている細菌科が6、14、20科あることが明らかとなった。このうちIlumatobacteraceae、XenococcaceaeおよびMicrocystaceaeについてはいずれの環境でも一貫してクロナマコ腸内で多くみられ、クロナマコの腸内環境と強く関係していることが推察された。これらの研究結果について、2023年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会および第19回棘皮動物研究集会において口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度開始すぐに、野外調査・飼育実験実施に向けて、沖縄県とのナマコ採捕許可に関する調整を開始し、2023年8月には1年間を期限とする採捕許可を得ることができた。これと並行して琉球大学瀬底研究施設が位置する沖縄県本部町にある本部漁協担当者とも調整を行い、同じく2023年8月から1年間を期限として研究を目的とした採捕を行う旨了承を得るなど、実験に向けた準備を進めた。その後ナマコ類の採捕を行い、飼育実験を行う予定であった。しかしながら、サンゴ稚ポリプの大量斃死や一部サンプリング予定地点でのナマコ類の個体群密度の減少など、当初の研究計画通り進まず、状況としてはやや遅れている。今後新たな調査地点の選定を行うとともに、これまでの経験を基にしたサンゴ稚ポリプ飼育環境の構築等を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析からナマコ糞便に特異的に多いことが確かめられた細菌類について、先行研究等を参考とした検討を行うと同時に、メタゲノム解析によるより詳細な機能遺伝子および酵素組成推定を行い、ナマコ腸内細菌叢と堆積物中の蓄積型栄養塩除去能力について検証を進める。 さらに、今年度得た知見をもとに、サンゴ稚ポリプを用いた実験系の確立と予定している飼育実験を進め、ナマコによる蓄積型栄養塩除去がサンゴの初期成長に及ぼす影響についても研究を進める。 クロナマコ以外のナマコ類についても糞便の採取を行い、沿岸における多様な環境において異なるナマコ種がそれぞれ持つ生態学的役割遂について、メタゲノム解析を通して解析を行う。 これまでの研究を通して明らかになった成果について、2024年7月にスペインで開催される国際棘皮動物学会にて口頭発表を行う予定である。
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