研究課題/領域番号 |
23KK0002
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
|
研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
木下 京子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (60774560)
|
研究分担者 |
足立 奈緒子 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, アソシエイトフェロー (20982789)
浅野 秀剛 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 館長 (70511137)
山本 ゆかり 和光大学, 表現学部, 客員研究員 (20855043)
|
研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2029-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2028年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2027年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2026年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
|
キーワード | トレス・コレクション / 目録化 / 書籍のマテリアル / デジタル・ビジュアライゼーション / メタ・データ / 二か語表記 / 表記ゆれ / 解題 / 版本 / 版元 / 保存修理 |
研究開始時の研究の概要 |
2018年、写真家でコレクターのアーサー・トレス氏が50 年以上にわたり収集した約1400点の書籍をペンシルヴェニア大学附属図書館に寄贈した。トレス氏のコレクションは江戸時代の版本を中心とし、明治時代に刊行された文芸書の初版本や着物の図案集、紙や布の見本帖などもあり、その内容はバラエティに富んでいる。日本国内には存在しない稀覯本も数多く含まれる。本研究では、英語と日本語による目録化に加え、書誌学的知識や諸般の補足説明を加えたこれまでになかった解題作成を行うことで、英語圏の人々にも書籍の内容を容易に知ることを可能にし、出版のみならず日本文化の諸相の理解を促すことを最終目標とする。
|
研究実績の概要 |
交付の決定後、2023年10月2日に科研メンバー全員とでZoomミーティングを行い、改めて申請内容の確認と今後の具体的な計画と実施時期等について検討した。目録化を進めるに際し、将来的に国内外の研究機関と情報を連結させるために、調査の際に使用するワークシートに記入する項目内容についても併せて討議した。このミーティングを受けて、研究分担者と、さらにはペンシルヴェニア大学の研究チームともZoomミーティングを行い、調査時期および調査方法について改めて話し合った。 2024年1月23日に科研メンバー全員で「二国間交流事業」時に実施した調査写真と調査報告書をもとに、未調査の版本の調査法とそのデータ化について検討を重ねた。研究代表者の木下は2024年3月18日~21日にかけてペンシルヴェニア大学図書館を訪れ、米国側の研究チームと未調査の版本の内容と点数をともに確認し、またペンシルヴェニア大学の教授陣、司書、および大学院生が継続して実施した調査内容を確認した。その上で、以下に二か国語表記で目録化を進めるかについて討議を重ねた。ペンシルヴェニア大学側も目録のデータをアメリカ国内の大学図書館や美術館と連結させるための、大学のデータエンジニアも交えて具体的方策を検討した。また2024年度8月に日米双方の研究チームが合同で調査・研究を進めるためにも、ペンシルヴェニア大学教授のジュリー・デイヴィス氏はアメリカ国内の研究者を招き、本研究代表者の木下とともにワークショップを開くことを提案し、5月上旬に開催することを決定した。ペンシルヴェニア大学の研究チームだけではなく、アメリカを代表する版本の研究者や関係者が一堂に会し、トレス・コレクションの内容を踏まえた上で目録化・データのビジュアライゼーションの推進、および各研究機関との連結と世界に向けての公開を実現させるための有意義な機会になることを確信した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の木下をはじめ、研究分担者の浅野秀剛氏・山本ゆかり氏、および研究協力者の田辺昌子氏・神谷蘭氏は、二国間交流事業のメンバーである。また本科研の研究分担者の足立奈緒子氏はペンシルヴェニア大学在学時はジュリー・デイヴィス教授に師事し、博士課程在学当時にトレス・コレクションの基礎調査に参加したことより、コレクションの概要を把握している。したがって、本科研メンバー全員がトレスコレクションの版本内容をある程度理解していることより、メンバー各自が自分が関心のある版本をそれぞれ調査を進めている。 研究代表者の木下は、12月は来日したジュリー・デイヴィス教授とともに国文学研究資料館を訪れ、日本のデータベースや個人使用の状況について聞き取り調査を行なった。また3月18日より3日間にわたりペンシルヴェニア大学付属図書館を訪問し、トレス・コレクションの各版本の分類の仕方について協議をし、さらに同大学コンピュータ・エンジニアととデイヴィス教授・チャンス教授・貴重書部門のディレクターのファーガソン氏とでミーティングを行い、データーベース上における表記ゆれや分類法について具体的に検討した。ペンシルヴェニア大学図書館はトレス・コレクションのデータベース化のために学内特別助成金を取得し、アメリカの大学の年度末(学期末)に当たる5月にワークショップを開催することを討議した。
|
今後の研究の推進方策 |
内容だけではなく、モノとして書籍を捉える場合、彫りや摺りなどの印刷技術だけではなく、紙や絵具など使用されたマテリアルや文字の変遷、出版の取り締まりなどの文化政策や経済状況、時代思潮までも考察するわけだが、例えば『絵入本 徒然草』は、その奥付横に「1940年6月15日 親愛なるオスカー・ベンル氏へ 友朋ドイツ国のパリ突入を祝してこの書を贈呈する」とあり、ドイツの日本研究者で吉田兼好から安部公房まで現代語訳をしたベンルに向けて贈られた本であることがわかり、歴史の一端を示す貴重な資料である。このような情報をどのように回収していくのか、公開するのかを今一度日米両国の研究チームで検討する必要がある。このような情報までを拾っていくとなるとトレス・コレクションの全書籍を目録化することはかなり難しく、時間と研究予算との兼ね合いも再検討する必要が出てきた。2024年8月に実施する合同調査で調査と目録化、その公開について判断を下す所存である。
|