研究課題/領域番号 |
23KK0004
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安達 大輔 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (70751121)
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研究分担者 |
北井 聡子 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (40848727)
古宮 路子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00733023)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2027年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | ポストソ連 / ソ連 / メロドラマ / 文化研究 / 文化と政治 / 情動 / 脱植民地 |
研究開始時の研究の概要 |
ソ連・ポストソ連文化研究をリードするアメリカと、ソ連との関係が深いドイツ・ポーランド・カザフスタンの研究機関・図書館に日本側研究者が直接出向いて資料調査を行い、海外のトップ研究者と共同で、プーチン体制下のロシアと東欧・バルト・中央アジアのメロドラマ文化についてジャンルを横断した比較研究を行う(文学・映像文化・舞台・音楽・美術・ポップカルチャー等)。
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研究実績の概要 |
この研究の目的は、プーチン体制下のロシア、そしてこの問題で関係の深い東欧・バルト・中央アジアにおけるソ連崩壊後のメロドラマ文化を比較し、文学・映像文化・舞台・音楽・美術・ポップカルチャーといったジャンルを横断した分析を行うことである。2023年度は、研究実施計画通り(a)メロドラマ的なステレオタイプの抽出(b)その劇化・演出の手法分析(c)背後にある文脈の明確化(d)当時の国民や海外の反応の調査の4点から国際共同研究を開始した。海外受け入れ研究者であるMark Lipovetsky教授(コロンビア大学)が2023年11月から2024年1月まで北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターに滞在、共同研究を行った。2023年12月には北米最大のスラブ東欧・ユーラシア研究学会ASEEESに安達・北井が出席してロシア・ソ連のメロドラマ文化における脱植民地化をテーマにしたパネルに登壇、研究者と打ち合わせを行った。この過程でBoris Noordenbos准教授(アムステルダム大学)はじめヨーロッパの若手・中堅研究者が参加したため、研究組織の拡大と発展的な再編を行った。共同研究の基礎的な組織構築(研究の組織運営体制の確定、ネットワーク網構築)を2023年中に完了し、2024年から毎月1回オンラインでセミナーを開催、関連文献の検討を通じて理論的なフレームワークの構築や論点の共有を行った。2024年3月にはNoordenbos准教授を招へいしてスラブ・ユーラシア研究センターでプロジェクト立ち上げワークショップ、東京大学で関連セミナーを組織した。以上によって上記研究目的のうち特に(a)メロドラマ的なステレオタイプの抽出(b)その劇化・演出の手法分析という理論面での整備が進み、次年度以降に予定している具体例の分析作業への基礎が整った。またASEEESの依頼により機関誌で本研究を国際的に紹介できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海外での受け入れ研究者であるMark Lipovetsky教授(コロンビア大学)が2023年11月から2024年1月までスラブ・ユーラシア研究センターに滞在、この間スラブ・ユーラシア研究センター及び大阪大学・東京大学で関連研究会を組織するなど共同研究が進んだ。2023年度中を予定していたコロンビア大学での資料調査・共同研究及びワークショップの開催は先方の事情により次年度へ持ち越しとなったが、この準備は着実に進めることができた。さらにASEEESへの参加を通じてNoordenbos准教授率いる陰謀論の国際共同研究のグループを中核としたオランダやドイツ・旧ソ連圏の若手・中堅研究者が本研究へ参加することになり、当初想定していた組織を発展的に再編・拡大することができた。予定していた研究体制の組織に加え、毎月1回ペースでのオンラインセミナーの組織や、Noordenbos准教授を日本に招へいしてプロジェクト立ち上げワークショップや関連セミナ―の開催を実施することができた。この結果Noordenbos准教授の専門とする陰謀論とメロドラマに多くの共通する研究トピック(視覚性、ナラティヴの類型性や時間、感情・情動研究の導入)が見いだされ、次年度以降の研究の発展の基礎をつくることができ、想定以上に共同研究者間で理論的フレームワークの構築や論点・問題意識の共有が進んだ。一方でナザルバエフ大学での資料調査・共同研究は実現せず、中央アジアの研究者との連携が今後の課題として残った。2023年11月にはASEEESの依頼を受けて執筆した本研究の紹介文が機関誌に掲載されたが、このレベルで国際的な発信ができたことは日本のロシア文学・文化研究史上においても歴史的な出来事となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究実施計画の通り、(a)メロドラマ的なステレオタイプの抽出(b)その劇化・演出の手法分析(c)背後にある文脈の明確化(d)当時の国民や海外の反応の調査、以上4点からポストソ連のメロドラマ文化と政治の関係を明らかにする国際共同研究を進めて行く。2023年度に理論的なフレームワークと論点・問題意識の共有(上記a, b)が進んだことを承け、次年度以降は理論面でのさらなる洗練を目指すとともに、受容研究(特に上記c, d)にも目配りしながら具体的な実例に即した分析を行ってゆく。 研究2年目の具体的な共同研究のテーマは「ソ連のメロドラマ文化の遺産」とする。現在の世界情勢にはプーチン政権下のロシアや旧ソ連圏でのソ連文化の記憶や遺産への向き合い方が大きく影響している。したがってLipovetsky教授(トリックスター)、Balina教授(教育)、Oushakine教授(記憶、トラウマ)ら共同研究者によるソ連文化研究をメロドラマの文脈で理解し直し、Noordenbos准教授らによる現代文化研究と比較することで、過去のソ連と現代のポストソ連の文化の歴史的関係を分析する。そのため2024年度も引き続きオンラインセミナーを継続するとともに、2024年5月にはコロンビア大学で資料調査、Lipovetsky教授らと共同研究を進め、関連するセミナーを共同で組織することを予定している。また成果論集の刊行へ向けて準備を進めるとともに、国際共同研究グループのメンバーの間で今後の共同研究計画をさらに精緻にして共有してゆく。
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