研究課題/領域番号 |
23KK0008
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40392550)
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研究分担者 |
高橋 香里 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 助手 (70935907)
朱 若麟 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (70979731)
高嶋 美穂 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 特定研究員 (80443159)
内記 理 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (90726233)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2027年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2026年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ストゥッコ / 製作技法 / ガンダーラ / バクトリア / 科学分析 |
研究開始時の研究の概要 |
アフガニスタン東部のバクトリア地域,パキスタン北西部のガンダーラ地域やタキシラからは,いわゆる「ストゥッコ」像と呼ばれる塑像が多数出土する。仏教美術史上の研究史があるものの,塑像資料の出土地,由来が不明なことが多い状況から,技術的,材料的な研究はほとんど実施されてこなかった。そもそも「ストゥッコ」像とは何かという問いも定まっていない。そこで,ストゥッコ像の代表的研究の実績があるハーヴァード大学と連携し共同研究を実施する。どのようにギリシア・ローマ的な技法材料が受容されたのか,地域ごとに塑像の地域的な技術・材料の差異があるのかなど,技術的系譜から系統的にストゥッコ像の全体像を復元したい。
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研究実績の概要 |
2023年度は、ハイロックス社製高解像度テレセン電動ズームレンズを導入し、東京藝術大学保存修復・彫刻研究室所有のマイクロスコープ本体の機能を拡張して、塑像表面の高解像度画像取得を可能にするなど、調査準備を行った。ウィーン大学/ハーバード大学付属美術館のデボラ・クリンバーグ=サルター教授らとの共同調査を実施するための事前準備を行うために、平山郁夫シルクロード美術館所蔵のストゥッコ資料調査の予備調査を実施した。その調査において、秋以降の本調査のために、対象資料選定、蛍光X線による非接触的な元素分析、微小試料のサンプリングを実施した。 予定では、クリンバーグ=サルター教授とキメット研究員に2023年度後半に来日してもらい、共同調査を計画していたが、クリンバーグサルター教授の体調不良と、キメット研究員の転職による都合から来日しての調査の日程があわず(冬季は平山郁夫シルクロード美術館が休館になることもあり)、2024年度に調査を繰り越した。円安が急速に進み、現行の予算での海外招聘、渡航が難しくなり、予算を繰り延べることで調査用の旅費を確保したいという意図もあった。 予備調査において、およそ20点の資料調査を実施し、従来ストゥッコ像としてひとくくりにされてきた塑像が、石灰、石膏、粘土、石灰と石膏の混合物、という4種類の材質に分類できる可能性を提示できる状況に至った。これは、従来の分類とは異なる新たな成果の一つといえる。また、調査対象資料のうち、およそ10点から、放射性炭素年代、鉱物学的な薄片作成等に使用するための石灰素地および粘土部分の微小試料の採取を実施した。彩色部分からは、経年変化により酸化ヒ素へ変質している硫化ヒ素の黄色(オーピメント:石黄)である可能性の高い箇所を検出し、対象のストゥッコ資料が明らかに経年劣化を受けたものであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
クリンバーグ=サルター教授の体調不良、キメット研究員の転職などで、日本へ招聘しての共同研究の実施は順延となったが、その間の、予備調査として、日本側で平山郁夫シルクロード美術館における現地調査を実施し、分析、試料採取等の活動は予定以上に大きく進んだ。得られた資料は、今後、放射性炭素年代測定や、同位体比分析、鉱物学的薄片観察等の分析に利用予定である。研究内容や進捗状況については、適宜、電子メールやオンラインミーティング等でアメリカ側の研究者たち密に情報交換を行い、日本側の成果の進捗についても共有をしている。 マイクロスコープ用の高輝度、高解像度のレンズの導入も完了し、実際の現場での調査のために、共同研究者の高橋香里、朱若麟によって分析のための準備が整えられている。 ELISA法(抗体抗原反応をもちいた「酵素結合免疫吸着測定法」)を利用したタンパク質の同定についても、標準試料の準備が整い、実試料分析への準備が完了した。 材質分析に先立って、調査対象としているストゥッコ像の撮影記録、三次元計測等も併せて実施した。様式や型式による調査のための基礎資料作りも進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年5月に、平山郁夫シルクロード美術館において、予備調査の補完を計画している。そこで、2-3点のストゥッコ像からの試料採取と、前回調査した塑像のうち、再確認の必要な数点の塑像について非接触的な蛍光エックス線分析を予定している。 2024年6月には、アメリカ側の研究者(クリンバーグ=サルター教授、キメット研究員)と、日本側の研究者(高橋香里、朱若麟、山根萌々花)によって、フランス・ギメ東洋美術館での共同調査を予定している。得られた結果については、オンラインによる国際研究会のかたちで日・米研究者間において情報共有する予定である。 日本円の為替状況によるが、可能であれば、アメリカ側からの研究者を2024年度後半に招聘し、平山郁夫シルクロード美術館にて資料を実見して協議したい。
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