研究課題/領域番号 |
23KK0024
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
松本 朋哉 小樽商科大学, 商学部, 教授 (80420305)
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研究分担者 |
Barbieri Laura 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 学振特別研究員(PD) (60975324)
永島 優 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センターミクロ経済分析研究グループ, 研究員 (70880277)
高 勇羅 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (80992784)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 15,990千円 (直接経費: 12,300千円、間接経費: 3,690千円)
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キーワード | マラリア / 行動科学 / 社会実験 / インセンティブ / 教育 / 医学 / 経済学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、マラリア高度感染地域住民が、積極的に感染対策を行うよう促す政策ツールを開発するための医学・経済学の学際研究である。これは、研究代表者らがケニア西部において手がけてきた政策介入実験研究の後継に当たり、前研究で得られた実証データを元に、政策内容を改善し、今後社会実装されるマラリア対策戦略を担う要のツールに昇華させることを目指すものである。政策ツールの柱の一つは、独自に開発したマラリア教材を用いた住民啓発であり、もう一つは、住民のマラリア非感染に褒賞を与えるインセンティブ制度の導入である。研究を通じ効果検証をすることで、感染を中長期的に抑制ための知的政策基盤を構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本プロジェクトは、マラリア高度感染地域住民が積極的に感染対策を行うよう促す政策ツールを開発するための医学・経済学の学際研究である。本研究は、ケニア西部で実施された政策介入実験研究の後継であり、前回の研究で得られた実証データを基に政策内容を改善し、今後社会実装されるマラリア対策戦略の要となるツールを目指している。政策ツールの柱は二つあり、一つは独自に開発したマラリア教材を用いた住民啓発、もう一つは住民のマラリア非感染に対するインセンティブ制度の導入である。これにより、中長期的に感染を抑制するための知的政策基盤を構築することを目指している。 2023年度の初年度には、ホマベイ郡スバ南の住民を対象にランダム化比較介入実験を12月から翌年1月にかけて実施した。この実験の詳細は、プロトコルペーパーとして国際学術査読雑誌(Trials; doi:10.1186/s13063-024-07991-4)に掲載・公開されている。さらに、研究代表者と分担者が2月から3月にかけて現地を訪れ、現地共同研究者と共に介入実験の効果を測定するためのフォローアップ調査(2024年4月から5月実施予定)の入念な準備を行った。 今後の計画としては、収集した調査データを分析し、短期的な効果を検証すること、さらに中期的な効果検証のための2回目のフォローアップ調査を実施することを予定している。このように、研究を通じて政策ツールの効果を実証し、最終的には社会実装に向けた確かな知的基盤を構築することを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、マラリア高度感染地域において住民向けの政策ツールを開発し、マラリア対策戦略を強化することを目的としている。プロジェクトの達成度は以下の四つの基準に基づいて評価される:1) 政策ツールの開発状況、2) 政策ツールの評価のための社会実験・調査のデザイン及び実施状況、3) データ分析および研究の質と進捗状況、4) 成果の発信状況である。初年度は特に1)と2)が重要であると考える。以下にそれぞれの自己評価を記す。 1)ケニアおよび日本の医学・経済学研究者から成る研究チームが議論を重ね、政策ツールを完成させた。この政策ツールには二つの柱がある。一つは独自に開発したマラリア教材を用いた住民啓発であり、もう一つは対象住民がマラリアに感染していないことを条件に褒賞を与えるインセンティブ制度の導入である。インセンティブ制度には二つの異なる形態のスキームを用意した。これらのコンテンツは、研究代表者らが行った前研究を基に改良されたものである。厳密な検証はフォローアップ調査のデータが揃うまで待たれるが、少数の住民に対するプレテストの評判は上々であり、効果的なマラリア対策ツールとなり得ることが期待される。 2)現地調査チームと協力し、ランダム化比較介入実験のフォーマットをデザインし、12月から翌年1月にかけてホマベイ郡スバ南の住民を対象に実験を実施した。この実験デザインの詳細は、プロトコルペーパーとして国際学術査読雑誌(Trials)に掲載・公開されている。さらに、研究代表者と分担者が2月から3月に現地を訪れ、現地共同研究者と共に介入実験の効果を測定するためのフォローアップ調査(2024年4月から5月実施予定)の入念な準備を行った。これらの活動は大きな問題もなく順調に進捗した。 以上の点から、プロジェクト全体として概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクトは、2023年度から3年間を予定し、前半に介入実験とフォローアップ調査でデータを収集し、後半に収集データを解析して学術論文の執筆・公刊を目指すと共に、学会などを通じて研究成果を広く社会と共有する計画である。研究2年目(2024年度)には、介入実験の短期的な効果測定のため、4月から5月にフォローアップ調査を実施し、評価指標を収集する。また、介入実験から一定期間経過後の影響を観察するため、7月から8月に第2回目のフォローアップ調査を予定している。 フォローアップ調査では、対象家計への訪問インタビューを実施し、家計のメンバーから血液試料を収集する。血液試料の分析は、ケニア国内で海外共同研究者の監督のもと実施する。実験の評価指標やインタビュー調査データが集まり次第、効果測定の解析を進め、論文の執筆・投稿に取り掛かる予定である。 このように、プロジェクトは調査データの収集と解析を通じて、効果的なマラリア対策を検証し、その成果を学術的に発信しながら、社会にも広く共有していく計画である。
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