研究課題/領域番号 |
23KK0027
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
和田 哲夫 学習院大学, 経済学部, 教授 (10327314)
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研究分担者 |
大西 宏一郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60446581)
門脇 諒 一橋大学, 社会科学高等研究院, 特任講師 (90845041)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2029-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
2028年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2027年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2026年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 特許の藪 / 特許審査 / 取引費用 / 特許ライセンス / 特許 |
研究開始時の研究の概要 |
特許はイノベーションを推進する制度目的を持つが、個別特許の保護範囲が錯綜して技術の活用や後続技術開発が困難になる「特許の藪」現象が深刻化し、イノベーションを阻害している可能性が指摘されている。この特許の藪の影響を定量的に推定する方法を本研究では追求する。国際的な特許制度の間隙を突く企業が存在し、また司法的解決を前提として欧州で知財交渉が行われるなど、原因にも結果にも国際的な広がりがある問題のため、制度基盤の中心地の一つであるドイツにおいて、特許の藪の研究でも先駆的な成果を生んだドイツ研究者との協同作業を通じて、国際的な探究を深める。
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研究実績の概要 |
本研究は特許の藪に関する定量指標の改善を目指している。既存指標として2つ知られており、一つは後方引用特許の権利者分布に関するハーフィンダール指数を基にしたもの(R.Ziedonis指標)、もう一つは3社による引用トリプルを基にしたもの(GWH指標)である。後者の考案者の一人であるWagner教授と対面で現地共同研究を行い、現存のGWH指標の構築アルゴリズムを詳細に理解するとともに中間データを交換した。日本の30年以上にわたる審査官特許引用データで再構築するためのデータベース概念設計が完了し、構築作業にも着手した。これにより、2024年度に特許の藪に審査の質が関連しているか、実証研究を進める土台を得ることができた。審査の質に関しては、特許審査官の属性が関係しているという米国の先行研究がある。同様の日本の特許審査官属性データについてもデータ整備を進めた。 また、2024年1月の渡米研究により、米国人研究者による別の特許の藪指標(Ziedonis分散指標)の考案者と対面打合せを行った。これにより現在2つ存在する特許の藪指標を両方とも原著者に直接問いあわせつつ再検討することができるようになった。また近い将来の共同研究の可能性についても打ち合わせることができた。これらにより、企業単位でなく特許単位の情報を生かし、既存研究にはない指標を用いて精度を高めた実証研究を行う基盤を整備しつつある。 このほか、特許の藪が生じる原因である、特許技術同士の相互依存性(補完性)の定量的な強さについて、特に異時点間について検証し論文を公表するなど、成果を海外査読学術誌、国内書籍の章、ディスカッションペーパー等により公表し、また海外学会で口頭成果報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり、2023年9月の開始直後と2024年3月に研究代表者は渡独し、また分担者の大西は研究期間内は在ミュンヘンで研究を行った。ドイツ研究パートナーとの対面打合せを行い、既存の特許の藪指標の一つ(引用トリプル)の構築アルゴリズムを詳細に理解共有した。分担者である大西は代表者である和田と連携し、特許審査官の属性に関するデータベースの作成・高度化にも着手している。日本の30年以上にわたる審査官特許引用データによるデータベース概念設計が完了し、着手して2023年度中にある程度すすめることができた。これにより、2024年度に特許の藪に審査の質が関連しているか、実証研究を進める土台を得ることができた。また、2024年1月の渡米研究により、米国人研究者による別の特許の藪指標(Ziedonis分散指標)の考案者と対面打合せを行った。現在2つ存在する特許の藪指標を再検討する動機や見通しについてアドバイスを得て、また近い将来の共同研究の可能性についても打ち合わせることができた。さらに、在独の欧州特許庁弁理士と欧州特許異議申立に関してデータに基づく意見交換しつつアドバイスを得て、国際的な見地からの特許の藪の研究に実務家からの貴重な知見を得た。このほか、分担者の門脇は、特許の藪が生じる原因である、特許技術同士の相互依存性(補完性)の定量的な強さについて、特に異時点間について検証した。以上から開始直後の約半年でスムーズにプロジェクトを立ち上げられていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、既存の特許の藪指標の一つ(引用トリプル)の構築アルゴリズムを日本特許データ全体に移植し、先行研究が明らかにした「特許の藪が異議申立など事後的な特許の質の改善機能を阻害している」ことの日本特許を用いた再現研究をまず行う。さらに、特許の質に関する外生変数として先行研究が用いている指標も活用し、特許の藪に審査の質が関連しているか、特許審査の質が特許の藪を悪化させるか、等に関して実証研究を進める。海外の学会での報告を行って海外査読誌投稿を行うほか、検証対象の拡大や手法の精緻化のため、また現実の弁理士から聞き取りを行うため、渡独及び渡米研究を行う。
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