研究課題/領域番号 |
23KK0028
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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研究分担者 |
久保 公二 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (00450528)
吉田 悦章 同志社大学, ビジネス研究科, 教授 (60506351)
矢作 健 成蹊大学, 経済学部, 講師 (90844548)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 金融包摂の多様性 / 銀行口座開設率 / 家計の金融ライフサイクル / 家計の持ち家率 / 家計の資産蓄積 / 金融包摂と負債ファイナンス / 銀行チャネル / 資産蓄積 / 持ち家比率 / 金融ライフサイクル |
研究開始時の研究の概要 |
家計の金融包摂による貧困削減効果の事例として、頻繁にとりあげられるのが、ムハマド・ユヌス氏創設のグラミン銀行によるマイクロファイナンスである。他方、世界190各国・地域には、様々な家計向け金融サービスが、地場の金融機関によりそれぞれ育まれてきた。本国際共同研究は、普通銀行に加え、農協・漁協などの協同組織金融機関や、イスラム銀行が存在することが、低所得者層の銀行口座開設率を高め、貧困削減に貢献している実証エビデンスを示す。それにより、「持続可能な開発目標」に掲げられる金融包摂には、国・地域ごとに多様な仕組みがあり、これらが貧困撲滅を促すことを明らかにすることで、未来の開発政策を提示する。
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研究実績の概要 |
2023年度下期は、次の3つの研究活動を行った。まず、マラヤ大学ビジネス経済学部側から一名の研究者を成蹊大学に招き、国際セミナーを開催し、その概要を成蹊大学アジア太平洋研究センターの会報誌から公開した。続いて、研究代表者がマラヤ大学ビジネス経済学部を訪問し、国際セミナーでの報告と、今後の個票調査の実施方法を含む、研究活動の打ち合わせを行った。第三に、マレーシアに拠点を置くVodus社にマレーシア家計向け個票調査の実施を委託し、マレーシアにおいて、(1)普通銀行、(2)イスラム銀行、(3)協同組織金融機関、その他の金融機関に口座を持つ家計と、(4)口座を持たない家計の金融行動に関する定量データを収集した。この定量データを用い、(1)普通銀行、(2)イスラム銀行の双方に口座を開設している家計、(1)もしくは(2)のみに口座を開設している家計、(4)口座を開設していない家計、の3種類の家計の、年齢別総資産残高の分布、所得階層別持ち家率の違い、について分析を進めた。現時点ですでに、(1)(2)の家計は、いずれも(4)口座を持たない家計よりも、金融資産残高、持ち家率が、統計的に有意により大きいことを確認している。他方、(1)普通銀行と(2)イスラム銀行、のいずれかに口座を持つ家計の比較では、所得階級、年齢階層を通じて、金融資産蓄積の点で明確な違いが検出されていない。そして、口座開設家計の所得分布の違いにおいては、(2)イスラム銀行は、(1)普通銀行に口座を開設する家計よりも、所得分布の中央値がより低いことが確認されている。これら一次調査の研究成果は、2024年度中にワーキングペーパーとして公開するほか、すでに1つの一般ビジネス経済誌に、成果を公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マラヤ大学の研究グループがかねてより、東京での研究セミナー報告と成蹊大学との共同研究を希望していたこともあり、2023年秋季、2024年年初の東京、クアラルンプールでの研究会開催が順調に進捗した。また、マレーシア家計調査委託が問題なく進展していることも、プロジェクト開始後、半年間で一次データ収集が4,500サンプル収集できた理由である。マレーシア国内での普通銀行に口座を持つ家計のデータ収集に関しては、中央銀行バンク・ネガラ・マレーシアの協力が得られたため、同中央銀行が公表する統計の一次データの一部の利用が可能となった。また、イスラム銀行に口座を開設する家計データについては、国際イスラム金融大学(INCEIF)の協力が得られたため、所得分布や世帯主年齢その他のデータ収集を行うことができた。これらの協力機関からのデータは、直接、収集した個票データにマッチングすることはできないものの、マレーシアの家計部門の微視的金融構造を探る上で多大な貢献を果たしている。金融包摂されていない家計の情報は、当初の計画通り、個票調査から得られるデータに依存せざるをえないものの、口座を持つ家計に関する情報収集が進展したことが、研究プロジェクト全体の進捗が順調であることの理由である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は6月、7月、11月の3回、マラヤ大学との家計の金融包摂研究にかかる国際共同セミナーをオンラインで開催する。ここでは、これまでの研究成果の報告に加え、参加者であるマラヤ大学ビジネススクールの学生向けに、家計のファイナンス分析に関わるプログラミング(Python)の解説も行う。マレーシアでの第2回調査は2024年12月から2025年1月にかけて実施する。ここでは、第1回調査内容と同様の調査票を設計することで、時間的な変化によるデータ分布の変化を確認する。 プラスティヤ・ムルヤ・インドネシア大学との共同研究は、まず8月に同大学を訪問し、対面での国際合同セミナーを開催する。インドネシアの家計部門の個票調査については、プラスティヤ・ムルヤ・インドネシア大学が、全面的に受託元となることに合意しているため、6月に契約締結を行い、8月の合同セミナー開催時に、併せて業務説明会を実施する。プラスティヤ・ムルヤ・インドネシア大学との国際合同セミナーは12月にもオンラインにより開催する。 上記をまとめると、マレーシアとインドネシアの家計の金融包摂に関する個票調査を、それぞれ2024年12月、2024年8月に実施する。国際共同研究は、この間、成蹊大学、マラヤ大学、プラスティヤ・ムルヤ・インドネシア大学がそれぞれにおいて実施し、マラヤ大学とは年内3回のオンライン・セミナーを実施する。プラスティヤ・ムルヤ・インドネシア大学と成蹊大学は、8月、12月に対面、オンラインでのセミナーを一度ずつ、2024年度は計5回の国際合同セミナーを開催する。
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