研究課題/領域番号 |
23KK0034
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
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研究分担者 |
川端 美季 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (00624868)
光平 有希 国際日本文化研究センター, 総合情報発信室, 助教 (20778675)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2026年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 薬物政策 / 薬物治療 / 国際比較 / オーストラリア / 日本 / 薬物政策の歴史と現状 / 薬物依存の治療 / 犯罪化と医療化 / ハームリダクション |
研究開始時の研究の概要 |
薬物依存は国家/家族/個人に及ぼす影響が大きく、犯罪化と医療化の相反する視点から語られる政治的な問題であり、刑事司法あるいは福祉の対象として扱われてきた。だが、近年の薬物政策は国際的に大きく変貌した。薬物規制強化を目的とした厳罰政策から、薬物使用が及ぼす健康被害や社会的な不利益を低減化・最小化させるハームリダクションへと転換する国々が増える一方、日本では厳罰主義がもたらす弊害とその解決策の議論が続く。本研究は国際的な視点に立って、薬物依存と薬物使用の政策的な課題を歴史・文化的な文脈から総合的に検討し、変化し続ける薬物依存と薬物使用問題に柔軟に対応する新たな健康社会構築のプランを提案する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績としては、1) 薬物政策・薬物治療に関する先行研究の整理、2) アメリカ占領下沖縄(1945-1972)における薬物政策・薬物治療の公文書資料にもとづく研究、3) 研究打合せと研究会の開催、の3点が挙げられる。 1)については、わが国の薬物政策・薬物治療に関する近年の論者(佐藤哲彦、松本俊彦ほか)の言説、戦前から戦後にかけての歴史的な言説(馬島僴、久万楽也、雑誌『精神衛生』の関連記事など)、海外の論者(V. Berridge、A. Ritter、H. Barop ほか)の言説、日本本土および沖縄における占領期(およびその後の時代を含む)の薬物政策・薬物問題、そして、近年の薬物使用等に関する法制度議論に着目して、先行研究を整理した。 2)として掲げた、占領下沖縄における薬物政策・薬物治療の公文書資料にもとづく研究は、薬物政策・薬物治療の国際比較のためのパイロット・スタディと位置づけている。さらに、従来の研究ではあまり検討されてこなかった公文書などの一次的な歴史資料の参照を重視する手法により、薬物問題に対応するさまざまな関係者のごく具体的な動静を分析・記述しようと試みるものである。その成果の一部は下記の研究会での橋本の発表に反映されている。 3)については、2024年1月に立命館大学(対面と遠隔の併用)で研究打合せを行い、同年3月には京都市立芸術大学で研究会(対面のみ)を開催した。研究会では、橋本より「第二次世界大戦後のアメリカの薬物政策と沖縄」について、光平より「日豪における薬物依存への補完治療 ―音楽療法を基軸に―」というテーマで発表が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度の助成開始は2023年11月からであり、年度末の2024年3月までの比較的短期間に達成できたことは、上記の薬物政策・薬物治療に関する先行研究の整理、および研究会の開催などであり、まだ論文や学会発表という形での成果発表には至らなかった。また、2024年3月に予定していたオーストリアでの調査は、受け入れ先の都合で年度内での実施ができず、2024年度の夏期(8、9月)に延期せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではその目的に掲げる、日本とオーストラリアの薬物依存治療と薬物政策の比較のために、双方の国の研究者の相互交流を重視している。そのため、2024年度については(およびそれ以降の年度についても)、2023年度に実施できなかったオーストラリアでの研究会および薬物関連施設などの現地視察を実施する予定であり、その逆に、オーストラリアの研究者と日本で研究会を開くことも計画している。 これらの研究交流が目指すところは、単に海外事情を把握することや、日本の実情を海外に発信することではない。薬物政策/治療実践/治療思想の歴史的な連続性と非連続性、それらの普遍性と地域特殊性を検討するためには、国外の研究者と直接対話を重ねることが有効である。こうした観点に立って、研究者の交流に重点を置いて研究を推進していく。また、連携研究の成果を積み上げて、最終的にどのような形でその成果を世に問うかについても議論していく予定である。
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