研究課題/領域番号 |
23KK0055
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 貴之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10375595)
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研究分担者 |
洲嵜 ふみ 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (70779727)
小沢 顕 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80260214)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2026年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 蓄積リング / 多価イオン / ガンマ崩壊 / 寿命 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、通常観測されない、量子力学の2次効果として出現する2光子ガンマ崩壊現象を蓄積リング法によって観測する。実験はドイツ重イオン科学研究所GSI/FAIRの蓄積リングESRを用いる。GSI加速器施設にて完全イオン化状態の不安定核ビームを生成する。核反応で生成される不安定核は一部が長寿命励起状態にある。このビームをそのまま超高真空の蓄積リングに入射、周回させる。蓄積粒子の周回周波数は質量に比例するため、飛行中に2光子崩壊すると、励起エネルギー分だけ質量が減り周回周波数が変化する。この周波数変化をショットキー検出器で観測し、崩壊時間を得て寿命を決定する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、核反応で生成される多価イオン状態の不安定核ビームを重イオン蓄積リングに貯蔵し、飛行中の崩壊を観測することにより、中性状態からの寿命変化を観測する。特に、基底状態と励起状態のスピンパリティが共に0+準位のガンマ崩壊に着目する。この遷移は選択則により1光子の崩壊(通常のガンマ崩壊)が起こらないため、内部転換電子放出による崩壊となる。しかし、高エネルギー核反応で生成された不安定核ビームは軌道電子を纏わないため、崩壊することができず、量子力学の2次効果による2光子崩壊のみが起こる。この稀現象の観測は量子論の精密検証のみならず、励起状態の寿命変化という宇宙の極限下で起きている核反応連鎖による元素合成の理解に本質的に重要である。 実験はドイツGSI/FAIR研究所で行う。GSI研究所の蓄積リングESRに78Krから生成した72Geビームを貯蔵した。72Geは基底状態のスピンパリティが0+で、励起エネルギー~700keVに0+準位(アイソマー)を持つ。核反応で生成された72Geには約5%の割合でアイソマーが含まれる。ESRに入射された粒子はショットキー検出器によってその周回周波数を非破壊的に観測することができる。蓄積リングを等時性条件にしておくことで周回周波数は粒子の質量電荷比に比例する。飛行中に2光子崩壊すると質量が減り周回周波数が変化するため、バックグラウンドなしに直接崩壊を観測することができる。72Geに明瞭に2光子崩壊の証拠を得ることに成功した。 2023年度は2021年度に行ったビーム実験の解析を完了し、実験室系で半減期~24msを得た。そして投稿論文を完成させた。2024年度にあらたな実験を予定しており目下準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年に行った実験データの解析を終了し、投稿論文を完成させた。2024年に予定している実験の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度前半にGSI/FAIRにてビーム実験が予定されている。シンクロトロンによって100Moの1次ビームをエネルギー核子当たり約450MeVまで加速する。Be生成標的に照射し入射核破砕反応によって98Moもしくは98Zrを生成する。これらの核種はいずれも基底状態のスピンパリティが0+で、第1励起状態も0+のアイソマー準位を持つ。GSIの蓄積リングESRを等時性に調整し、98Mo/98Zrを入射、ショットキー検出器によって周回周波数の変化を非破壊観測する。蓄積リング中を周回中に2光子崩壊すれば周波数変化から明瞭に観測することができる。実験には山口が取りまとめ役となり若手研究者を引き連れて渡航する。実験後、データを持ち帰りGSI研究者と独立に解析を進める。解析結果は1年を目処にまとめる予定である。 また、GSI/FAIR研究所との共同研究により、革新的な位置感度型ショットキー検出器を開発している。本研究テーマには使用しないが、2024年秋に日本に輸送しビーム試験を予定している。これによって、蓄積リングを周回する粒子の軌道を測定することができるため、蓄積リングのビーム診断系として利用できるだけにとどまらず、周回粒子の運動量を正確に測定することができるようになる。成功すれば同種の検出器をGSI/FAIRにも導入予定である。この開発は国際共同研究として日本側はデータ収集系の準備を行う。
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