研究課題/領域番号 |
23KK0098
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (20332182)
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研究分担者 |
Biswas Sourav 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 研究員 (00985442)
新堀 佳紀 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 講師 (20734924)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
2026年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2025年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 金属クラスター / DFT計算 / 電極触媒活性 |
研究開始時の研究の概要 |
化石資源の枯渇と地球温暖化問題が深刻化する中,光触媒を用いて水と太陽光エネルギーから水素を生成し,燃料電池によってその水素を利用し電力を得るシステムの構築が期待されています。こうしたエネルギー変換システムを用いると,光と水だけで電気エネルギーを得ることが可能であることに加え,エネルギー媒体(水素)を循環させることが可能となります。本研究では,そうしたエネルギー変換システムにおけるモデル触媒として原子精度にて制御されたチオラート保護金ナノクラスター及びその合金ナノクラスターに着目し,従来触媒を凌駕する電極触媒の創出を目指します。
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研究実績の概要 |
原子数が数十個程度以下で構成されている金属ナノクラスター(NCs)は非常に微細な粒径を有しており、バルク金属とは異なる電子/幾何構造及び物性・機能の発現を期待し得る。一方で、設計に基づきそれらの構造及び物理化学的性質を制御する上では,物性・機能の発現機構の解明が必要であり,そのためには実験研究と理論研究の連携が不可欠である。本研究では,エネルギー変換システムにおけるモデル触媒として原子精度にて制御されたチオラート(SR)保護金ナノクラスター(Aun(SR)m NCs)及びその合金NCsに着目し,実験研究と理論研究が連携することで,それらの水素生成反応(HER),酸素生成反応(OER),及び酸素還元反応(ORR)触媒能を明らかにするとともに,それにより,従来触媒を凌駕するHER,OER,及びORR触媒の創出を試みる。しかしながら、これら精密金属NCsの電極触媒能については,計算手法が未だ発展途上の段階にある。こうした背景から、研究代表者の研究室メンバーが直接フィンランドを訪問することで最先端の計算手法を習得するとともに,現地および帰国後に,実験結果をもとに精度の高い計算手法を確立(改良)し続けることで本研究の実現を試みた。その結果、Aun(SR)m NCsの電荷状態がHER活性に影響を与えることを電気化学的実験によって明らかにした。また、単結晶X線構造解析及び、DFT計算により、Aun(SR)m NCsの電荷状態は幾何構造には影響を及ぼさないことが示された。このれらの結果をもとに、高活性化の要因を1)水素吸着(Volmerステップ)が熱中立的であること、2)このステップにおける活性化エネルギーが低いこと、3)HER時の電位において,精密金属NC-生成物間で電荷対が形成されること、の3点から理論化学的に検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度には、研究代表者の研究室にて新たに測定された精密金属NCsのHER活性の再現を通して計算手法を習得するとともに,計算手法の精度向上に成功している。渡航者が帰国した後は,HERについては研究代表者の研究室にて実験と計算の両方を行い,配位子における官能基の長さ、異元素種類の最適化を通して従来触媒を凌駕するHER触媒の創製を試みている。加えて、さらに安定性の高い金属NCsの研究も進行しており、応用研究を見据えた段階にある。また、同様の金属NCsを用いてOER及びORRの測定も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で金属NCsのHER活性について、反応メカニズムの解明および計算手法の精度向上が達成されたが、OER、ORRなど他反応の活性に関する計算手法の確立や高活性な金属NCsの設計など課題は残っており、体系的な手法の確立には未だ報告例が足りない状況にある。今後はさらに様々な反応における金属NCsの触媒活性について報告数を増やしつつ、実験研究と理論研究の両面からより精密な物性の体系的理解を推進する。加えて、得られた知見から新規合成に成功した金属NCsを用いて高活性触媒への応用を試みる。さらには、日本国内での実験研究では、精密金属NCsの担持方法の改良にも取り組む。精密金属NCsについては,現状では担持条件が最適化されているとは言い難い。今後は,各精密金属NCsの活性向上だけでなく、各精密金属NCsの活性を最大限に活用し得る電極調製方法も併せて確立することで、従来触媒を凌駕するHER,OER,及びORR触媒の創製を実現する。
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