研究課題/領域番号 |
23KK0110
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 准教授 (90511238)
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研究分担者 |
西山 雅祥 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10346075)
豊竹 洋佑 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60843977)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
2026年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2025年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 細胞外膜小胞 / 極限環境微生物 / Shewanella / 外膜小胞 / 低温菌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では細菌が放出するカプセル状のナノ粒子(外膜小胞)を基盤とするナノ材料開発を目指し、世界中の多様な海洋環境から採取された海洋環境サンプルを対象に、外膜小胞生産性に秀でた細菌を探索する。獲得した細菌群の比較ゲノムや遺伝子工学的実験を通して、外膜小胞の高生産を支える分子基盤を解明するとともに、それらを分子基盤とするナノリアクターやワクチン様ナノ粒子の開発を目指す。本研究では、米国スクリプス海洋研究所の D. Bartlett 博士との共同研究体制で取り組み、同研究所が所有する環境サンプルを対象に目的の細菌群の取得を目指す。
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研究実績の概要 |
細菌が放出するカプセル状のナノ粒子は、細胞外膜小胞(MVs)や外膜小胞(OMVs)と総称される。これらの細胞外微粒子は、細菌と宿主もしくは細菌間の情報伝達ツールとして機能し、細菌の生存戦略を支えている。一方で、細菌の MVs はワクチンや薬物送達、異種タンパク質分泌生産プラットフォームとしての応用が期待されている。細菌の MVs の応用が期待される一方で、これらの細胞外微粒子生産の分子基盤の多くが不分明であること、大腸菌などのモデル細菌の MV 生産性が低いことがボトルネックとなり、MVs の応用は現状、限定的である。本研究では、効率的な MV の応用と MV 生産機構の解明に資するモデル細菌の獲得を目指し、MV 生産性に秀でた新規の有用細菌の探索を主目的としている。本研究は、米国スクリプス海洋研究所 Douglas Bartlett 博士との共同研究体制で遂行する。今年度、1 月に米国のBartlett 博士の研究室を訪問し、当研究室が所有する海洋細菌単離株コレクションを確認した。これらのうち、深海や高塩濃度環境より採取された細菌種を対象に、今後の MV 生産性評価に供することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、細菌培養液を MVs を分離することなく簡便に MV 生産性を評価することができる曲率認識ペプチド nFAAV5 を基盤技術としている。さらに、米国スクリプス海洋研究所所属の Bartlett 博士の所有する海洋単離株コレクションから、 MV 高生産性細菌を探索し、これらの比較ゲノムやマルチオミクス解析から普遍的な MV生産に関連する因子を見出すことを目指す。今年度、米国スクリプス海洋研究所にて Bartlett 博士とワークショップ「Exploration and Application of Extracellular Membrane Vesicle-Producing Bacteria as a Basic Technology for Aquaculture Augmentation」を開催(2024年 1月26日)し、同研究所所有の深海試料より採取された細菌や高塩濃度環境より採取された細菌を今後の実験に供することとした。 本研究では、対象となる細菌群から効率的に MV 生産性に秀でた株を探索するため、上記の曲率認識ペプチド nFAAV5 を使用する。大腸菌、Pseudomonas 属細菌、HM13 の近縁種の Shewanella 属細菌 3 株を対象に nFAAV5 の有効性を評価した。各菌株について、細胞、MV、培養液(細胞+MV)の3画分を調製した結果、MV を除去した細胞画分の蛍光強度に比較し、MV を含む画分では顕著に蛍光強度が増加していた。本実験で使用した菌株間では、それぞれ莢膜多糖やリポ多糖の有無や構造が異なるが、いずれの MV についても MV を選択的に蛍光標識することが可能であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度、共同研究者である Bartlett 博士とのワークショップ開催により、本研究で最初に対象とする海洋細菌コレクションを策定した。さらに、本研究の基盤技術である nFAAV5 について、表層構造の異なる多様なグラム陰性細菌由来の MV に対しても、本ペプチドは細胞存在下で MV を標識可能であることが示された。以降は、今期に選定した深海由来の細菌および高塩性細菌について、いくつかの培養条件で培養し、MV 生産性を評価する。対照として、我々が単離した MV 高生産性細菌 Shewanella vesiculosa HM13 をもちい、HM13 株と同等もしくはそれ以上の MV 生産性に秀でた菌株の探索に取り組む。nFAAV5 をもちいた1次スクリーニングから選抜された株は、ナノ粒子トラッキング法による粒径分布および粒子濃度測定、MV 画分の SDS-PAGE による夾雑タンパク質の有無から溶菌を伴って MV を生産している株を排除し、正常に細胞増殖しつつ MV を高生産する菌株の取得を目指す。得られた菌株は、全ゲノムを解析し、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析を行い、共通して MV 生産に関連して発現量が増加している遺伝子群を見出す。これらは MV 生産に関連するコア遺伝子もしくはアクセサリー遺伝子である可能性が高い。また、各株で遺伝子操作系を確立し、遺伝子破壊実験を行い遺伝子工学的に MV 生産の分子基盤の探索を試みる。
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