研究課題/領域番号 |
23KK0160
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
前川 知樹 新潟大学, 医歯学系, 研究教授 (50625168)
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研究分担者 |
都野 隆博 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (40907383)
原 実生 新潟大学, 医歯学総合研究科, 研究員 (60848266)
日吉 巧 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80911437)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2026年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 口腔老化 / 老化細胞 / 老化幹細胞ニッチ / 骨再生 / 骨代謝 / 骨免疫 / 老化ニッチ / 幹細胞 / 骨再生能 / 口腔粘膜修復 |
研究開始時の研究の概要 |
口腔粘膜は皮膚や腸管粘膜など他のバリア部位と比較し,損傷後の組織修復が早く,外的刺激に対し高い適応能力を有すると考えられているが,その機能は老化に伴い失われていく(口腔老化).研究代表者は海外連携研究チームHajishengallis研究室が所持する豊富な老化関連分子DEL-1改変マウスおよびシングルセル解析技術,オルガノイド技術,空間的遺伝子発現解析技術,および老化研究拠点から無償で提供される老化マウスを使用することで口腔幹細胞ニッチに着目した口腔老化メカニズム解明とその応用展開を目指す.
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研究実績の概要 |
口腔粘膜は皮膚や腸管粘膜など他のバリア部位と比較し,損傷後の組織修復が早く,外的刺激に対し高い適応能力を有すると考えられているが,その機能は老化に伴い失われていく(口腔老化).研究代表者は海外連携研究チームとともに,口腔老化に口腔幹細胞ニッチとDEL-1が強く関わっていることを示してきた.しかし,DEL-1がなぜ老化によって減少するのか,またDEL-1の標的細胞および産生細胞,そして幹細胞ニッチの老化に対するDEL-1の機能は未だ不明である.そこで本研究開発では,①老化とともに減少するDEL-1分子の生体内での機能解明,②DEL-1の生体内標的,細胞供給源の解析,③DEL-1の生体内誘導,④口腔粘膜修復を司るDEL-1作用新規幹細胞の同定,⑤DEL-1誘導による疾患治療法の開発を, 連携先であるHajishengallis研究室が所持する豊富なDEL-1関連遺伝子改変マウスおよびシングルセル解析技術,オルガノイド技術,空間的遺伝子発現解析技術,およびペンシルベニア大学に附置される老化研究拠点から無償で提供される老化マウスを使用することで口腔幹細胞ニッチに着目した口腔老化メカニズム解明とその応用展開を目指している.本年度は,若手研究分担者の原および日吉が共同研究機関先にて,モデルマウスの作成およびその解析を行い,老化幹細胞ニッチの制御における新しいDEL-1の機能とその作用メカニズムを解明し,成果をまとめることができた。老化MSCの制御には,DEL-1が重要であることを示し,DEL-1による老化幹細胞のリン脂質フォスファチジルセリンを活性化させることで,アポトーシスを促進することを新たに明らかにした。これにより,予定されていた計画の一部を前倒しで進めることが可能となった。また老化マウスにおけるさまざまな疾患モデルマウスの作成にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,老化マウスを使用した老化幹細胞ニッチの解析を中心に行った。研究分担者である原および日吉はそれぞれ海外連携研究機関にて,老化マウスを使用した実験を遂行した。その中で,老化マウスでの口腔ニッチにる老化間葉系幹細胞が蓄積していることが確認された。老化MSCの蓄積は、変形性関節症や骨粗鬆症を含む加齢に関連した病態に関与している一方、老化細胞の除去は、炎症の解消や組織の再生にとって極めて重要である。これら老化細胞は,着目している分子DEL-1によってEat meシグナルであるリン脂質フォスファチジルセリンを増強させ,組織からの除去が可能であることも見出した。つまり,DEL-1は本研究の申請段階で予測されていた老化細胞除去に重要であることが示唆された。DEL-1欠損マウスでは,老化幹細胞のニッチからの除去が確認できず,骨の再生が認められないばかりか,骨粗鬆症症状を呈することが明らかになった。続いて,血管内皮細胞特異的にDEL-1を過剰発現するマウスを用いて,老化MSCを確認すると,DEL-1による老化細胞の除去が促進されるばかりか,全身の骨の再生も認められた。 本成果は,国際英文雑誌に投稿予定であり,予測より1年半ほど早い研究の遂行が認められていることから,このように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,計画の1年の前倒しを行い,老化MSCのDEL-1による制御メカニズムの解明を継続するとともに,DEL-1の生体内での安全な誘導方法を確立し,老化マウスの完全な若返り化を目指す研究を行う。特にDEL-1の生体内標的,細胞供給源の解析 (2024.4月から2025.4月:都野・原・前川)を行う。骨形成と脂肪形成に対するDEL-1の差異効果検証:老化は幹細胞ニッチMSCの脂肪細胞への偏った分化を引き起こす.老化に伴うDEL-1の減少が,老化間葉系幹細胞の骨芽細胞分化阻害の重要なメカニズムである可能性が高い.ERK1/2シグナルはPPARγ(脂肪形成のマスター転写調節因子)を阻害し,脂肪形成を抑制することからDEL-1の効果を解析する. DEL-1標的細胞の同定;DEL-1による骨形成に関与するRGD結合インテグリンはβ3インテグリンであることを検証するために,β3flox/floxマウス(所持済)とPrx1-Creマウス(所持済)を交配し,MSC/骨格筋前駆細胞特異的にβ3 integrinを欠失させたマウスを作製する. DEL-1産生細胞の同定;骨の再生に関与するDEL-1の産生細胞を明らかにする.DEL-1は内皮細胞あるいはMSCsや骨芽前駆細胞から産生されている可能性が高い.そこで,血管内皮細胞のDEL-1を特異的に欠失させたマウスVE-Cadherin-Cre+/Del-1flox/floxマウスを作成する.DEL-1欠損骨芽細胞を作成するために,Prx1-Creマウスを用い,骨芽細胞にコミットする前のMSCにおけるDEL-1発現を欠損させるPrx1-Cre+/Del1flox/floxマウス.野生型WTマウスの若齢および老齢と比較してDel-1EC-KO,Del-1MSC-KOの骨再生能力を解析する.
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