研究課題/領域番号 |
23KK0166
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
細田 正洋 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (30457832)
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研究分担者 |
柏倉 幾郎 弘前大学, 保健学研究科, 特任教授 (00177370)
赤田 尚史 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (10715478)
玉熊 佑紀 長崎大学, 放射線総合センター, 助教 (10854424)
山口 平 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (00782822)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2025年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2024年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 火山噴出物 / 大気浮遊塵 / 放射性物質 / 複合曝露 / エトナ山 / 肺線維症 / 空気吸収線量率 / PM2.5 / エトナ火山 / ラドン / 放射性エアロゾル / 呼吸器疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
大気汚染物質は深刻な健康被害をもたらす主要な危険因子である。一方、火山活動に伴い放出される大気浮遊塵や火山灰に加えて、放射性物質も含む火山噴出物の「複合曝露」も危険因子の一つであるが、これら物質の健康影響については国際的にも詳細な研究は進んでいない。本国際共同研究では、世界有数の火山国である日本とイタリアの研究者が連携し、火山活動に伴う健康リスクの課題解決に取組み、火山地域における住民の健康影響を低減、保護するための効果的な戦略の開発に貢献する。
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研究実績の概要 |
火山噴出物には粒子サイズも異なる多様な物質が含まれ、特に粒子が細かな大気浮遊塵や放射性物質は、住民がそれらの吸入摂取を感じることが困難であるため慢性的に「複合曝露状態」に曝されることになる。本研究グループはこれまで国内の火山活動にともなうラドン濃度に着目した研究を進めてきたが、具体的な健康影響への関連性にまで及んでいない。世界最大の活火山の一つであるエトナ山周辺の住民の呼吸器疾患、特に多発する肺線維症患者の治療にあたるカターニア大学の医療グループは、かねてより疾患発症の因果関係解明の必要性を感じていた。すなわち、火山噴出物による「複合曝露」が疾患発症に関与する可能性が高いことは容易に推測できるが、『疾患発症との因果関係とその発症に大きく関与する因子は何か?』が明らかとなっていない。 本研究では、①エトナ山周辺の屋内ラドン濃度を明らかにし、その被ばく線量と肺がんリスクを評価、②火山活動によって放出される微粒子の特徴と環境毒性試験による呼吸器への影響評価、③エトナ山周辺住民の呼吸器系疾患の病態分布と複合曝露との関連性の検討を実施する。 本年度は、本研究グループが海外連携機関であるカターニア大学医学部を訪問し具体的な活動計画を立てるとともに、イタリア地球物理・火山学研究所の専門家を訪問し、フィールド調査の協力依頼を行った。さらに、イタリア国内の両機関の研究者らとともにエトナ山及び調査対象となる周辺集落を訪問し、予備調査として空気吸収線量率とPM2.5の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究グループは、海外連携機関であるカターニア大学医学部を訪問し具体的な活動計画を立てるとともに両機関でそれぞれ倫理申請を行うための準備をした。さらに、イタリア地球物理・火山学研究所の専門家を訪問し、フィールド調査の協力依頼を行っただけでなく、現地調査期間中の火山噴出物関連のデータ共有についても前向きな議論ができ、信頼性が高い関連データを蓄積できる可能性がでてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
両国機関において倫理申請書が受理された後、令和6年度より現地調査を開始する。両国間での打ち合わせによって対象地域とコントロール地域を設定し、それぞれの地域での現地協力者を募る。その際、対照地域とコントロール地域のそれぞれにおいて地域医療を担当している医師をキーパーソンとし、予備調査として各25家屋の協力を得る。屋内ラドン濃度の年平均値を用いた線量評価を行うため、ラドン・トロンモニタを6ヶ月毎に1年間の設置を行う。その際、海外共同研究者の協力を得て質問紙調査を行い、線量評価や変動要因の検討に必要な情報収集を行う。回収したパッシブ型モニタは弘前大学へと返送し、ラドン及びトロン濃度を評価する。さらに特徴的な家屋において、可搬型放射性微粒子モニタを用いた連続観測を行い、ラドン濃度レベルと日内変動を評価する。大気中浮遊塵のサンプリングとして可搬型ハイボリュームエアサンプラーを用いた24時間の大気浮遊塵サンプリングを行う。フィルタ試料を弘前大学に持ち帰り、ICP-MS等によって試料中のAl、Fe、Ti等の主要元素やUやThを分析する。さらに、国際火山災害健康リスク評価ネットワークが推奨する環境毒性試験法により肺内部の火山灰粒子の溶解率を推定する。同時に可搬型モニタを用いてPM2.5の質量濃度の連続測定も行う。その他、イタリア地球物理・火山学研究所の協力によって現地調査期間中の火山噴出物関連のデータを共有してもらい解析に利用する。呼吸器疾患患者の生体試料の提供が可能となった場合には、弘前大学において提供を受けた当該疾患患者の試料を用いたバイオマーカー探索を実施する。
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