研究課題/領域番号 |
23KK0190
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(海外連携研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
松田 和秀 東京農工大学, 農学部, 教授 (50409520)
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研究分担者 |
徐 懋 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (60981016)
佐瀬 裕之 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 生態影響研究部, 部長 (20450801)
反町 篤行 東洋大学, 理工学部, 教授 (60466050)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,930千円 (直接経費: 16,100千円、間接経費: 4,830千円)
2025年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 反応性窒素 / アンモニア / 硝酸 / エアロゾル / 交換フラックス / 乾性沈着 / 熱帯林 / 大気-地表面交換 / 東南アジア |
研究開始時の研究の概要 |
反応性窒素(Nr)による窒素循環汚染は、プラネタリーバウンダリーの概念において地球の限界を超えたとされている。ガスや粒子状のNrが森林へ沈着するメカニズムは未解明なところが多く、Nr沈着による環境影響評価の不確実性を高める要因となる。 当該メカニズムを解明するためのNr交換フラックスの観測事例は、欧米、日本、中国などの中緯度地域に限定されており、熱帯地域での知見はほとんど得られてない。本研究は、窒素循環汚染の地球規模での環境影響評価の精度向上に資するため、熱帯サバナ気候下の東南アジアにおいて、大気-熱帯林間のNr交換(沈着・放出)の総合的な観測を実施してその実態把握とメカニズムの解明を行う。
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研究実績の概要 |
本国際共同研究は、陸域への反応性窒素(Nr)沈着量推計の不確実性を小さくして、地球規模での窒素循環汚染の影響評価の精度向上に資するため、知見の少ない東南アジア(タイ)の熱帯林を対象として大気-森林間のガスおよび粒子状Nr交換に関するフィールド研究を実施し、当該地域における交換メカニズムを明らかにすることを目的としている。 2023年度は、本研究の拠点となるタイ国ナコンラチャシマ県サケラート生態系保護区にあるSakaerat Environmental Research Station(SERS)へ超音波風速計、サンプリング機材等を持ち込み(12月13日現地入り)、Phuvasa Chanonmuang博士(タイ国立科学技術研究所)の協力を得て熱帯林に設置された鉄塔に観測システムを構築した。 その後、2023年12月15日~12月29日および2024年1月22日~2月5日の間、濃度勾配法による交換フラックスを得るためのガス・粒子状Nrのサンプリングを実施した。さらに、当該森林の葉を採取し葉面に付着したNr成分の抽出・測定も行った。 濃度勾配法では、林上2高度にガス・粒子状Nrを捕集する4段フィルターパック(粗大粒子、微小粒子、硝酸ガス、アンモニアを捕集)を設置し、1日3回(日中:9時~13時、13時~17時;夜間:17時~9時)のサンプリングを上記の2期間実施し、フィルター約720枚(90期間x4段x2高度)のサンプルを取得した。また、鉄塔の3高度においてアンモニアを捕集するパッシブサンプラーを設置し、2週間に1回のサンプリングを計4回行った。取得したサンプルを日本へ持ち帰り、無機イオン成分の抽出および化学分析作業を行った。 2024度の観測に向けて、濃度勾配法よりも直接的に交換フラックスを測定できる緩和渦集積法によるサンプリングシステムの設計・構築を行った(2024年4月完成予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度であるため、海外共同研究先であるタイ科学技術研究所(TISTR: Thailand Institute of Scientific and Technological Research)との連絡調整、超音波風速計やサンプリング機材等の輸送・運搬、現地観測の準備など、調査前にやるべき仕事が多くあったが、12月13日の現地入り後、速やかに観測システムを構築しサンプリングを開始することができた。 サンプリングは、計画通りタイの乾季にあたる2023年12月から2024年2月の間、微小粒子Nr成分、粗大粒子Nr成分、アンモニア、硝酸ガスをフィルターパックにより2高度で捕集し、計画通りのフィルター約720枚(90期間x4段x2高度)のサンプルを得た。さらに、パッシブサンプラーによる3高度アンモニアサンプリング、葉面に付着したNr成分の抽出・測定も行うことができた。取得したサンプルは日本へ持ち帰り、無機イオン成分の抽出および化学分析作業を行った。計画通り化学分析作業は2024年4月に終了予定で、その後、交換フラックスの算出、データ解析を行う。 さらに、2024度の観測に向けて、濃度勾配法よりも原理的により直接的に交換フラックスを測定できる緩和渦集積法によるサンプリングシステムの設計・構築にも取り組んだ。年度内のシステム完成には至らなかったが2024年4月完成予定である。 以上より、現在までの進捗状況はおおむね計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、2024年度は、2023年度乾季観測で得られたサンプル分析を行い、粗大粒子Nr成分、微小粒子Nr成分、硝酸ガス、アンモニアの交換フラックスを算出し、沈着・交換モデル検証を含む総合的な解析を行う。 2024年度の交換フラックス観測は、新たに構築した緩和渦集積法を適用することとし、前年度の濃度勾配法より原理的により直接的なフラックス観測を実施して測定精度の向上を目指す。 2023年度同様、大気汚染レベルが高くなる乾季を対象とし、2024年12月から2025年2月頃までの期間に観測を実施する。当該期間はじめの1週間程度、全メンバーでタイへ渡航し、Phuvasa博士同行のもとSERSへ入り、緩和渦集積法サンプリングシステムを観測鉄塔へ設置した後、集中的な観測を実施する。集中観測は、Nr交換フラックス観測に加え、葉面付着Nr成分の抽出・測定、土壌からのNr放出測定を実施する。集中観測期間後、若手研究分担者は現地に残り、上記の期間、Nr交換フラックス観測を継続する。
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