研究課題/領域番号 |
23KK0261
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩司 工学院大学, 工学部, 准教授 (90647918)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2025
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | 非接触流体マニピュレーション / 液滴 / 非ニュートン性 / Lab-in-a-drop / マルチフィジックス / 界面 / 音場浮遊法 |
研究開始時の研究の概要 |
Lab-in-a-dropの実現に向けた音響場による非接触流体マニピュレーション技術の確立には、非定常、非線形、非平衡かつ多次元的な浮遊液滴のダイナミクスを解明するとともに、浮遊の挙動を予測・評価する手法の開発が必要不可欠である。本国際共同研究では、申請者が取り組んできた概念実証の結果を発展させる形で、数値計算技術を駆使し、音響場で浮遊させた液滴に生じる動的界面挙動、流動および熱・物質輸送現象を詳らかにし、混合や蒸発モデルの構築することで、非接触流体マニピュレーションの社会実装を見据えた本格実証に挑戦する。
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研究実績の概要 |
今年度は、翌年度からの渡航に向けた準備を実施した。具体的には、海外共同研究者と緊密に連携した上で、研究計画書の作成、招待状などの各種書面の発行に加え、着実な成果創出のために、日本での予備実験を通じて予め仮説を構築した。予備実験で明らかになった課題を整理し、渡航先で円滑な研究遂行のための事前準備を進めてきた。 非接触流体マニピュレーションの社会実装を見据えた本格実証を目的のために、海外共同研究者とは、特に非ニュートン流体を対象に研究に取り組むとの事前合意に至った。日本国内での事前の実験的検証では、流体サンプルとしてCMC(Carboxymethyl cellulose)水溶液を採用した。CMCとは、セルロースを原料として得られるアニオン系水溶性高分子であり、優れた増粘性・吸水性・保水性を有しており、食品添加物、飼料添加物、化粧品、増粘剤・粘結剤・バインダーや吸水材・保水剤として幅広い用途で利用されていることから、技術の社会実装を見据えた本格実証のための好例と考えられる。また天然セルロースは食物繊維の一種で、人体に無害であるとともに緩やかな生分解性を有するため、セルロースパウダーは環境対応素材としても今後の利用拡大が見込まれている。 予備実験の一例として、水とCMC水溶液のそれぞれの液滴を比較した結果、CMC液滴の界面に生じるせん断応力が変化することで、液滴界面の変形、とりわけ変形後の緩和応答が顕著に異なることを確認した。衝突拡大時間と比較して、長時間にわたる液滴界面の緩和プロセスでは、粘性が回復したために界面応答に明確な差が生じたものと考えられる。実験では衝突時の液滴界面での圧力分布や動的な液滴内粘性分布の時空間発展を定量的に特定することは至難であるために、渡航後に行う数値解析による物理解明が期待される予備実験結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的とする非接触流体マニピュレーションの社会実装を見据えた本格実証のために、渡航前年度である今年度は適切な準備を進めることができた。 具体的には、海外共同研究者と緊密に連携した上で、渡航のための必要な申請が全て完了し、研究計画のブラッシュアップ、さらには渡航前の日本での予備調査を通じて、渡航先で検証すべき予め仮説を構築することができた。 以上より、本研究課題の現在までの達成度は、「おおむね順調に進展している」に該当すると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、予備実験から得られた仮説に基づいて、渡航先で海外共同研究者と直接かつ定期的に議論を儲け、適宜方向を修正しつつ研究を推進する。 具体的な研究内容は、①音響場で浮遊する液滴の界面振動・圧力場解析、②界面振動で誘起される液滴内混合解析、③流動場、温度場、濃度場が連成する液滴の相変化解析の3点を予定している。いずれも海外共同研究者および研究グループ内の博士課程学生が研究を進めている内容との親和性が極めて高いため、渡航直後から迅速な研究遂行が期待できる。 研究進捗次第では、特に渡航期間内では、相変化を考慮しない①および②に特化することで確実な成果創出を見込む。
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