研究課題/領域番号 |
24247022
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
機能生物化学
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳澤 純 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50301114)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
30,680千円 (直接経費: 23,600千円、間接経費: 7,080千円)
2013年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2012年度: 15,730千円 (直接経費: 12,100千円、間接経費: 3,630千円)
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キーワード | 核小体 / 細胞増殖 / 細胞分化 / 細胞老化 |
研究概要 |
本年度は核小体による細胞の運命決定メカニズムについて研究を進めた。細胞にさまざまなストレスが加わると、リボソームRNAの転写抑制に伴い、核小体の退縮が認められる。核小体が退縮すると、本来核小体中に存在するタンパク質が核小体から核へと移行し種々の作用を表す。本研究者らは、核小体中のMYBBP1Aと呼ばれるタンパク質がストレス時に核へと移行し、p53をアセチル化することによってその活性を促進し、結果的に細胞をアポトーシスへと導くことを明らかにした。一方、研究の過程で癌遺伝子の高発現や細胞増殖といったストレスでは、核小体が退縮するのではなく肥大化し、p53の活性化がおこることを見出した。これらのストレスでは、p53の活性化は認められるものの、MYBBP1Aが核小体内に留まるためアセチル化されず、その活性化度は低い。そのため、細胞はアポトーシスを起こさず、細胞老化の表現型を示す。この結果は、核小体の状態が細胞のアポトーシスと老化の振り分けを行っていることを示している。最近のNature誌の報告では、老化細胞をアポトーシスさせることによってマウスの老化表現型を抑制することができる。この結果を信じるのであれば、核小体の大きさを人為的に制御することによって、本来老化する細胞をアポトーシスへと導き、個体の老化を抑制することが可能かもしれない。核小体は膜を持たない細胞内小器官であり、リボソームRNAの周囲にタンパク質が結合した集合体である。したがって、リボソームRNAの転写量がそのサイズを決定する。核小体のリボソームRNA転写を人為的に制御することが出来れば、老化細胞をアポトーシスへと導くことが出来る。本研究者らは、すでにリボソームRNA転写を制御するヌクレオメチリンの阻害剤の創生に成功しており、今後リボソームRNAの人為的制御をマウスレベルで可能としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績のとおり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
リボソームRNA転写は細胞のエネルギー代謝の要である。一般的に個体が肥満すると代謝が低下することが知られている。本研究者らは、高脂肪食負荷によって肥満したマウスのリボソームRNA転写が著しく低下していることを見出した。そこで、リボソームRNA転写を抑制するヌクレオメチリンの遺伝子欠損マウスを作製したところ、本マウスは高脂肪食負荷でもまったく肥満しないことを明らかにした。この結果は、脂質代謝とリボソーム転写が密接に結びついていること、さらに、脂肪の蓄積にはリボソームRNA転写の抑制が必要であることを示している。また、リボソームRNA転写は核小体のサイズの決定因子であり、核小体サイズがアポトーシス、細胞周期停止、さらには細胞老化などの細胞の運命決定を担っていることも明らかになってきた。さらに、核小体を退縮させると、機能不全に陥ったミトコンドリア量が低下することも見出している。そのメカニズムについては未だ明らかではないが、本年度はそのメカニズムに迫りたい。核小体はエネルギー代謝、アポトーシス、細胞老化を制御する要である。さらに核小体にはウェルナーなど個体の老化に関与するタンパク質群が局在しており、様々な事象を統合して個体の老化現象を制御している可能性が考えられる。今後、さらに解析を進めることによって、核小体機能の全貌を明らかにしたい。さらに、核小体が細胞周期のM期において崩壊することから、核小体中に染色体構築に必要な因子群があるのではないかと考え、スクリーニングを行った。その結果、新たな染色体構築因子の精製に成功しており、その解析も進める。特に興味深いのは、核小体に存在するリボソームRNAが核小体崩壊に伴い、染色体上に移動することである。どうやらリボソームRNAが足場となり、核小体タンパク質が染色体上に集合するようである。
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