研究課題/領域番号 |
24300126
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 一部基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経解剖学・神経病理学
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
寺島 俊雄 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20101892)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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研究課題ステータス |
採択 (2015年度)
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配分額 *注記 |
14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2015年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2014年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2013年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2012年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | リーリン / Dab1 / 大脳皮質 / 皮質板 / リーラー / ヨタリ / 層形成 / reeler / yotari |
研究実績の概要 |
(1)正常マウスでは、幼若ニューロンほど皮質板のより表層を占める。これをインサイド・アウトパターンという。このインサイド・アウトパターンはリーリン・シグナル伝達系に属するReelin、Dab1などの共同作用により形成される。今回、電気穿孔法を用いて、胎生14.5日(E14.5)の胎児にさまざまな変異Dab1発現プラスミッドをEGFP発現プラスミッドとともに大脳皮質脳室帯の神経幹細胞に遺伝子導入して、生後1日(P1)に潅流固定を行い、凍結切片を作成した。EGFPで標識されたニューロンは、対照群では大脳皮質の2・3層に分布したが、実験群では異所性に分布した。さらにRA-GEF1、Rap1を共発現させると、上記の異常がレスキューされることより、RA-GEF-Rap1経路がReelin-Dab1シグナルに関係することを明らかにした。 (2)大脳皮質は橋核を介して小脳に投射する。また小脳は視床の外側腹側核を介して大脳皮質に投射する。したがって大脳皮質と小脳は一連の構造として機能する(大脳・小脳連関)。このことはリーリンシグナル伝達系の変異マウスの大脳皮質の高次脳機能を行動学的に評価する時に大きな足かせとなる。なぜならば、これらの変異マウスは小脳異常を呈するため、大脳皮質の高次脳機能異常を神経行動学的に評価する際に、小脳の異常の影響を除外できないからである。今回、LoxP-Dab1マウスとEmx1-Creノックインマウスを交配することにより終脳特異的Dab1欠損マウス(Dab1-cKOマウス)を作成し、脳の形態と行動異常の有無を検討した。その結果、Dab1-cKOマウスの大脳皮質の細胞構築はリーラー変異あるいはヨタリ変異マウスと同様であるが、小脳の細胞構築は正常である。一方、Dab1cKOマウスは行動科学的に多動、恐怖・不安行動の減少、ワーキングメモリーの異常などヒトの精神疾患ことに双極性障害や統合失調症に近似するフェノタイプが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Dab1 cDNA の各種フラグメント、reelin関連遺伝子のRNAi実験用の発現プラスミッド、さらにEGFP蛍光トレーサー発現プラスミッドをE14.5日胚の脳室帯神経幹細胞に電気穿孔法により遺伝子導入し、2~4日後もしくはP1にサクリファイスし、皮質板や中間帯に(P1の場合は大脳皮質2・3層以外に)異所性ニューロンが分布することを明らかにした。またReelinシグナル経路の細胞内アダプター分子Dab1は、機能発現に必須なN末領域と、リン酸化部位としてのC末領域とに分けらるが、N末領域とC末領域のフラグメントを発生中の正常マウスの皮質板ニューロンに発現させたところ、N末フラグメントが移動ニューロンの多極性から双極性の移動様式転換を阻害し、その移動障害はC末フラグメントの共発現によりレスキューされることを見出した。またN末フラグメントのターゲット候補としてRA-GEF1-Rap1経路を想定し、これらの発現プラスミドを遺伝子導入して細胞移動障害のレスキュー実験を試みたところ、Dab1 N末フラグメントによる移動障害がレスキューされた。このような成果はの皮質板の興奮性ニューロンの移動に関するDab1分子内ドメイン構造の機能分担を明らかにしたものである。 (2)リーリン欠損マウス(リーラー)やDab1欠損マウス(ヨタリ)では、大脳皮質の構造異常の他に小脳異常を伴うために、小脳性運動失調を呈する。終脳特異的Dab1欠損マウスは、小脳性運動失調の行動テスト対する影響の除外を可能とするものであった。その結果、不安行動の減少は、リーリンシグナル伝達系の精神失調に対する影響を明確に示したものである。
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今後の研究の推進方策 |
大脳新皮質の層構築形成で重要な現象は皮質板の形成であるが、一連のミュータントマウスの皮質神経回路を明らかにすることにより、大脳新皮質の層特異的神経回路の形成機構の面から大脳新皮質に共通する作動原理を明らかにすることが本研究のゴールである。このような目標に向かって今後は以下の実験を行う。 (1)今回電気穿孔法によりE11, E12, E13, E14.5日胎児の大脳皮質脳室帯にDab1cDNAのN末フラグメントあるいはC末フラグメントとEGFP発現プラスミッドの遺伝子導入を行い、その2~4日後のE18日およびP1に潅流固定を行い、胎児を固定して凍結切片を作成する。EGFP標識ニューロンの中間帯と皮質板内分布を指標にDab1分子内の機能ドメインの細胞移動に関する関与を調べる。また脳室下帯上部/中間帯下部における多極性/双極性形態変化を調べる。 (2)E11, E12, E13, E14.5日胎児のミュータント動物(リーラー、ヨタリ、Dab1cKO)および対照動物の母体にBrdU を腹腔内投与し、12 時間-32 時間後に母体より胎児を得て、パラフォルムアルデヒドにて固定後、凍結切片を作成し、BrdU の抗体を用いた免疫染色により、大脳皮質各層を構成するニューロン群の birth date を明らかにする。さらにP19日齢の上記動物の逆行性標識法とbirth date labeling 法を組み合わせ、層特異的投射ニューロンの皮質内位置とbirth date との関係を二重標識法にて明らかにする。 (3)終脳特異的Dab1 cKOマウスの大脳皮質第5層ニューロンの投射先である脊髄、上丘、下丘にトレーサを注入し、運動野、視覚野、聴覚野における皮質脊髄路、皮質視蓋路、皮質下丘路ニューロンの皮質内分布を調べる。
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