研究課題
基盤研究(C)
本研究では、胃がんモデルマウスのマイクロアレイ解析からこれまでに得られた”炎症によって発現が変化する未分化性に関連した遺伝子”のなかから、腫瘍原性に関与するものをsiRNAとソフトアガーコロニー形成を用いたスクリーニングにより、Noxo1とGna14を炎症性微小環境に依存した発現を示す腫瘍形成促進因子の候補として同定した。これらの遺伝子の発現は、間質細胞ではなく腫瘍上皮細胞において、炎症性微小環境の作用により発現が亢進していた。また単離した胃上皮細胞では未分化状態で高い発現を示し、分化とともに減少することもわかり、未分化性との関連も示唆された。また、腫瘍原性に対する影響を調べるために、低酸素条件下で培養した胃がん細胞のスフェア形成における役割をsiRNAを用いて調べたところ、Noxo1, Gna14それぞれを阻害した場合にスフェア形成が抑制された。本年度はNoxo1についてさらに解析を行った。Noxo1はNADPH oxidase organizerで、活性酸素の産生に関与することが知られている。そこで、NADPH oxidaseの阻害剤であるApocyninを胃がんモデルマウスに投与したところ、腫瘍の増殖が抑制されることがわかった。また、NADPH oxidase阻害剤は、Noxo1 siRNAと同様にスフェア形成を阻害することもわかった。Noxo1発現をsiRNAで阻害した際の未分化性マーカーの発現を調べてみるとスフェア形成時の発現パターンが変化していることがわかった。これらの結果はNADPH oxidaseによる活性酸素の産生が細胞の未分化性に関与し、それが腫瘍形成をコントロールしうる可能性を示唆している。現在、Noxo1のコンディショナルノックアウトマウスを作成しており、それにより、Noxo1の腫瘍モデルマウスにおける役割が解析されるものと期待される。
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Oncogene
巻: 33 号: 29 ページ: 3820-3829
10.1038/onc.2013.356
http://genetics.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html