研究課題
基盤研究(C)
申請者は、混合原子価をもつA サイト秩序ペロブスカイト型クロム酸化物の新物質開発を行った。昨年度までに、これまでに報告されているCaCu3Cr4O12に加えて、新規にAサイトにLaからLuまでの希土類元素が占めたACu3Cr4O12の高圧合成に成功している。今年度は、LaCu3Cr4O12およびBiCu3Cr4O12において、LaおよびBiサイトのCa置換を試み、系統的な高圧合成に成功した。物性に関しては、LaCu3Cr4O12は、低温で奇妙な反強磁性転移を示すことが、電気抵抗、比熱、または構造解析の測定結果から示された。同構造の鉄酸化物で報告されているような、電荷移動がCrからCuに起こっていることが示唆された。しかしながら、低温で電気抵抗は、完全には絶縁体になっていない。またLaサイトをCaで置換すると、徐々にその転移が、低温にシフトしつつ、転移が抑制される。一方、BiCu3Cr4O12においは、低温で奇妙な弱強磁性転移を示すが、電気抵抗、比熱、構造解析の結果からも示された。この化合物も、同構造の鉄酸化物で報告されている電荷不均化が示唆されるが、やはり低温での電気抵抗は、完全には絶縁体になっていない。この化合物は、BiサイトをCaで置換すると、La系と異なり、転移が急激に抑制される。同構造の鉄酸化物との物性の類似点と相違点がはっきりしてきた。高圧合成、電荷移動、電荷不均化等の多くの類似点がある一方で、低温での電気伝導が、絶縁体的と金属的とで、大きな違いがある。また鉄4+の酸化物が、低温で不安定である一方、クロム4+の酸化物は、低温まで金属的で安定である。鉄とクロムでは、d電子が、t2g軌道を占めるかeg軌道まで占めるかの違いがあり、酸素の2p軌道との混成状態も異なると考えられ、現れる物性の違いは興味深い。申請者は、今後もこの興味深い問題を継続して研究していきたいと考えている。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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