研究課題
基盤研究(C)
【背景・目的】エンドセリン-1(ET-1)は,ヒト骨格筋において,インスリン誘発性のグルコース取り込みを抑制することによって,インスリン抵抗性2型糖尿病の発症・進展に関与する。しかしながら,その詳細なメカニズムは不明である。本研究では,ラット骨格筋細胞(L6細胞)を用いて,ET-1によるインスリン・シグナルの抑制性制御機構について検討した。【方法】L6細胞におけるAktのリン酸化量の変化は,Western blot法を用いて解析した。ETA受容体(ETAR)及びETB受容体(ETBR)のmRNA発現は,RT-PCR法を用いて検出した。内在性に発現するGタンパク質共役型受容体キナーゼ2(GRK2)の機能を阻害するために,アデノウィルスを用いて,GRK2のC末端領域(GRK2-ct)をL6細胞に過剰発現させた。【結果】L6細胞において,ヒト骨格筋細胞と同様に,ETAR及びETB受容体ETBRのmRNA発現が検出された。L6細胞において,インスリンは,濃度依存的かつ持続的なAkt(308番目のトレオニン残基・473番目のセリン残基)のリン酸化を引き起こした。インスリンによるAktのリン酸化は,PI3キナーゼ阻害薬によって完全に消失した。インスリンによるAktの持続的なリン酸化は,ET-1の後処理によって抑制され,このET-1の抑制作用は,選択的Gq/11タンパク質阻害薬及び選択的ETAR遮断薬によって解除された。さらに,ET-1によるインスリン・シグナルの抑制は,内在性GRK2の機能を阻害するGRK2-ctを過剰発現させることによって解除された。【考察】骨格筋細胞において,ET-1によるETARの活性化は,インスリンによって誘発されるPI3キナーゼを介したAktのリン酸化をGRK2依存性に抑制することが示唆された。
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